いつの時代もそうだが、未来が見えないと占いや運勢、星占いに市民は押しかける。自称魔法使いや、妖術者がロンドンのあちこちで口をあけて待っている。この商売はまもなくおおっぴらに堂々と行われるようになり、看板や広告まで出すようになる。数えきれない群衆が彼らの門戸に殺到した。まだ17世紀のころである。彼らの商売と金儲けに『疫病さま様(ペストさまさま)』であった。貧しい人たち女中奉公や下男に、この酔狂事に金を浪費していた。そういう占い師もいずれペストに罹患するかもしれないのに。現代でいえば『不安産業』の跋扈である。出版を利用した新興宗教、占い各種の流行、神経クリニックの続々開業とSSRIの抗鬱剤大量消費。各種薬物汚染。スマホやゲームに逃げる心性。挙げたらきりがない。

 

とはいえ、当時の門柱や街角に張られた医者やいかさま師の広告。『疫病予防丸薬、効能確実』『伝染病予防薬、効き目絶対保証』『空気汚染に対する妙薬』『疫病(ペスト)にかかった時の健康維持法、絶対間違いなし』『防毒丸』『疫病予防酒、効き目無比、新発見の妙薬なり』『悪疫万能薬』『正真正銘の防毒酒』『特効解毒剤、いかなる伝染病にも卓効あり』。デフォーは『ゆうに1冊の本が出来上がるくらいの』張り紙の氾濫を描いている。さらに医師の客寄せ広告もある。たとえば『当方、ナポリより到着早々のイタリア貴婦人。ひとえに辛酸をなめた結果、自ら発見せる門外不出の予防法を伝授す。彼の地における、日に死亡者2万を出せし先頃の流行の際、奇跡的治療に成功せり』。デフォーは広告の引用をしながら、『この時代の性格』を描写しようとした。特に1664年以降のインチキ広告氾濫をたくさん引用している。まるで現代を見るような錯覚に筆者は眩暈する。

 

しかし、こうした市民の中でも貧乏人たちを救おうと市長は、医師会と相談しながら、特定の内科医や外科医を指定して占いやインチキ治療に散財しないようにした。しかしながら、内科医が多かったが、医者自身がペストでばったり死ぬことも多かった。(注:カミュのペストにも医師自身がペストで死ぬ場面が描かれている。エボラ出血でも多数の看護師や医師が伝染して斃れた)さらにペストが広がる兆候が出たとき、急な拡大を見せたとき、当局はまず一般の秩序を守るために、食料その他を供給した。そして問題は発病者が出たときに、その家をどうするか、規則や法令をどうするか。デフォーはこの部分が一番陰惨な、悲惨な話であると述べている。この続きは時間を少し空けて書かせてもらう。少しおまちください。

 

  1. まさに「火事場泥棒」ですね。東北の震災で避難したゴーストタウンに忍び込む泥棒たちもいましたね。放射能汚染地区でも,命より金目当ての行状はこれにも似ていますね。どうせ何時かは皆死ぬんだからと開き直っているみたいですね。疫病や放射能被ばくの恐怖にも勝つ金銭欲には驚きですが,このような人からまた被害が拡散するのでしょうね。国も法律も事が起こらなければ対応できない体質ですから,疫病がある程度蔓延したり,汚染が拡大したり,被害が出たりしないと対策案をも検討しないでしょう。「泥棒を捕まえてから縄をなう」ようなものです。それでは遅すぎるのは誰にもわかる事なんですが・・・。

    • 現代は『大人の消失』が大事件です。首相・官僚・大臣・企業経営者。子供の親たち。ある人が、常識のない学生の背後に
      常識のない親たちがいると書いていました。クレーマーですね。特に普段は存在感の薄い父親がこのときとばかり、妻と
      子供のためにクレーマーに変身すると。テレビメディアに出ているタレント学者も火の粉を自分自身かぶらないから好きな
      ことを言って、イジメブームを演出してます。足元のことになるとからっきし弱い人々の群れ。大人になれないわけです。
      私も注意しないと。

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