サリエルの命題(2019年9月4日掲載)
『病の克服は、必ずしも人間社会を幸せにするものではない、それがあなたの持論でしたよね』
インフルエンザの突然変異型で、世界的な大流行を起こしやすいパンディミック(スペイン風邪や香港、サーズ、鳥インフルなど)に備えてワクチン研究に心血注ぐ研究者の物語だ。アメリカの82歳になるインフルエンザ研究者レイノルズ個人ラボラトリーに呼ばれた野原研究員。これまで長い間メールでお互い論文を読みあった仲であったから意思疎通は早いし、医学の進歩と幸せ感も似ている。『万人が等しく医療技術の恩恵に与れるというならまだしも、医療は立派なビジネスだからね。カネのあるなしが、命の長短を決めるなんて、どう考えてもおかしいよ。そりゃあ、どん底から這い上がり、富を築いた人間も世の中に幾らでもおるさ。だがね、どんな家に生まれついたかで人生が決まってしまう人間の方が圧倒的に多いんだ。そんな世の中は間違っている』(サリエルの命題 楡周平 講談社 同著112p)たとえば、いま日本でパンデミックが起きたとして、ワクチンが1000万人分しかないとき、接種の優先順位があるのをご存知だろうか?最優先は医者と看護士だ。次は国民生活・国民経済の安定に従事する仕事に就くもの(政治家と公務員・軍人)だ。一般市民は後回しであることを覚えておいてほしい。さらに政治家や医者のコネを使って我先に接種を受けようと大混乱が出てくるのは必死だ。『現代社会の歪みきった構造が一気に表面化するのはその時だ。権力者、富裕層は真っ先に接種を済ませる。ワクチン製造に従事する製薬会社の人間たちもそうだろう。力、カネ、コネの有無が生死を分けることになるんだ。・・・・接種を受けられない人は日本はどうなるかわからないが、アメリカではこの世の地獄になるだろうね』アメリカは銃保持市民が多いからね。レイノルズ博士は前立腺ガンを罹患してリンパへも転移している。『もう82歳だよ。治療を受けたところで余命は知れたものだし、生命体は死を免れない。それを医療の進歩で生き永らえようとするからおかしなことになる』野原は、この言葉を受けて『病の克服は、必ずしも人間社会を幸せにするものではない。それがあなたの持論でしたね』と続く。年間医療費42兆円(内訳65歳以上が6割使用)。医者がなぜ裕福な暮らしになるのか、それは『日本の健康保険制度』のお蔭です。診療報酬も考えず、処方する薬の薬価も知らない医師も多い。製薬会社も健康保険制度に売る、医療機器の納入も原価を償却するために(高額医療費の上限があるからすべて税金から残金は全額徴収できる。そうやって医療費だけで42兆円使う。
匿名
私たちが一番不安なのは、いつお世話になるか分からない医療費ですね。病気は気持ちだけでは克服できませんから、先ずはお金が物を言うでしょうね。その肝心なお金が無いがために不安はますます募ります。こうなれば破れかぶれで、倒れたら助けて貰わず、そのままで。と、妻との間では、お互いに救急車は呼ばない約束をしました。が?、