私たちは何かを探し求めるのを止められない

そして、すべての探求の行き着く先は

始まりの場所であり

そこではじめて私たちはその場所を知る。 T・Sエリオット 四つの四重奏 

*T・Sエリオット(英国の詩人・評論家)1889年~1965年

「文明が不幸をもたらす」(クリストファー・ライアン)で最終章に置かれた4行である。有史以前の世界は、ホッブスで有名な「万人は万人に対してオオカミである」という、非文明的な野蛮な無秩序な欲望がほとばしる。飢えと狩りで殺戮や戦いばかりしているとこれまで思想的に教科書的に政治学的にも常識とされてきた。有名な「蠅の王」(ウィリアム・ゴールディング)がアメリカの小学校では読書の必須科目になっていると書かれてあった。文明のカヤの外(無人島)に流れ着いた子供たちがどうやって生きていくかを残酷に描いた本で、大人の目(法律や神)がなければ子供(人間)はお互い殺しあいまでするという、残酷になることを人類学的な証拠のように書かれている。1977年に実際に起こった数名の子供たちが孤島に流された事件を見ると、お互いが協力して見張りも交代制にして、航行する船に助けられた。仲たがいや殺し合いは起きなかった。むしろ、子供を育てる側に、残忍さを子どもに植え付けてしまってはいないか?という問いかけが、この本にはある。育てる側も過去に育てられたわけで、時間は過去へと遡る。育てた親のまた親からと辿るとはるかなDNAの旅が始まるが、狩猟採集時代の人類の化石を見ると殴られたり、刃物でヤラレタ人骨が圧倒的に少ない。当時はせいぜい10人から20人で動いていた(数家族)から、親密さや困ったときの協力は生死を分かつ。その知恵が9万年は続いていた。ところが1万年前に始まった農業がホモサピエンスの古来の知恵(利他の知恵)を失わせた。格差と富の偏重が始まりそれを守るために軍隊と役人が出てきた。考古学者は困ってしまった。9万年も続いていた時代は幸福だったかもしれない。必要が発明の母なら「進歩」などする必要がなかったのである。クリストファー・ライアンは「現代社会では、現在がより良い未来のための舞台づくりの時期と考えるのがふつうで、どこを向いても人類の長い先史時代に関する誤った情報がある。祖先の暮らしが孤独でも、貧しいものでも、悲惨でも、残酷でも、短くもなかったと認めるのが難しいのだ。私たちは、祖先がそこで幸せだったかもしれないとはまず思わない。しかし、証拠はそうだったことを指し示している」(同著262p)紀元前6世紀あたりから東西の思想家や宗教家が現れるが、たかだか2600年余にしか過ぎない。確かに農業の改良と人口の増加は比例するし、餓死が出て難民増加と移動がある。物があればあるほど欲望は肥大化する。欲望があるから物が作られるわけではない。「文明はこれまでも崩壊してきたーー事実、すべての文明が崩壊した。しかし、今回(地球温暖化、新種の病気や手に負えないウィルス、隕石の衝突、太陽の爆発などが起きたら)今回ほどひどい崩壊はこれまでにない。これまでの崩壊は地域的だったが、今回ばかりは地球的規模だ。逃げることも隠れることもできない」(この本は2019年に書かれている)

  1. 歴史は繰り返すとか、言いますが今の時代になって、あの悲惨な戦争を繰り返す事になるとは思ってもいませんでした。その上ウイルスの感染拡大も重なり次の新しい時代の到来も先行きが見通せなくなっています。それよりもむしろ時代が逆行し始めた感もあります。ここまで長い間に築き上げらた国際社会も無力化して来ました。地球上が騒がしくなって来ましたが、自ら住む場所を破壊する時代は未だ続くのでしょうか。

    • 歴史が繰り返すのではなく、生きてる人間が同じことをするというのが正解かもしれません。その手段が変わっただけで。国家や国境は中国の三国時代やギリシャのポリス間を行き来して取り合う領土と奴隷、ロシアもスターリンやチェチエンやジョージア、アムール川、フィンランド侵略、ポーランド侵略、アフガン侵略をしてました。朝鮮半島にもどんどん南下して17度線で止まったわけですね。トルコと何度も何度も戦争をしています。クリミア戦争で、トルコから奪った土地ですね。アメリカもメキシコから泥棒したのがカリフォルニア、イギリスは世界中を植民地化してます。「始まりの場所」に戻ってる気がします。

  2. コロナ禍で都会暮らしに意味が無くなり出身地の田舎に戻ったり、地方都市や山村を移住する若者たちが増えています。人間が最後に帰る場所は便利過ぎる都会ではなく自然の中に有るのでしょうね。

    • 都会で飢えが進行すると、農村へ逃げますよ。そこでも仕事ができるわけですから。ニセコへ本社を移転した会社があります。紅茶の会社で首都圏地震を恐れてです。ある程度,歳をとらないとわかりません。便利快適快楽美味美男美女でルンルンというのが都会で、お金あれば楽しいでしょうが、災害と飢えが始まると地獄に変わります。高い建物は崩れ、埋められて死にます。阿鼻叫喚が見えるようです。それは「いまではなく」「もっと先だろう」と油断しますが、きょう起きてもおかしくないと覚悟しないとね。相手は自然ですから。何があるかわかりません。自然を忘れた都会の人はコンクリートとアスファルトの下になります。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です