病院。

ある病院へ見舞いに行くと隣の部屋から医師と患者の声『もう○○さん、退院してもいいですよ』患者『でも帰ってもババの世話があるのでしたくない、先生、もう少しこの病院へ置かせてもらえないだろうか?』。朝・昼・晩ご飯がついて、たえず若い(?)看護士が部屋を訪れ、声をかけて面倒を見てくれる。おじいちゃんにとっては『天国』のような病院である。高額医療費の上限を使えば、年金が低ければ月額5万以内で病院で寝泊りできる。もちろん何かの病気があっての入院であることには間違いない。なんだか駆け込み寺として病院が見えた瞬間である。下手に病気が治ると出て行かなければいけない。おじいちゃんには帰宅という辛い現実が待っている。病院にとっても大部屋が空いていれば、それだけでいい収入にはなるからお客さんである。

私が見舞った客から見たら『信じられない。こんなまずい食事を朝・昼・夕に食べ続けることは拷問に等しい。』彼は個室の差額ベッド一日3400円を利用しているからいい客である。『いま退院日を巡ってもめているのだと』。もともと肺炎で彼は入院したのだが点滴と抗生部質を10日間の投与。看護士は『朝の血液検査でばっちり、今日の退院は100%保証します』。

しかし、朝の回診の行列では(まだこんな習慣をしている)『まだ1週間は入院は必要と思うが、きょう退院しなければいけない理由でもあるのですか?』と聞いてきた。彼の話では明日、飛行場から孫が福岡へ帰り、見送りさえ出来ず無念ということで最後の夜を家族で過ごしたいのが本音であったが、血液分析の表を開示もせず、丁寧な疾病の説明も無く1週間の延長を勧める主治医に不信感が募る毎日であったから、早く帰宅したかったのである。左腕の点滴台を見せてもらうと5センチ四方の皮膚が真っ黒。注射の下手な看護士も多い。迷い針でもされたら『この下手野郎』と叫びたくなる。

病院の食事内容もひどい。全員が糖尿病患者の料理である。『しょうが焼きの肉は靴べらである』。札幌の知り合いの看護師は『食事しか楽しみがない入院生活では、家族からどんどん美味しい食事を運んできてもらったほうがいい』とも言っていた。古い話だが、母の入居したベストライフという全国ネットの老健施設も経営者が株の売買に失敗して、そのしわ寄せは施設入居者の待遇を直撃した。楽しみだった食事の質の極端な低下、次々辞める介護士。母曰く『入居時に一時金を400万円取り、毎月最低15万~17万』『やっと顔を覚えたと思ったらいなくなる。淋しいよ』100人の老人がいるが介護士3人は喉に溜まった母の痰を吸引作業できず、救急車を2回呼んだものである。搬送先の病院で1分で簡単に痰取りをしてくれた。『あの施設には3人の看護士がいるんだけれどね』と皮肉を一言出るのも無理はない。医師を含めて看護士の患者対応の初歩的な技術や普通の会話ができる人たちが少なくなってきている気がするのは私だけだろうか?

しかし、救いは数少ない良心的な看護師がまだ健在であったと彼は言っていた。患者に寄り添うことを忘れない人たちがまだまだいることである。