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2015年『下流老人・・一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)を書いた著者が2016年3月に講談社現代新書を出した。『貧困世代』~社会の監獄に閉じ込められた若者たち~である。著者は34歳の若者で自分の娘と同年齢だ。


第1章社会から傷つけられている若者=弱者 第二章大人が貧困をわからない悲劇 第三章学べない悲劇・・ブラックバイトと奨学金問題 第四章住めない悲劇・・貧困世代の抱える住宅問題 第五章社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない。


きょうは、この中で第二章大人が貧困をわからない悲劇を取り上げる。よく語られる5つの『若者論』の誤りを指摘している。『どうしてまだ若いのに働けないのか』『なぜ、そのような状態になってしまったか』『怠けているだけではないのか?』『支援を行うことで、本人の甘えを助長してしまうだけでないか』など、筆者も一度ならず口にしたことがある科白の数々だ。


5つの誤りは(1)働けば収入を得られるという神話(労働万能説)(2)家族が助けてくれるという神話(家族扶養論)(3)元気で健康であるという神話(青年健康説)(4)昔はもっと大変だったという時代錯誤的神話(時代比較説)(5)若いうちは努力をするべきで、それは一時的な苦労だという神話(努力至上主義説)。


この5つの誤りについて具体的に相談に来る若者の個別の実態を考えると(1)については非正規雇用やサービス残業の実態。(2)の家族も両親がそもそも苦しい生活をしていて甘えられないこと。(3)は精神疾患や不眠で悩まされていること(4)昔は終身雇用と家族主義的な社風に守られていて、現代の労働環境とは全く違うこと。(5)努力しても派遣や給与の伸び、自身が定年を迎えて支給される年金額では暮らしていけない現実を前に、苦労は一時的には終わらないこと。さらに追い討ちをかける大学での有利子奨学金だ。90年代は8割が無利子だった奨学金が今は7割が有利子である。しかも奨学金が返済延滞は33万人(2012年)900億円。賃金が安いがゆえに返せない人も多い。


生まれが資産もあり、豊かな家庭に生まれるか否かで『持ってる人』『持たざる人』が固定化される。人生の大筋が生まれによって決まり、そこから抜け出すのは容易ではない。頑張れば報われる時代ではなくなっている。(1)から(5)は、私の親たちそして自分たちの世代では当然の仕事観ではなかったか?未来が今より良くなるという希望や期待、現実の収入増加、生活に新しい物が入り込み常に未来を夢見れた世代であった。それがガラガラ音を立てて崩れている。それを救う道はあるか?ある。『救済するために人に給付や投資をすることだ』。時間がたてばそれは必ず返ってくるものだ、社会や周りを豊かにして。現代は未来への人への投資ではなくて人件費削除が横行している。


行き過ぎた新自由主義はアメリカでもサンダース旋風を生み(最低賃金の上昇や高等教育の無償化、富裕層への増税を公約に掲げた)、イギリスやスペインでも若者支援を掲げる政党が支持を増している。先日、国連の予想でタックスヘイブン(租税回避地)に置かれた預金は4000兆円に上ると発表があった。母国に置かれていれば数千億円の税を徴収できると。兆を超えるかもしれない。


1969年から全共闘運動が全国の大学で行われた。旧帝国大学解体、授業料の値上げ反対、ベトナム戦争反対、反米闘争の意味合いも強かった。あのころ活躍した団塊の世代は66歳から70歳を迎えている。ここらでひとつ社会へ還元する生き方のお手本を最後に示したいものである。特に老後暮らしが、何ひとつ不自由のない人から。

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