「夜は盗賊が喰い荒し、昼は徴税官が喰い荒す」(大無量寿経)

大乗仏教の仏典に書かれている言葉で、仏教学者の中村元さん「仏典のことば」(サイマル出版)で引用されていた。「仏教徒の眼から見ると、村落共同体の平和を乱し、人民を苦しめるという点では、国王も盗賊も区別のないものだ、そう思っていたのです。国王を盗賊と同列に見なすということは、その後、仏典において一つの形式となりました」(同著100p)いまから2500年前のインド。国家を泥棒と思えば、世界じゅうの近代国家に当てはまりそうな言葉だ。どおりで東南アジアの仏教国で民衆の激しい政治運動やデモが多く出てくる背景は貧困が原因だが、「国」を「盗賊」と同列で見る見方が根本にあれば納得がいく。税や取り立てをやり過ぎると必ず民衆からシッペ返しを食らう世界の歴史がある。国王も安閑としていられない背景に「権力による支配それ自体が悪である」という仏教徒の考えがある。

原始仏典では、一般に人々の受ける受難が、火事・洪水・疫病などいろいろあるということを教えていますが、しばしば「国王の難」と「盗賊の難」というのを並べていう。仏教徒の眼から見ると、村落共同体の平和を乱し、人民を苦しめると言う点では、国王も盗賊も区別がないものだと思っていたのですね。当時のインドの税率は低く、収穫の六分の一を税金として納めるのですが、それでも人々は不平を言ってました。彼らにとっては国王とか国家というものは無用の存在だったのです。