17日の台湾有事が主に領海の話でしたが、きょうは空の話です。

領空の話も書こうと思っていたのでご笑覧ください。
ただし領空については、歴史が短いので海の掟に当たるものがありません。
20世紀初頭は敵味方の軍用機が出会ったら、ハンカチを振って挨拶してました。

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領海での船舶の航行は比較的自由と書きましたが、領空となると話は全く違います。

例えば領海侵犯してきた軍艦がいきなり攻撃しても、大艦隊なら別ですが、船は遅いので単独だとたちまち撃沈されてしまいます。そうなると莫大な建造費と維持管理費、さらに10年近くかけてきた人材育成が水の泡です。たとえ国会議事堂を破壊できたとしても、見合うかどうか疑問です。

これが航空機となると、単独でもマッハで飛んできて遠方から核ミサイルを撃ち、そのまま逃げおおすことも可能です。今なら、戦闘機1機でも遠くから飛んできたミサイルの誘導するかもしれません。逃げられるということは、何度もそれができるということなので、防衛側は領空どころか、かなり遠くから迎撃機を飛ばせて侵犯機に随伴し警告します。

船は何日も海上に停止したままでいられますが、航空機は減り続ける燃料を計算しながら飛ぶので、飛ぶ以上何らかのはっきりした目的があります。それが信号や通信を遮断していたりすれば、「何か事情があるのでは」では済まないことになります。

ちなみに国境や領海・領空侵犯の小競り合いがそのまま戦争にエスカレート、というのはまず起きません。軍隊は命令があればすぐ撃つ訓練をしますが、命令がなければ一発も撃てません。ヤクザの抗争と違って、兵士が勝手に報復はできません。事前に、「この作戦では、攻撃を受けたら反撃すること」という命令を受け、その訓練をしていなければ、どんなに怖くても我慢するのも任務です。兵士がびっくりするたびに勝手に撃っていたら、作戦地点に行く前に弾が足りなくなります。

軍事については反対派も養護派も、「特殊な高性能兵器を使い、常人離れした精神状態の兵士が戦い合う」ような話をしますが、実際は我々と同じく、命も惜しいし失敗もやらかす人間が、限られた性能の武器をやりくりし予算にしばられながら行ってます。つまり戦争は喧嘩の延長ではなく公共事業の一種なので、本当に注意しなければならないところは、メディアなどの言い分とは別のところにあるはずです。

  1. ゼロ戦パイロットの弟。

    1976年9月6日、ソ連防空軍のMiG-25数機がチュグエフカ基地から訓練目的で離陸。そのうちの1機、ヴィクトル・ベレンコ中尉が操縦する機体が、演習空域へ向かう途中で突如コースを外れ、急降下して低空飛行に。ソ連側のレーダー追跡を逃れ、亡命を実行するための行動だったとされています。午後1時11分、航空自衛隊の奥尻レーダーサイトが低空で接近する不明機ミグ25を探知。
    領空侵犯の恐れがあるとして、千歳基地のF-4EJが午後1時20分にスクランブル発進。しかし当時の日本のレーダー網は超低空飛行探知に弱く、スクランブル発進のF-4EJの搭載レーダーも地表反射に弱かったため、MiG-25を見失ってしまったようです。
    本来ベレンコ中尉はF-4に誘導されて千歳基地に着陸したかった筈がF-4が一向に現れない上に燃料不足と天候の問題などから千歳行きを断念。咄嗟の候補として八雲飛行場か函館空港に変更。理由は「ナイキ(地対空ミサイル)がない」という事で函館を選んだようです。午後1時50分頃MiG-25は函館空港に強行着陸。ベレンコ中尉は拳銃を1発威嚇発射し、警察に身柄を確保された。彼はその場でアメリカへの亡命と身の保護を要求。一方、日本政府はベレンコ中尉の亡命意思を確認し、米国と協議を開始。MiG-25は防衛庁によって分解調査され、11月14日にソ連へ返還されたそうです。この事件で日本の防空体制の弱点が露呈し、レーダー網や戦闘機(F-15導入など)の整備が進んだようです。また、西側諸国がMiG-25の性能を詳細に知る大きな機会となったそうです。冷戦史に残る亡命事件として国際的に注目された事件でしたね。領空とは「見えない境界」であり、侵犯はその境界の試し行為でもあるようです。また、スクランブルは「撃たない戦い」であり、互いの理性と暗黙の了解で成り立つ儀式のようなものとも言われています。これは正に軍事行動であると同時に、国家間の軍事コミュニケーションでもあるとも言われているようです。そして、今や無人機の登場がこの儀式の前提を揺るがしつつあると言われて居ますね。最近でも2024年9月23日:北海道礼文島沖でロシアIl-38が領空侵犯。2025年5月3日:尖閣で中国海警局ヘリが領空侵犯。我々はその事実をニュースで知る度に戦争と結び付けがちですが、いかなる場合にも軍には規律と理性も有りますから、今後も冷静に見守りたいですね。

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