ブラキストンと北海道のオーク材

北海道のオーク材(ナラ材)が英国へ輸出されて、家具職人へ渡り、シャーロックホームズの部屋(ベーカー街451番)にも置かれていたかもしれない話を書いた。私が西洋骨董のアルバイを6カ月ばかりしていて、そこの社長が1年に2回買い付けに英国へ渡り「北海道産のオーク材の家具を買い戻しているような」光景にも見えた。オークは材質が固く高級家具づくりに合う。

なぜ、こういう買い付けが英国で行われたのか?そこに生物でおなじみのブラキストンという名前が出てきたので紹介する。次の文章だ。

「東南アジアの高級材を刈りつくしたイギリスは、開国間もない森林国、日本に目をつけた。とくに北海道産ミズナラ(オーク)は最高の材質として高い評価を受け、良質のオーク材の入手に困り果てていたイギリスに家具材やウィスキーの樽材として盛んに輸出された。輸出を仕切ったのはイギリス出身のブラキストンだ。苫小牧周辺のミズナラの大木を伐採してヨーロッパに大量に輸出した」津軽海峡が本州と北海道で鳥や動物の生態が違うということで、有名なブラキストン線で小学生でも知っている名前だ。森に分け入れば動物と植物を仕事の合間に観察できる。

1826年にイギリスがビルマを植民地にした理由も原生林からチーク材を大量に伐採するためだ。400万ヘクタールの森林が伐採され、次に狙われたのは日本であった。「名作の中の地球環境史」(石弘之 岩波 261p)歴史は横でつながる、水平につながる。いま北海道の森は水資源を求めて、また美味しい空気を求める将来富裕な中国人の別荘地として買われている。今度は安全な水と空気が求められている。帯水層から天然水をボトリングして地盤沈下を起こしているとボトリングメーカーが地元住民から訴訟を起こされてもいる。ネッスル社。コカコーラなど。植林をして何十年、帯水層を人工的にはつくれない。水道水は日本全国どこでも美味しいのに、すっかりペットボトルで飲む習慣が根付いてしまった。

オーク材の話から水の話になってしまったが、文明の進展は天然資源の枯渇を裏で招いているという話。私たちの使うスマホもレアメタルなしでは作れない。アフリカやモンゴルの地下から低賃金労働で採取されて、運ばれている。目の前の商品はそうやって長旅に耐えた材料たちで作られているのだと、ときどき考えてみたい。