2億円使って儲ける事業,何かない?

10年前に、知り合いから電話があった。仙台から札幌に引っ越ししてきて宮の森に戸建てを買った人の悩み。彼は2億円持っていて、何か事業ができないか相談されたが、自分は思いつかないので私に知恵を求めてきたのである。仙台で朝日新聞の拡張団を経営、その社長をして稼いだとのこと。さっそく紹介者と円山公園駅に行くと、綺麗で下品そうな奥さんを連れてベンツのジープでやってきた。高台の高級住宅街に入る。玄関から絵や壺が並んでいた。「前に住んでいた人の趣味だね」。それって競売物件ではないかなと思ったが黙っていた。居間に通されて「何か新しい事業で儲けられるものはないか」と言われたが、私も即答できず、不動産やホテル経営をしている社長さんに相談してみることにした。「中華料理でもランチごちそうするよ」と言われたので、ベンツに乗ると着いたのは郊外レストラン。内心、がっかり。700円のランチを注文した。「いま乗ってるベンツも欠陥車ではないかと売主にクレーム出している最中だ」。実は買った自宅にも買う前の説明で抜けているところがあってそちらも再交渉している(つまり値段を下げろか?)。この人典型的なクレーマー体質。数日して、ホテル経営者と面会日時を決めて彼らを連れて行く。「ススキノで居酒屋を経営したらいかがかな。いくらでも紹介するよ」と社長。顔を見て、何かをしたい、事業を起こせる器ではないと、後から社長に聞くと言われた。たくさんの人を見てきているのでわかるというのだ。「あの人、詐欺師だから気をつけて」。「それにたった2億円持っている人、お金持ちではないよ。そういうのは小金持ちっていうんだよ。はいて捨てるほどいるよ」私の周りには誰もいないけど。結果的に彼は社長のアドバイスを無視してそれっきり。ところで、最初に電話をかけてきた人だが、競馬で身を持ち崩して、家族を失い、マンションも取られて、安アパートに住む高齢者でたぶん馬券売り場で知り合ったのが2億円男。大学の哲学科を出てドキュメンタリーのシナリオを書いて有名な人だが、競馬のやり過ぎで、日々の暮らしにも困り、2億円持つ人の仕事を手伝うことで余禄に預かろうとしたわけだ。1年後、アパートの1室で孤独死していたと元同僚の人は言っていた。なんでも橋渡しするのが好きな私だが、今回は危険な香りがしたものだ。どうもヤクザの匂いがしていたから。

亡きディープインパクト 筆者撮影