デジタル放送が開始された頃に、テレビのdボタンの1枠が筆者の勤務した会社に割り当てられ、それを使って『新規の事業を考えよ』という課題が課された。5セクションから閑そうな5人が集合して月に1回会議が持たれた。しかし、開いても私以外は営業経験もなく、アイディアはさっぱり出ず(そもそも誰一人デジタルテレビ放送受信械を持っていない)、司会の私は業を煮やして次のような具体策を提示した。

(1)お悔やみ欄をテレビで見る(2)クラス会の案内をする(3)行方不明者探索ページをつくる(4)人事募集欄をつくるなどである。これにはスポンサーを付けないと儲からないので(1)には葬儀場や仏壇屋さん、線香やロウソクメーカー(2)は居酒屋やホテル。(3)は行方不明者探索なので北海道警察(4)人事募集はリクルートやアルバイト北海道で活字よりテレビで探すのを選ぶ人たちを対象に考えた。まだデジタルテレビが普及する前で、筆者はdボタンといっても『それは何?』の超デジタル初心者の頃である。会社にあった唯一のデジタル放送が見れるテレビをいたずらしていただけ。

違う発想の違う人間がそのときいたら、もう少し変わっていたかもしれない。地方のお祭り案内も考えた。観光協会からわずかなお金を集めるのである。手間はかかるがドライブ予定の人は見たくなるdボタンになる。スマホがまだ世に出ていない頃だからインパクトはあったが、スマホ普及で駆逐されたコンテンツになっただろう。しかし、テレビでdボタンでよく見られるのは天気予報や占いや昨日のスポーツ結果、普通のニュースである。

つくづく媒体は広告によって成立している、広告がないと経営が成り立たない。広告のない媒体は(いまはMLBで球場の看板広告を露出しているが)の税金と受信料で成り立つNHK。読者からの定期購読ブログ。昔発刊していた『噂の真相』くらいか。市町村の広報誌でさえ、広告を入れて支出を減らそうとする。道庁のエレベーターの壁に広告枠を作ったときは汚くておったまげた、役所で使う封筒に民間の企業広告の掲載案内スペースまで設けた。自治体が広告集めに必死になっていた。

お祭りも広告代理店に丸投げして(大通り夏のビアガーデンやオータムフェスタ)競わせて、儲けようとする。私にとってのdボタンは、札幌市にあっては大通り公園であったり、地下鉄の中釣り広告スペースが媒体なのである。こうなると札幌市が媒体社に見えてくるから不思議だ。旧札幌市民会館の椅子の背中は札幌信用金庫で統一されていた。現在も広報さっぽろにさっしん(現在北海道信用金庫)は博報堂経由で3千万くらい出しているはずである。dボタンの話からボタンをかけ間違えて、話題はあらぬ方向へ走っているが、『広告』を『代理する制度』っていったい何?ということだ。媒体(新聞・テレビ・SNS)が直接営業しない目的は何かといえば、たくさんの社員を抱えて人件費を持ちたくない、企業倒産があっても被害は代理店に行くようにして、媒体の防波堤として『代理店』を設ける。その代わりにマージンを与えて飼いならす。知恵やアイディアも代理店や企画会社のほうが勉強をしている。この仕組みは、しかし、広告に限らず、車や保険、電気屋、新聞販売店にもあって、現場は売るために苦闘しているのである。

dボタンで何も儲けられなかった筆者の愚痴ブログであった。dボタンを押すたびに思い出してしまう。

  1. インターネット二昔。

    インターネット時代が到来する以前にはWebをニューメディアとしか呼ばれていなかったのですが、誰もが一体どんなものなのかも分からずに、会社でも局長クラスの人を交えてニューメディア室なるものがありました。そこで何を議論したかは不明ですが、多分理解して居ない者同士の寄り集まりで長年時間だけ掛けて何も産み出されなかったように覚えています。ホームページすら無かった時代でしたから具体的な形の提案など出るわけも無く、ましてプログラマーでも無い無知の人たちの集まりですから社内でも浮いた部署でした。事務系でPCを使用し始めてしばらくして、制作でもマックを導入し始め、徐々にPCの時代が訪れて間もなくインターネットの答えが見えて来ました。が、PCの性能にも問題があり、その頃は文字情報のやり取りが主流で、チャットや掲示板で遠隔地の見知らぬ仲間と遊んだものです。やがてスペックもそこそこ高度なPCが比較的安価に入手できるようになって、ようやくネットも本格的な時代の幕開けとなりましたね。今、思えば今日まで随分遠い回り道をして来たように思います。意味も分からずニューメディアと言っていたあの頃から二十数年経ちました。あの頃は想像もしませんでしたが、今では幼い子供たちの方が詳しくなってしまいました。

  2. 公な機関の運営は税金が常識でしたが、経費もかさみ、増税でもしない限り税収は増えず、やりくりのビジネスを考えた挙句の広告募集なのでしょう。広告代理店あたりからの入れ知恵かも知れませんが、専門家の私たちから見れば、魅力の無い媒体ばかりでしかも高額ですね。そこには公共性を傘に着た、上から目線さえ感じ得ません。例えば道の配布物のタブロイド判の印刷物の裏に小さな帯状広告を入れて150万円とか?自動車税の通知用封筒に小さな広告を募集したりとお役所仕事の域を出て居ませんね。エレベーターの広告などは最悪です。電車の広告でさえ減少して不人気な媒体ですから、あの狭い空間にCMは息苦しささえ有れ、逆効果ですね。専門外の広告収入を考える前に、無駄な残業代などを減らして経費の見直しを考えられた方が良いのではと思いますね。

  3. 電車の中の広告媒体変化。

    昔のメディアミックスの手法は、既存媒体を数種使用しての展開でしたが、現在では必ずネットを絡ませる方法に変わってきました。と、言うよりネット媒体や技術を中心に、たの既存媒体を絡ませる逆パターンにさえなって居ますね。いずれにせよ、効果を予測してのメディア活用ですから、その時々で変化はあってもネットメディアやネット関連技術を避けては通れなくなりました。それだけ多くの人達が当たり前のようにPCやスマホで閲覧する時代だからです。通勤電車の中で新聞を広げている光景など、今では懐かしいですね。電車の中の広告よりも、乗客のスマホの方が効果的な時代になりましたね。

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