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全盲の東大教授福島智さんと作家北方謙三さんとの対談本『運命を切りひらくもの』(致知出版社)に福島さんが漏らした言葉だ。9歳で両目失明、18歳で全盲ろうに。目も見えず、耳も聞こえず、対談は指点字通訳を介して行われた。


何度も鬱に入り、自殺を考えたが北方さんの小説に生きる勇気やエネルギーをもらい生き続けられたと。『言葉が人の命を救う。命にエネルギーを注ぐ』『私は常々実感しているんですが、見えなくても、聞こえなくても、何とか生活はしていけます。けれども言葉がないと、つまり具体的なコミュニケーシンが難しいと、人間というのは生きていけないんです。言葉は人間にとって酸素のようなもので、それなくしては魂が死んでしまう』同著148p・149p。『言葉というのは、文字どおり生きる力になるものだ』と福島先生の言葉に北方謙三さんは『それは福島先生だからの感慨でしょうね』とうなづく。


昨日の新聞で電通で自殺した東大生の記事を読みながら、誰か『命ある言葉をかけられなかったのか』とつくづく思う。残業時間100時間の話を中小の広告代理店に話すと『毎月、毎月100時間は軽く超える。まったくのサービス残業でね』と返ってくる。あるときそこの社長に『残業代、定額でも払ったら?』というと『残業はするなするなと普段から言っている。残業は無能な証だ。』さらに『残業代を払っていたら会社は潰れる』と。しかし、この会社はこれだけ多忙でも『うつ病がゼロ』だから凄い。夜に上司の愚痴を言い合ったり、帰りに飲みに行ったりケンカをしたり、夜遊びをしたり『生きた言葉を交わしている』ように筆者には見えた。生きた言葉を交わせる相手がいるのといないのでは、会社人生は雲泥の差である。


特に新入社員の場合、当該企業のルールが叩き込まれる。たて関係絶対の体育会系ルールと自分がどこまで馬鹿になれるかというお祭りルールが混在する電通は門外漢の人が生の姿を見たら吐き気を催すか、どっぷり入るか、二つに一つである。給与の高さだけで、生活のために我慢しながら生きている常識人も多数いるとは思うが、組織の自動運動の歯車にされて悩みをストレートに出せずに、24歳の短い生涯を閉じてしまった。これまでにも電通社員の過労で自殺した社員も多いし、テレビ局はじめマスコミにも若者や中高年の欝からの自殺も多い。『どの業種も自殺者は多い』という一般論へ走るのは止めたい。『この人を生かす』という視点に立ちたいものである。


『言葉は人間にとって酸素のようなもの』。酸素がなければ窒息死する人間(生物)。動物では自殺はない。言葉を持ってるがゆえに、自殺があるのかもしれない。だんだん表情を無くしていく人があなたの近くにいたら声かけをしてみよう。助けることになるかもしれない。その人はあなたの『言葉を待っている』。

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