2016年2月21日再録〈1行追加あり)

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向田邦子さんの短編のテーマの一つが、外にそれぞれリラックススペースと人がいて、みんな自宅にいるより伸び伸びしていて、ときに愛人がいたりして、事件らしきものが発生する。実はひとりひとりが孤独な毎日を送っている様子を描いている。夫や子供が家を出る月曜日、妻が晴れ晴れ、気持ち良くなるのもうなづける。本来、家族も他人同士が作る人工物だから人為的な存在・仕組みで、アチコチ壊れやすい。すべての犯罪は家族関係から生じるとまで言う人もいる。宇宙のブラックホールを探求するのもいいが、探求者自身の家族の足元は大丈夫か?空ばかり見ていて穴に落ちたギリシャの哲学者もいたから。それぞれ各人が見えない家族や家庭を持っていたり、独り身だったり。その空間から社会へ飛び出してくる。物理で言うブラウン運動である。

家族の中の危うさは古来、文学・戯曲でも普遍的に共有されてはいる。ハリウッド映画も、壮大な宇宙をテーマにしてその危機を乗り越える映画が実は父と娘の愛情がテーマだったり、ほとんど離婚率50%に迫るアメリカの日常の現実を背景に出てきているシナリオでホームドラマに急展開するストーリーも多い。

向田邦子さんは、最後は台湾での飛行機事故(カメラに凝りだしての撮影旅行であった)で51歳で亡くなった。私は昔から連続テレビドラマはほとんど見ないので、彼女の出世作「寺内貫太郎一家」は見ていないし、倉本聰「北の国から」も見たこともない。NHKの「大河ドラマ」も全然見ない。なぜだろうと考えると、そういう時間は(家族みんなで見る)という時間帯で、その過ごし方が少年時代から苦手であったのかもしれない。今と違いテレビは居間に一台しかないし。私の家にいまはパソコンを入れて3台のテレビがあるが殆ど見ない。時間がもったいないのである。

それこそ「ひとつ屋根の下で住むが、心はここにあらず」の人生を10代からずっと送ってきたのだと思うと納得がいく。向田邦子さんは40代前半で乳がんの手術を受けてから、再発に怯えながら丸山ワクチンも打っていた。ここに「向田邦子の恋」という本がある。久世光彦さんも「触れもせず」で彼女について本を書いていて、彼女は仕事が終わったら、ある時期から通い婚的な男性がいたと書かれてある。

その手紙も死後、妹の向田和子さんに公表されているが、「自分を写したカメラマン」と恋に落ちていた。彼には妻子がいるがいまは別居し、同居する彼のお母さんと彼のために食材を買い、料理を作り、仲よく夕食を食べていた。ここが彼女にとって落ち着く場所だった。彼女のドラマを批評も彼はしてくれた。脚が不自由になった彼は、自分がいるせいで彼女に余計な仕事を増やしたり、経済的な負担をかけていることに耐えられず後日、自殺したのではと推理されるが、原因は藪の中だ。

心浮き立つことのあとには淵がくる(向田邦子)

とはいえ、ある時期、彼女には自宅の外にそういう場所と時間があった。サラリーマンで会社の机に座っている方が自宅にいるより落ち着くと言う人をずいぶん知っている。理由をつけてなかなか自宅へ帰ろうとしない既婚者も多かった。赤ちょうちんへ行く酒好きも多い。世の奥様方も、きょうも市内のホテルでケーキバイキングに長蛇の列、がやがやお喋り楽しそうである。家庭に戻るよりずっとこのまま・・を願ってるかもしれません。ただいま恋愛中の人、結婚願望の超強い人には夢のない話で申し訳ない。

「虚の空間」が家庭で「実の空間」は外!?

  1. 性格が飽きっぽい僕も、外好き人間だ。かつて子供がまだ小さい時から家に居なかった。カメラマンの友人と3人で週末からあちこち飛び回り、帰宅も気まずくなれば友人たちと一緒に月曜朝に帰ったものだ。平日はと言えば昼休みには会社の人たちとは別の友人と会っていた。そのころはお酒も少し呑んでいたので深夜にそっと帰ったりもした。今では会社が家で家が会社かと思うほどに逆転しているし、自分の好きなことができる場所に居たいと思えば、口うるさく干渉されない場所を求めてしまう。家族と決して不仲でもないつもりだが、妻に言わせれば「心ここにあらず」だ。

  2. 誰しもシークレットな部分を持っているに違いない。その形は様々だと思うが、それを、とやかく言うのはどうかと思う。人それぞれの基準が違うので、どれが正しいとか正しくない生き方だなどと決めつけられない。そう言う僕などは、一般論的に見れば正しくない生き方なのかもしれないが、自分ではそれほど間違っているとは思わないが。これまでにも、いろいろな人の生き方も見て来た。表の顔だけ見ても様々なのに、裏の顔まで見れば、さらにいろんな人生が見えてくる。噂好きの人たちが集まれば、他人の欠点・汚点・不幸を楽し気に話す。自分のことは棚に上げて、他人の裏話になるとエスカレートして誇張され、LINEなどでも誰彼かまわず拡散される。怖い世の中になった。知らないはずの人が自分のシークレット部分まで知っているとなればゾッとする。品行方正にしなければ・・・。

  3. 世の中はすべて逆だと考えれば、ほぼ間違いない。品行方正聖人君子の人は、実はとんでもない内面を隠していたり、またとんでもない奴と思っていた奴が、陰でとてもいいことをしていたり。国や政治家の決めごともにも反対しておけば、ほぼ正解の場合が多い。男性的な男が実は女装趣味やゲイ(差別?)だったり、オリンピックやワールドカップで果敢なプレイをしていた女子は、実は元は男子だったりする。見かけだけで判断するのは非常に危険だ。立派なデパートの社長宅に取材に行けば、くたびれ果てたソファーを使っていたり、想像と現実は正反対の場合が多い。家族思いの父親を演じている人も要注意かもしれない。最近、僕のウチの印象を近所に住む医者が「お宅は理想的な家族ですね」と?カミさんに言ったそうな。不思議なことに、側から見れば?そう見えるらしい。カミさんは一瞬?!意味不明でキョトンとしたらしいが。

  4. ギターを持った渡り鳥?。

    一頃、帰りの遅い僕に「早く帰って来てね!」と言っていた山の神も、最近ではあきらめたのか、言わなくなった。でも油断大敵。またいつか急に言い出す可能性もある。僕としては毎日、家族が寝静まってから帰るのが理想的で、ずっとそうありたいのだが。家にいる時間は一日の内の3分の1だが、大晦日や正月になれば、そうは行かない。家事を言いつけられるからだ。掃除だのすす払いだの、仏壇磨きだの普段の3倍もの家事がプログラミングされるから大変。AIロボットじゃあ無いんだから、そんなに一度に出来やしないし、飽きる仕事ばかり。どこか個室でギターの練習でもしていたい。自宅には地下室があるが、直ぐに見つかってしまう。そうだ、カラオケで部屋代払ってギターを持ち込んで練習すればいい。逃げ場を幾つも持っていたい年の瀬のこの頃だ。

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