つつじ

500戸の戸建てにチラシを配布していると、いろいろな各家庭内の現実の出来事が耳に入ってくる。立派な新築の家を建てた途端の離婚劇もあったり(不動産会社から見たら美味しい物件)、親がふたり同居を始めたら1か月後、両親は出て行ったととか、家庭の中は事件に満ちている。

その人の成育歴や家庭の中の人間関係や権力関係、朝ご飯や夕食時の会話の有無また言葉遣い。共働きのために庭はタンポポに覆われてる家。かと思えば、周りをバラで囲んで丁寧に生きている余裕のある家(でも実態はわからない)。「家」の「庭」を家庭とはよく言ったもので、庭の草取りをして(アパートマンションなら後片付けをして掃除をして、空気を入れ替えて)生きたいものである。

そんなある日、新築したばかりの瀟洒な平屋にチラシを入れたとき、おじいちゃんが「隣町に持ってる借家を値上げしたいが、住んでる人間が金がないと言って応じない。出すなら金を寄こせと言ってきてる。なんとかなりませんか」と相談された。「いま住んでいる人の権利がまず保障されるから、追い出すのは難しいと思いますよ」と私。「リフォームに40万円かけたので取り返したい」と。

私は、えっ、たった40万と思ったが。おじいちゃんの家に表札がないのに気づき「表札は付けないのですか?」と聞いたら「いま、付けない家が多いよ」と。地番入った住所だけで郵便物は届くけどね。年齢を聞くと82歳、数年前に奥さんを亡くした。18歳から郵便局一筋で70歳まで52年間働いたというのだ。これだけでも凄い!!カラオケが好きでいまも歌っているが、そこで知り合った女性が入り込んで(呼び込んで?)同居している。

残念ながら年齢は聞けなかったが、「それがね、金遣いが荒くて困っている」と愚痴。「いまもエステに通っている」と。エステがマッサージかもしれず、実際にこの目で見てみないと何とも言えない。隣町に教員をしている長男がいるが・。まあ。親父、好きなように生きたら?ってところか。カラオケ仲間に少し貯金があることを言ってしまったのだろうね。

数年前、地元の金融機関の株主総会へ取引先の証券会社から見学のために参加券をもらい・見学に行ったことがある。株主にご老人の多いことといったらビックリ仰天。身なりも地味で、そこらへんにいるおじいさん・おばあさんなのに。杖をついてきている人も多い。株主総会兼老人ホーム説明会みたいな感じ。

議題も終わり、質疑応答に入った。老人が手を挙げて「この銀行は地元企業の水準からみて、給与が高すぎると言われている。そんな金があるなら株主へ配当金を増やして欲しい」と。どうみても80代だ。何に使うために金がまだ欲しいのか「老後の不安からかもしれないが」、貧乏育ちの私にはもう十分ではないかと彼らを見て思った次第。お金が一番嫌うのは「じっとしていること」なんだけど。それって、死に金だよ。あっ、そうか、死んでから相続で争って、あちこちに動くね。そのとき、あなたはいない。

 

  1. 僕の義理の叔父さん夫婦は子供がいなかったが札幌で支社長時代、敷地が広い平屋の家を建て高台に住んでいた。これが男も惚れるダンディな紳士(?)。女が放っておくわけが無い。伯母さんは緑内障で目がよく見えない。女性にまつわる裏話はいろいろあった。彼も孤児で田舎で親戚に育てられ京都に丁稚奉公に出された先のお嬢さんと逆玉の輿のシンデレラ・ボーイで出世。京都は二条城の近くに戸建てを持っていたが身体の不自由な男兄弟に貸して札幌転勤。定年で札幌宅は僕に売り、いざ帰ることになったが相手が居住権を主張して動かず弁護士に相談。とりあえず京都市内の老朽アパートに住み家主が不自由な生活を強いられている現状を作ってから裁判で取り戻したケースがあった。僕もアパートを引き払って買った家に済んだ途端、今度は伯母さんがこの家を離れるのが嫌だと愚図って難儀した。そんな伯母さんも先に逝き、叔父さんも財産を相続する子供も居らず親戚あたりに取られて他界したらしい。色男の叔父さんもお金や財産は持っていけなかったが、でも、年老いても女性にもてたのはうらやましい限りだ。きっとあちらでも、いい思いをしていると思う。

    • 最後は裸で棺桶に一人で入る自分の姿を想像したくないのでしょうね。それを前提に生きると、もう少し、余裕のある、我慢強い暮らしができると
      思うのは、私だけでしょうか。昔の少年さんは、親せき関係いろいろ多いのですね。いまの人たち、あんまり叔父や叔母との付き合いはしないから
      、これも時代ですかね。父が亡くなったとき、司法書士が「原(はら)戸籍謄本」づくりを始めました。財産の分与を正確にするために、父親に
      ひょっとして認知した子供はいないかなどを調べたのでしょう。世界では、生まれた実家が大金持ちで、生涯一度も働くことなく何兆円の資産を
      引く継ぐだけの人生を送る男女が増加する一方で、虫歯を治すこともできないアメリカ人(月に1万円民間の保険会社へ保険料を払わないと歯科へ
      行けない)も激増してます。シリアも200万人が難民化して国を捨てるも、ブルガリヤやドイツで移民排斥のデモに虐められています。中国の
      農民工も貧民窟で暮らしています。住む場所さえない、貧しい日本の男女もいます。着る物だけを運んで都会を移動している人たちです。そういう
      ことを考えると、贅沢な悩みの老人ですよ。

Leave a Reply to 昔の少年 Cancel Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です