白い病(カレル・チャペック)50歳前後に感染
1937年刊行。(ロボット)という言葉を世に出したSF作家、チェコのカレル・チャペックの戯曲「白い病」。物語は働き盛りの45歳から50歳にかけて白い斑点が出て死に至る。原因は接触感染で、パンデミック。症状は白い斑点が皮膚にできて大理石のように固くなる。以降、肉の塊となって死ぬ。しかし、町医師(ガレーン博士)が貧しい人たちを診療する中で、特効薬を発見する。その報告に国立病院の枢密顧問官へ報告に行くが、ガレーン博士は「戦争を止める」という強い意志と行動をしないと薬を与えないし、渡さないと言明(作品が書かれた1937年といえばナチスドイツが成立(1933年)して4年が経過する)。枢密顧問官と対立する。病院に運び込まれた患者を2部屋に分けて、ガレーン博士開発の薬を使った患者は続々回復していく。枢密顧問官から、医師の役割は病を治すこと、国民の健康を回復させること、苦痛を減らすことだが、ガレーン博士は、それもそうだが、現在の一発触発の戦争状態を何とか恒久平和に、この薬を利用できないか考える。富と権力を持った人間は、社会への影響力が大きいので軍需産業の総帥や元帥にそれを求めるが、彼らにとっては受け入れられないことであった。
ところが、軍需産業の総帥(クリューク男爵)は、白い病にり患し、ガレーン博士のところへ乞食の変装で行くが見破らて、軍需工場を停止するなら薬を与えようと博士。しかし、武器増産は元帥(国)され要請され戦車・爆弾・殺傷ガスの生産を止めるわけにはいかず、悶々として国の最高権力者の元帥と相談するがらちがあかない。長年の親友の二人は、禁断の握手をしてしまい元帥も白い病にかかってしまうという物語だ。
「白い病」パンデミックではあるのだけれども、その反面、このおかげで得をする人や若い人の座れる場所が50歳前後の人が亡くなることで雇用が生まれるという父親と娘の会話が衝撃的であったので、それを最後に引用する。下記の会話を私は居酒屋やカフェで何度も聞いたことがあるからである。(若干分 省略)同著38p39p
父・・職場でも一人が病気になったが、ちょうど45だった。50前後の人間だけが病気になるのはどう考えても公平じゃない。いったい、どうして、なぜなんだーー
娘・・なぜって?父さん、若い世代に場所を譲るためでしょう。そうならなければ行き場がないんだから。
父・・父さんや母さんが、お前たちを食わせてやっているのも、汗水流して働いているのもお前たちのためじゃなくて、むしろ、お前たちの邪魔をしているんだと?行き場がないって?病気になって、若い連中に場所を譲るだあ?
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娘・・一般論を話しただけでしょう。だって今の若者にはチャンスがないの、この世の中に十分な場所がないの。だから、私たち若者がどうにか暮らして、家族を持てるようになるには、何かが起きないとだめなの!
父・・私たちはいちばん良い年齢で亡くなるってわけだな?
*父は軍事工場で、出世競争のライバル4人が「白い病」で亡くなり、経理部長に昇進。白い病のおかげで給与大幅アップであった。
坊主の孫。
「何かが起きないと世の中は変わらない」とは、辛い話ですが事実でしょうね。私たちの時代には未だ何かをやれば社会参加できる可能性が残されていましたから、がむしゃらに働くのも良し、紆余曲折しながら今後の生き方を模索するのも良かったのですが、現代はまるで固められたアスファルト道路のように社会構造が雨水さえ吸わなくなって、ひとたび豪雨に見舞われれば大洪水となって逃げ場さえ奪われてしまっています。若者たちの心の余裕はなく、どの道を選んでも不安はついて回る社会ですね。大企業に就職しても早期退職者が多いのも我々から見れば不思議な現象ですが、かつての終身雇用なども過去の遺物で、実力の無い者や企業体質によっては内部告発などで辞めざるを得ない者も多いのでしょう。今回の突然のコロナ禍は社会構造を大きく変える大事件ですね。このお蔭で我々年配者は大きな痛手を負いました。その中で、果たして若者たちは新しい何かを得たのでしょうか。
seto
まったく坊主の孫さんが書かれたように世の中は推移してます。コンクリートと書かれましたが、心もコンクリートになって水(情緒)を吸わなくなって、感情が枯渇し始めているかもしれません。反応だけは早い。来るメール件数は多いが、即座に反応して何になるのでしょう。無感情・無表情の断片的な生き方を繰り返すうちに、イキイキさを失うのは目に見えています。失恋でもいいいからどんどん傷ついて生きて欲しいですね。短くて、考えようによっては長い人生、したいときにしないとあっという間におわりますね。図書館ボランティアから帰ってきました。リサイクル本から切手シート(国際民族博物館完成記念)がそのまま出てきました。以前、1万円札も出てきて、図書館へ届けたそうです。ラブレターも出てきたそうです。書き損じですね。本を捨てるときは気をつけましょう。