200億円詐欺市場。詐欺する側から世の中を見た。

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『振り込め犯罪結社』(鈴木大介著 宝島社2013年12月刊)~200億円詐欺市場に生きる人々~から。被害者の側ではなくて加害者の側から取材を敢行している鈴木大介さん。なぜこの世界に入ったのかも含めて。


これまでに『家のない少女たち』『家のない少年たち』『出会い系のシングルマザーたち』など貧困や犯罪現場の当事者にも取材をして、取材秘匿をして裏社会に信頼のネットワークがある鈴木さんしか書けない内容に今回もなっている。筆者は藤原新也さんや石井光太さん、西岡研介さんの延長で鈴木大介さんを読んでいて、彼の書く姿勢が大好きだ。


振り込め詐欺集団は決して捕まらない組織になっている。役割分担があり、横の連絡を禁止して縦割りにする。演技する集団と金を下ろす(ダシ子)・受け取る人間(ウケ子)にもなんの関係性を持たせない。捕まるのはいつもダシ子かウケ子であって、彼らが捕まってもそれに指示を出した人間が誰なのかわからないようになっているし、一度使った携帯は使いきりで二度と復活しないように道具屋が手配している。


さらに名簿屋という存在もある。この名簿があるのとないのでは、成果に10倍の差が出るほどだ。演技をする(電話をする)役者たち(プレイヤーという)にはご法度八カ条を毎日大声で言わせる。

喧嘩

他業

服装

家族

銀行

要は別件での逮捕が組織に大ダメージを与えるから、組織を守るために突然大金を持って走りやすい行状について注意を促すわけである。秘密が守れないのはすぐに切り捨てられる。殺される場合もある。指詰めもある。元締め(ここでは番頭格)は毎日、詐欺のニュースを読むために朝早くから新聞全紙に目を通して、『最近、○○市役所から還付金を振り込みたいので口座番号を教えてくれ』と言う電話から、後日詐欺被害に遭いました・・という記事を読むと、演技のシナリオを変える工夫をする。そのために毎日のニュース読みは欠かせない。番頭格の上に資本家(ここでは金主)がいる。これはヤクザなのか中国資本なのか闇金融機関のオ-ナーなのか書けない部分。書けば鈴木さん自身命が危ないところだ。


さらに詳細は警視庁のホームページが一番勉強になると語っていた。地域では『東北がだましやすい』『関西は方言もあってだましづらい』(最近は関西も増えているが)。彼らが狙うのは60歳以上。なにせ、彼らの抱える金融資産は全個人金融資産の6割を占める、950兆円。29歳以下は10兆円しかない。さらに10代から20代前半の失業率は8%~10%。若い世代を豊かにすれば、詐欺集団に引き込まれる若者は減るというのが鈴木さんの提言だ。


鈴木大介さんは41歳で脳梗塞で倒れてリハビリの体になってしまった。読んでいてもどうしようもなくきつい本『最貧困女子』などを書いて、気が狂いそうになるという文章に何度も出会った。また取材に応じた少女たちが鈴木さんに誠実に対応している、素直な言葉を吐いている姿は、彼が漂わせる人間の質の高さを現してもいる。


7月19日に書いた頑張れ鈴木大介さんを最後に再録します。

がんばれ鈴木大介さん!

私が2回ほどブログでお世話になっている、ドキュメンタリー作家鈴木大介さん。「最貧困女子」(幻冬舎新書)は、言葉を失う本であった。7月10日の朝日新聞朝刊の新書を紹介するコーナーに彼の新著「脳が壊れた」(新潮新書821円)があった。説明に去年41歳で脳梗塞で発症し、脳の機能を損傷、今度は自らが障害者となって、若者たちの生きづらさを、物書きの生命線パソコンを打つまでのリハビリの日々や心の変化が書かれてある・・と。取材対象者への肉薄度が凄い書き手で、取材中、何度も彼自身言葉を失い立ち尽くす場面もあったから、相当なストレス抱えての執筆だろうと思い、がんばれ鈴木大介さん!と応援ブログを載せた次第。