Posted by seto

アイヌ語で解ける地名が北海道から沖縄まである。もちろんサハリン方面もそうだ。国語学者金田一京助さんは「エミシ=アイヌ」説を説いていた、梅原猛さんもそうだ。おさらいをすると日本列島は朝鮮や中国から大量の移民が来る前は、縄文人としてエミシたちが牛耳っていた。エミシは、はるか沖縄までいたということでもある。彼らの話すアイヌ語でネーミングされた地名があれば、北海道内の地名がほとんどアイヌ語で分析できるように、アイヌが暮らしていたということになる。札・別・沢・苫・幌はじめ数多くある。

以下、この本で取り上げられている地名と都道府県を列挙します。詳しい意味づけはこの本に書かれていますから興味のある方はお読みください。地名を読むだけで楽しくなります。


【青森県】津軽(つがる)、白神(しらかみ)、今別川(いまべつかわ)、竜飛岬(たっぴみさき)、野辺地(のへじ)、鮫(さめ)、野牛(のうし)、蟹田(かにた)、木造(きづくり)、苫米地(とまべち)、十和田湖(とわだこ)ほか多数。

【秋田県】秋田(あきた)、男鹿(おが)、寒風山(かんぷうざん)、三内(さんない)、能代(のしろ)、乳牛(ちうし)、鹿角(かづの)、稲庭(いなにわ)、トコロ温泉、笑内(おかしない)、天内(あまない)ほか多数。

【岩手県】上堂(かみどう)、岩手山(いわてさん)、姫神山(ひめかみさん)、紫波(しわ)、碇(いかり)、気仙郡(けせんぐん)、平泉(ひらいずみ)、魚集(よまべつ)、オマルペ、ハイペ、コイコロペ、ソマナイ、久春内 (くしゅんない)、平井賀(ひらいが)、志塚里(しつかり)、譜代(ふだい)、千歳(せんざい)、福伏(ふっぷし)、理訓許段神(りくんこたんのかみ)、釜石(かまいし)、大槌(おおつち)ほか多数。

【宮城県】仙台(せんだい)、利府(りふ)、刈田郡(かったぐん)、伊治(いじ)此治(これはる)上治(かみはる)栗原(くりはら)、亘理郡(わたりぐん)、白石(しろいし)、日辺(にっぺ)、愛子(あやし)、石巻(いしのまき)、鮫浦(さめのうら)、小友(おとも)、耳取(みみとり)、歌津(うたつ)、茶臼山(ちゃうすやま)、女川(おながわ)ほか多数。

【山形県】鳥海山(ちょうかいさん)、庄内(しょうない)、出羽(いでわ・でわ)

【福島県】宇田川(うだがわ),安達太良山(あだたちらやま)

【千葉】銚子(ちょうし)、犬吠岬(いぬぼうざき)、木更津(きさらづ)、我孫子(あびこ)、布施(ふさ)、

【群馬県】勢多郡(せたぐん)

【茨城県】印旛沼(いんばぬま)、久慈川(くじがわ)

【埼玉県】入間(いるま)、秩父(ちちぶ)、寄居(よりい)、風布(ふうぷ)

【東京都】隅田川(すみだがわ)、田無(たなし)、高尾山(たかおさん)、武蔵(むさし)、多摩川(たまがわ)

【神奈川県】鍋割山(なべわりやま)、伊豆半島(いずはんとう)

【静岡県】伊豆半島(いずはんとう)、佐久間(さくま)

【長野県】諏訪(すわ)、苗場山(なえば)

【新潟県】五十嵐川(いがらしがわ)、

【石川県】能登(のと)

【富山県】黒部(くろべ)、称名滝(しょうみょうだき)、庄川(しようかわ)

【滋賀県】比良(ひら)

【奈良県】三輪山(みわやま)、斑鳩(いかるが)、巻向(まきむく),吉野(よしの)

【島根県】出雲(いずも)、稲佐(いなさ)、宍道湖(しんじこ)、恵雲(えとも)、犬掘鼻(いぬぼりばな)、佐太(さだ)、

【高知県】仁淀川(によどがわ)、宇佐(うさ)、四万十川(しまんとがわ)、足摺岬(あしずりみさき)

【福岡県】筑紫(ちくし)、博多湾(はかたわん)、

【宮崎県】庄内(しょうない)

【熊本県】阿蘇山(あそさん)

【大分県】由布(ゆふ)、九重山(くじゅうさん)

【鹿児島県】志布志(しぶし)、指宿(いぶすき)、種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)、奄美大島(あまみおおしま)、、与論島(よろんじま)

【沖縄県】那覇(なは・なわ)、与那原(よなばる)、桃原(とうばる)、平良(ひらら)、金武町(きんちょう)、比嘉(ひが)、渡嘉敷(とかしき)、具志堅(ぐしけん)、伊江島(いえじま)、辺野古崎(へのこざき)、嘉手納(かでな)、宜野座村(ぎのざそん)、伊良部島(いらぶじま)、祖納(そない)、ヒナイ川(ひないがわ)、ピナイサーラの滝、カンビレーの滝、伊野田(いのだ)、摩文仁(まぶに)ほか多数。


まだまだ、研究途上で漏らしている地名の府県もありそうだし、全体を俯瞰すると、アイヌの信仰である、山・川・海の近くに住んでいたことがわかる。面白いのは鹿児島から沖縄へ渡って行ったのではないかと推理させる地名の多さだ。

著者の菅原進さんは1925年、陸前高田生まれ。現在、93歳。元教員で趣味の「アイヌ語古地名の研究」の成果を昨年10月21日出版した。有限会社ツーワンライフ。〒028-3621 岩手県紫波郡矢巾町広宮沢10-513-19。1600円。全244P。


ダイナミックなアイヌ学なら下記の本を。筆者のブログカテゴリーで【アイヌ】も併読していただければ幸いです。

  1. 北海道の地名には難しいところが多く、なかなか読めませんでした。しかし一旦覚えると忘れない特徴もありますから、今では殆ど読むことができます。しかし、イザッ書けと言われてみれば困る事もしばしば。これも文字を持たなかったアイヌ民族の言葉の特徴なのでしょうね。それが証拠に地名を聞いて直ぐにどの辺の地名か判りますが、その反面、文字に直せばどうだったか?悩みます。これも、最初からつけられていた地名に似せた日本の文字に当てはめたからでしょうね。音では表現できても難しく、漢字で当て字にしたのでしょうが、無理がある地名も多いわけですよね。

    • 音声で文字(概念言語)ではなく、ユーカラ・民族の物語を古老から聞いて、それをまた口移しで次の世代へという順番でアイヌに限らず、北欧のサガもギリシャのイリアスも文字以前は全部、声と音でした。日本全国の地名の意味をアイヌ語的に分析すると、彼らが驚くほど広い世界を移動していたことがわかるというのがこの本の主意でした。パソコンが入って、普通の漢字も書けなくなりました。紙の上で「変換!」と叫んでも変化しません。

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