瀬戸新書

哲学者より「あなたがご自分の主張を本気で考えているとはどうしても思えない。自然淘汰は悪い方へ向かっているとか、種の進化プロセスはあるところまで達すると特質や可能性を後退させる方向に向かうとか。知性は人類の存続を約束させる要素です。」

教授は私の主張に、不快感を感じながらも、自然淘汰は種の存続というただひとつの目的のために働くということだけは納得した。唯一の「価値あること」は存続すること。環境条件が変われば、これまで存続に適した資質が別な資質に代わる(好ましくなる)ことだってある。

問題は、人類の知的能力を低下させる強い自然的・文化的選択は、どのように行われているのかである。私(ピーノ)が出発したのは、知性は衰えつつあり、そのうちになくなってしまうという直観からだ。前章の法則を繰り返すと、種の自然的・文化的選択においては、悪い性格のほうが役に立つなら、悪い性格のほうが優勢になる。

この非情な法則が生まれた原因は、人類を救うはずの知的能力が爆発したとき、人類はあわや絶滅(核兵器)というところまで追いつめられた。大脳の体積が絶え間なく増加したあげく、人類の存続が脅かされているまでになった。地球上にこれまで現れたもっとも知能の発達した生物は、およそ5万年前に消滅した。ネアンデルタール人である。

脳の灰白質の体積は大きかった。そのために消滅した。同時期に発生したクロマニヨン人は脳が小さくて生きのびた。ネアンデルタール人は、遊びや想像力、空想力を育んでいたし、死者を葬る儀式を最初に行ったのも彼らである。頭脳の体積は1700グラム。現代人より小さな体に大きな脳を乗せていた。250万年前のアウストラロピテクス・アフリカヌスは脳の重さは500グラムだ。ネアンデルタール人の大脳の大きさは、出産のときに通る産道を通れず、ある産科医は90%の死産だと推定している。知能は出産時に抹消される。

頭の小さな冴えない者たち(クロマニヨン人)たちは、頭が小さいために生きのびた。5万年前から3万年前に起きた悲劇の傷跡はいまだに残っている。それは知能ある者への恐怖、人類を危うくする恐れのある天分のある者への憎しみだ。「生物の進化は破局の跡だけを記憶に残す」と、ローレンツの後継者は書いた。それ以来、私(ピーノ)は、バカは生きのび、利口は滅びるという第一法則を表現した。

このバリエーションが死ぬよりバカでいるほうがいい。バカは何も理解できなくても、とにかく未来を背負う心意気は持っている。バカへの評価は見直さなければならない。

(この章の私の感想・・ネアンデルタール人が利口の代表なのかな?最近の事件は野蛮化している人間の姿をありありと映しているが、しかし、大昔も映像がないだけに、記録がないだけで同じような事件があったと思う。著者ピーノは現代への怒り感情が強い余り、ネアンデルタールへ飛んでいったのかもしれないが、彼も自らの存在をはじめ人類の存続を願っているわけだから、そこへエネルギーを注いでいいと思いました)

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