平凡なことだけど、いいことがあると後でツケが回ってくることが多い。私は広告代理店の営業を30年以上してきたので、売り上げと利益目標めざして動き回る。とくに新規開拓は辛いものがある。眠れない日が何日も続いた。お客さんを探す活動を毎日のようにしてきた。無い知恵を出して、若手の新聞社やテレビ局の人たちと相談しながら企画を組み立てるが、ほぼ代理店の人間が走り回るというのが業界の常識。そして新規クライアントを何度か獲得して数年間、仕事をもらうが、ある日倒産の事態に遭った。その責任はすべて代理店が負う。代理店制度は、媒体に責任や負債が来ないよう、壁として機能させることに意味がある。簡単に仕事が取れると要警戒だ。いつのまにかそういう思考になる。甘い話には訳があるものだ。楽していい思いは長くは続かない。むしろそのスポンサーと付き合わないほうが良かったという場合も多い。人についても同じことが言える。これは誰でも一度や二度は経験していることだろうと思う。バブル当時、銀行のススキノ支店長が退職して会社を興した。銀行員時代の羽振り良くて毎日飲み屋周りの独身生活を謳歌していた。しかし、必ず儲かるとそそのかされてマンション買いに手を出し大損、7階のビルから身を投げた。彼だけではない。株で何千万円儲けた話は周りにたくさんあったが、儲けた人は仕事への意欲を無くして人間的な魅力がどんどん低下していった。そして他人は離れていった「彼は金持ちだからね」と遠ざけられた。そういう意味でバブルは人間を知るうえでのバイブルになった。私は娘へ大学準備や仕送りで家計は火の車、財テクの余裕はゼロだ。10年前に証券会社の役員から、「100%儲かる株があります。100人以下の人にしか売らないものです。1口100万円です、買いませんか?」。やはり買わなかった。楽して儲けたお金は入ってきたように出ていく、実際はもっとひどいことになる、母親からの教えである。後でツケが来ないように生きていく。現代日本で忘れられている大事なことだ。
