バチカン裁判所で弁護士として働く韓国人ハン・ドンイルさんの書いた「教養としてのラテン語の授業」(ダイヤモンド社 岡崎暢子訳)の第Ⅳに書かれていた(57p)この本は韓国の大学でラテン語を教えることになったハンさんが学生たちにラテン語を学ぶことの面白さ、ラテン語の深さと難しさ、ラテン語をかじってるだけで「かっこういい」という飾りでもいい、とにかく生き方を含めて古代ローマの源流を知ろう・感じろうと書いた本で、授業のテーマに沿って、イタリア語、ドイツ語、フランス語、英語の原型としてのラテン語を語ってくれる名著だ。私の書棚にも45年前に買った「新ラテン文法」がある。10ページ読んだだけ。ギブアップであった。ハン・ドンイルさんの授業なら学生は食らいついてくるはずだ。読みやすい本で深い。

表題の「今は勉強したことをほかの人たちに分け与える時代だ」は,以下本文は・・・・

「今の若者たちが不幸な点は、勉強をたくさん重ねてきたはずの先人たちの哲学が貧困なことです。自らが勉強して得た知識を分かち合うことはおろか、社会のために生かし切れていない人があまりにも多い。せっかく学んだ知識を、私腹を肥やすことのみに使っている人も珍しくありません。彼らは自分とその家族以外なら、誰が搾取されようが貧しかろうがそんな社会構造にも無関心です。せっかく膨大な時間と情熱を注いで勉強した優秀な頭脳があっても、温かい心がなければ学んだ知識は武器ではなく凶器にさえなりかねません。」(57P)

暗記力と要領の良さで偏差値を上げて、難関大学へ入学、上級公務員試験や司法試験も通って、そこそこの地位と名声を獲得しながら「せっかく学んだ知識を、私腹を肥やすため」に使う。28章にわたって(ローマ数字では28をXXVIII)食べ物の話からローマの奴隷の話やピタゴラスがインド思想に大きな影響を受けている話、ということはヨーロッパ思想は東から西へぐるりと共通の基盤にあるということでもある。インドから東に廻るとヒンズー教や仏教、西へ行くとキリスト教やイスラムか?どうりで、言語的にインドヨーロッパ語族と括られていたわけだ。納得。

断片的だが、この本の表題を書いてみる

・すべての生物は性交後ゆううつになる Post coitum omne animal triste est  ポスト・コイトゥム・オムネ・アニマル・トリステ・エスト

・時間は最も優れた裁判官である Tempus est  optimus index  テンプス・エスト・オプチムス・インデックス

・物事は、知っているものしか見えない Tantum videmus quantum scimus

・私は欲望する。ゆえに存在する Desidero ergo sum  デジデロ・エルゴ・スム

・今日を楽しみなさい Carpe diem カルペ デイーエム

この本の翻訳と監修がまた素晴らしいのでぜひ立ち読みを。1800円と安いが。格言の宝庫としてのラテン語を味わえる。

 

 

  1. せっかく苦労して習得した学問や技術を、おいそれと簡単に他人に手ほどきする人は居ないでしょうね。長い時間と根気とお金さえかかっていますからタダで教えるなどもってのほか。と言うのが本音では無いでしょうか。それも何の努力もしない他人には特に問答無用でしょう。ですから伝授される方もそれなりの感謝の気持ちとかヤル気とかを持ち合わせていなければいけませんね。いくら教えても無駄と感じた時点で教える側もあきらめるでしょうから、余程気を引き締めて教えを請わなければいけませんね。
    それに、教える側も教え上手であれば、教えられる側も抵抗なく身につく事でしょう。つまり教え上手と教えられ上手同士が理想でしょうね。

    • ハン・ドンイルさんは、たぶん政治家や企業家を念頭に若い人たちへのお手本として生きる生き方をしていただきたいと書いていると思いますね。職人の世界ならば、師匠や弟子の世界は、坊主の孫さんが書かれていたことだと思いますね。サブタイトルが「真の知性人とは」と銘打たれていたのでね。書道家の篠田桃紅さんが100歳を越えて書いたエセイを借りてきました。何かヒントになる生き方や考え方がないか、3冊あるので読んでブログに近々書く予定です。映画監督篠田正浩さんのお姉さん?なのか?自由人・一人生きる達人でしょうね。

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