ペストの歴史(主にユダヤ人迫害とカトリック)過酷な差別、殺人。
ペストの歴史(第3回目)
下記の記事は、宮崎揚弘さんの『ペストの歴史』(山川出版)について過去に書いたブログでイングランドの部分があるので、再録した。ここではユダヤ人のことが取り上げられている。カトリック教会が11世紀以降、ユダヤ人への禁止事項を作ったとある。しかし、デフォーの『ペスト』(1664年)にはいまのところ、ユダヤ人については1行たりとも書かれていない。イングランドは非カトリック(英国国教会)であって影響の圏外であったのかもしれない。
1348年イングランドにペストは上陸した。ロンドンは人口10万人。しかし、市街地の飲料水は不潔、風通し悪い街並み、不衛生な環境の町であった。テムズ川も汚物で詰まり、下水として機能をしていなかった。黒死病は全イングランド征服に500日。侵攻速度は一日1キロであった。
当然、スコットランドへも伝染していった。1350年であった。しかし、ペスト菌の耐性温度がマイナス2度(1回目に書いている)なので寒いスコットランドは大流行には至らなかった。
アイルランドのダブリンは8月というペスト菌が繁殖しやすい気温での流行で14000人死亡。ダブリン大司教も命を落とした(1348年8月)。
大陸のウィーンはどうだろうか。人口5万。通りも狭く木造の住宅、舗装もされていない。
「伝染性の疫病はやがてウィーンのその市域全体に及び、結果として無数の人々が死亡し、ほとんど三分の一の住民だけが生き残った。遺体の発する悪臭と嫌悪感から、それらは教会附属施設の墓地に埋葬を許可されず、死亡するや市外にある共同埋葬地に運搬しなければならなかった。そこでは短時間で五つの大きな深い穴が縁まで遺体でいっぱいにされた。疫病の流行は聖霊降臨祭から大天使ミカエル祭まで続いた。・・・・修道士や修道女も容赦しなかった。なぜなら53名がそのとき死亡したからだ」(ノイベルク修道院年代記」同書59p
ペスト菌はドイツ、ノルウエー、スウエーデンへ。フィンランドに伝染したがグリーンランドは免れた、低温と人口がまばらだかったから蔓延しなかった。そしてロシア全土へ蔓延してから突然消滅する。しかし、それはペスト菌がどこかに常在しつつ表面化しなかっただけで18世紀、19世紀まで流行の波が押し寄せる。
実はこの本の「ペストの歴史」には、ユダヤ人問題が出てくる。著者が書きたかった大きなテーマが読んでいてわかってきた。それは第3章「中世人の反応」。「黒死病の流行でみえるもっとも顕著な反応は不安と恐怖であった。それから逃れるためにおこなったのが憂さ晴らし、逃亡、他者への迫害、自虐的な内省であろう」。自虐的な内省は有名な鞭打ち苦行集団で、街から街へ集団で練り歩き、上半身裸になって鞭で叩きながら、災いを止めるよう神へ祈る言葉を唱え放浪する。北フランスとフランドルで多いときで80万人の参加があったというから驚くべき数字だ。
しかし、同時に人々は黒死病の不安と恐怖から、ユダヤ人への迫害に向かった。井戸に毒を撒いたという噂を流しては迫害した。ユダヤ人は5世紀にはヨーロッパに住んでいて隣人と問題を起こすことがなかったが、カトリック教会が11世紀以降、ユダヤ人への禁止事項を決めたのである。(1)公職への就業禁止(2)カトリック教徒との共住禁止(ユダヤ人だけで住む街ができる、ゲットーだ)(3)村落への居住禁止(土地を持てない、農業ができない)(4)土地の取得禁止(5)ギルドの加入禁止(モノづくりを生業にできない)(6)ユダヤ人を示す黄色のユダヤ人章の携帯義務。ユダヤ人が生き延びれる仕事は行商、古着商、金融業しかないようにすでに11世紀にカトリックによって決められてしまっている。イエスを殺したのはユダヤ人(イエス自身はユダヤ人でユダヤ教徒である)であるからという理由で迫害もされた。
数少ない王様がユダヤ人迫害を止めるようお触れを出しても止まらない。アラゴン国王や教皇クレメンス6世など。1349年、有名なストラスブールにおけるユダヤ人虐殺事件が起きる。1800人余のユダヤ人を捕まえて、キリスト教への改宗を迫り、応じなかった900名を穴に放り込むホロコーストが起きた。しかし、そういう中でもオーストリア大公アルブレヒト2世とポーランド国王は迫害を最小限に食い止めて、ユダヤ人はその保護を求めて移動した。
注:現代のネット社会で、あっという間に、真偽が確かめられないまま、書き手の言葉や判断が伝わっていく怖い社会だ。正しさを裏付ける議論であればいいけれど、現代人が好むのは『単純』『結果』『速さ』。『情報を消費しているだけだから、私には責任はない』であるから、いつのまにかそれが性になって、たえずネットでニュースを追いかける自分になってしまい、自分で考える習慣を失っていく気がする。生産を忘れた落ち着きのない消費者だけの人間に。
坊主の孫。
帝国主義、軍国主義も、宗教戦争も、目的を達成するために用いるのが洗脳ですね。そこに流行性の感染症などが絡めば、それすら利用されて一層エスカレートするのでしょう。病原体を研究し追及して原因を探り、根絶に向かわせる事への知恵をも忘れて単なる被害者意識で哀れ悲しみ、うろたえるだけでなく、誰かを(誰しも被害者なのに)加害者に仕立て上げる理由を探して避難攻撃をするのは現代も同じですね。国内でも入院患者までが医療関係者に対して「うつすな!」と罵声を浴びせるまでになって居るそうです。確かに未知のウイルス感染症は恐怖には違いないのですが、置かれている環境は誰しも同じですから、お互いを理解しあって、出来るだけ早い収束への努力をしたいものですね。マスクが不足とは言うものの、ここに来て皆さんマスク着用や手洗いや、うがいや、消毒が身について来たようですね。体力や抵抗力の差はあるものの、感染も一時的なものですから、余程の持病が無い限りは、必ず回復すると思えば、過敏過ぎる不安も消えるのではないでしょうか。神仏に代わる「現代医学」を信じてみるのもいいでしょう。
seto
主義って、必ず敵を必要とします。敵がなくなればイズムは消えます。ウィルス検査ができる病院があまりにも少なくて、また検査機器が少なくて現場の病院が大混乱しているわけです。指定病院の横にレンタルでもいいので、仮テントやレンタルで事務所を作り、検査オンリースペースをつくるといいですが、札幌では検体を現在1日12体しかできません。民間で検査できる会社はゼロです。この驚くべき数字が実は道庁や政府、医師会は把握していて、表に出てこないわけで機器が入るまで時間稼ぎをしています。一度かかれば免疫ができるので、再度罹患する率は圧倒的に減ります。陽性・陰性の検査を希望しても実態は、もう少し待ってくださいというのが実情だと思います。加えて呼吸器内科医師が絶対的に不足してます。感染症の医師がいても呼吸器(レントゲンによる肺の診断)をできない。