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人間の体は、血液にしても細胞にしても、皮膚にしてもほぼ1年でがらりと変わってしまう。皮膚は下から新しい皮膚細胞が盛り上がり、垢となって風呂場へ消える。古い血液はどこにいくのだろうか?たぶん便として吐き出される。

心臓の筋肉も新しくなるというから、私が50歳のとき心筋梗塞を起こし、発見がヤブ医者のおかげで一日遅れて、ほぼ30%の心筋が壊死したが、専門医に聞くと「壊死した細胞は細胞分裂は起きない」とのことで23年が経過した。階段を上り下りすると息切れはするが、なんとか心臓の機能は果たしている。肝心な大脳細胞も細胞分裂を繰り返して、ほぼ1年ですっかり入れ替わる。(とはいえ最近は疲れやすい)

ということは、去年の私といまの私はすっかり、肉体が入れ替わっていて別人ではないかと思う。去年、ある金融機関から借りたお金は「去年の私が借りたので、今の私は大幅な細胞分裂で別人になっているのだから返す必要はない」とも極論では言える。しかし、これを認めれば、経済や国は成立しない。どんなに細胞分裂で何度も私が新しい自分になっても、同じ人と同定されることになる。

動的平衡の福岡伸一さんファンの人なら、この話が彼の著作に何度も出てくるから覚えているだろう。しかし、私がどうしてもわからないのは、こころとか精神とかはどうなっているのだろうかということだ。考え方や価値観や好き嫌いが肉体的な細胞分裂の繰り返しで、どのくらい変わるものなのか。また変わらないのか?「私は私だ」と思い込んでいる私たちに、その同一性は、常に揺らいでいるのだよと福岡伸一さんはパスカルの言葉を引用して書いていた。NHK 100分で名著 パンセ 148p

結婚のときのことを思い浮かべると、釣るまではエサをたくさん撒いたが、釣ってしまうとエサはやらないのはきっと私の細胞分裂のせいで、私が変わってしまったと言えばいいかもしれない。何でも細胞分裂に原因を求めると、自分の意思はどこへいくのだろうか。要は私は私のまま、生まれて死ぬまで、変わらない私だと言う幻想が歴史のどこかで入ってきたと思えば妙に私は納得する。そういう風にした、そういう制度にした。私は変わってはいけないのかもしれない。不自由な私である。しかし、これは妻側からも言えて「つき合ったときの貴方ではないし、私も変わった」と言えば妙に納得する。

ときどき、自分の意識や観念の世界から、「自分が脱出できればどんなに解放感を味わうだろう」と考えることがあるが、無理だ。夢の世界さえ現実が出てくるわけで、自意識の中でそれぞれが暮らしていると納得するしかない。自分の皮膚の中から出ることはできない。出ようとあがくのが芸術なのかもしれない。絵にしても彫刻や小説も、作り手が自分を表現しようとする以上に自分から出ようとしているように見える。

養老孟司さんが一日5分でも10分でも自然を見なさい、花を見たり、空を見上げたり、地面の虫を見たり、作物を手に取ったり勧めているわけは、意識の牢獄から瞬間的にも出て自然に入ることの大切さを言っているのだ。

人間の体はその年齢分の回数、入れ替わってると思うと不思議な感慨に襲われる。実はその答えは、一番上の図に回答がある。言葉や記憶や文字というツールが自己同一性を担保しているらしいのだ。特に記憶がキーマンだ。記憶もずるくて都合の悪いことは脇に置いてしまう傾向もあるから要注意だ。選ばれて記憶されていることも多いから客観性から遠い。主観の塊だということは覚えておきたい。

  1. 貸した金は覚えているが?借りた金は都合よく忘れる。着せた恩は何時までも覚えているが、着た恩は直ぐに忘れてしまう。意義を申し立てて強硬に抗議した事も立場が変わればすっかり別人に変身する。更には年齢を重ねれば重ねるほど何でも忘れてしまう。役人か何かで威張っていた人も『オレを誰だと思ってるんだ!・・・?誰だっけ?』と別人になる可能性も大。蟹なら数回の脱皮を繰り返し絶品の大きな蟹に成長するのに?蛇も脱皮して成長するのに?人間は細胞が変わって、次第に馬鹿になって行く生き物なんですね。

    • 細胞が変わって次第に馬鹿になる生きものが人間という考え方、面白いですね。私も都合の悪いことはどんどん忘れていきます、老化です。恩とか貸したことは覚えているが受けたことはずいぶん忘れます。忘恩行為ですが、人生の実相はそのたぐい多いです。昔、10万貸した人が半年経過して返してくれというと「たしか5万でなかった)と反論。人事異動でいなくなりましたが、実は5万を2回、ススキノへ飲みに行くので借りたことが判明。貸した人は諦めました。アル中の人で、仕事中もアルコーール臭、懲戒免職でしたが、上司が彼を守りました。上司もアル中でしたから。アル中は細胞分裂とどう関係しているのか?

  2. 結婚も最近では変わって「同性婚」なるものさえ出て来ました。昔風に考えれば異性同士だから成立するのが結婚で、それも電極のプラス&マイナスの法則と思って居ましたが、マイナス同士の電極でも引き合う?のかと不思議にも思えます。でもホモやゲイやレズも昔から有ったとは言え一部の人たちと思って居たのですが、考えて見れば当人たちは肩身の狭い思いをしていたとも考えられますから、時代も脱皮してその枠が外れたのでしょうね。つまり皮膚細胞などと同様に時代(考え方)も脱皮や細胞変化が起きていると言えるのでしょうね。

    • 異性と同性、どちらも共同生活OK、婚姻。プラスマイナスの結婚だけでなく、同じ極の結婚ですが、トランプ大統領は反旗を翻していますね。議会を通さず、トランプの大統領令は西洋の思考や思想を、地球を変えていきますね。西洋のデモクラシーの終わりです。国連も脱退する可能性あります。去年のアメリカとトランプのアメリカは別人です。特にインテリが判断ミスをしています。

  3. クルマもしょっちゅう脱皮を繰り返して今やEV車の時代に突入しています。様々な国際間の競争も激しくあの歴史ある日産が後進のホンダに呑み込まれそうになりましたね。協議は破断となりましたが、最近はカエルが蛇を呑み込む事も当たり前になって来ました。銀行も流通もクルマ業界も、犯罪などでも、他にも有りそうですね。社会や企業細胞の変化ですかね。

    • 小さな企業は、大を飲み込むこと、増えてきますね。新しいことは個人で始まりますから、そういう意味で楽しい夢ある時代に入ってます。しかし、ガン細胞も急に増えますから、こちらは遠慮して欲しいと思います。それにしても動きの鈍い官僚たち、どうにかなりませんんか?米不足を招いた農水省の減反政策、誰も責任取らず、きっと来年も再来年も同じことが起きます。人材派遣会社がコメの買い占めで儲けようとしました。ハイエナみたいな業種です。

  4. 国会で『記憶にございません!』が流行りましたね。記憶にない訳が無いのに不思議と納得してしまう結果も見越しての答弁何でしょうか?。細胞変化を利用しているかのように?踵を返したように人は都合よく変われますね。一体?どんな脳の構造なんですかね?本人自身よりも、都合よく支配している司令塔の脳の構造を見たいですね。

    • 大脳の構造ですね。どうなんでしょう?私も妻に「記憶にありません』とか「言った覚えはない、プロポーズのとき働かなくていいと言った覚えない』と抗弁します。

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