「羽田に降りて、東京は北国」(梅棹忠夫)

ヨーロッパは北国ばかり

5月20日に、梅棹忠夫さんの「文明の生態史観」について、書いたが、その中でインドのカルカッタから11月、飛行機で東京について漏らしたのが『東京は北国だ』である。東北や北海道が北国であるというのならわかるが、東北の延長として東京を捉える見方もないこともない。しかし、日本の地図を西側にずらしていくと、ヨーロッパ大陸のずっと南側にきてポルトガルや北アフリカ近くに重なる。逆にいかにアルプスの向こうが冷たい北国なのかがわかるというものでもある。札幌の緯度でさえイタリアローマ市に近いのだから、北緯43度でこんなに積雪が多いのが不思議なくらいだ。

近代、精神分析や心理学が興隆して、いるが学問はもっと気象や環境、湿度や河川、住んでいる住宅(研究室)などにも大きく左右される。たとえばメンデルの法則は、修道院でメンデルがコツコツエンドウマメの交配記録を取って発見して現代遺伝学の基礎を見つけた。修道院だから資料が戦乱で紛失しなかったともいえる。メンデルではなく別な人間が第一発見者の可能性もあるだろうが、これを言ったらキリがない。しかし、地理(場所)という地味な学問、気象という学問は、人間の心の中に入り過ぎた心理学や精神分析学を相対化するにはいい学問かもしれない。

有名な和辻哲郎の『風土』という古典があって、砂漠の思想から一神教が生まれる背景。気象の過酷さ、神を信じないと生きられない風土が描写されてる。モンスーンから仏教誕生。これまで、政治なら政治、経済なら経済、芸能なら芸能、スポーツならスポーツから、多様な関わる分野を綜合的に俯瞰してみる見方から新しい思想を生み出すことが求められているかもしれない。

イスラエルの歴史家・ユヴァル・ノア・ハラリス著『サピエンス全史』(柴田裕之訳)が世界中で読まれている背景には、これまで単独で書かれたきた人類史を遺伝学・考古学・言語・動物行動学・民俗学・歴史学・戦史・農業・科学革命・資本主義・産業革命・帝国主義・文明論・幸福学・平和論・差別の起源など普通ならそのテーマだけで生涯を終えるボリュームなのに1冊の本に纏め上げ、わかりやすく人類という動物について『全史』を書いたことによる。

『羽田に降りて東京は北国』という言葉も、暑い所から来た人にはよくわかることながら、私たちは日本のテレビで気象情報を同じ角度から見ているから『東京は北国』という言辞に違和感を覚えるのだが、別な視点から見たらそれも真実。人を判断するときも『あの人は社会不適応者だ』は『あの人は天才で何か新しいことを生み出すかもしれない』とも言える。マイナスの評価がプラスだったり、プラスの評価がマイナスの評価と表裏一体のことは山ほど身近にある。金払いがいい男が横領をしていたり、単なる税金泥棒であったり、経費で領収書回しをしていたりする一方、ケチな男が実は両親から育児放棄された子どもたちの施設に匿名で寄付をしていることも考えられる。複眼で世の中や人をみたいものである。

2 thoughts on “「羽田に降りて、東京は北国」(梅棹忠夫)

  • 2023年8月15日 at 10:23 AM
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    その人が、何を基準にして物事を判断したり、発言したりするかと言えば、これまでの環境が多いに関係しているのでしょうね。例えば、私のように幼少期から思春期を田舎で暮らした者が高校の夏休みに一人で東京に遊びに行った時は、余りにも田舎との違いにカルチャーショックでしたし、また大阪に住んでいた時に知り合った九州男児を真冬の北陸の田舎に連れて行った時には大雪に大はしゃぎした様に、小さな日本列島の中でさえ気候風土や生活環境の違いがある訳ですから、世界全体で考えれば見方も違って当然かも知れませんね。あの厳しい寒さのイメージだけの南極にも北極にも気温差は有るにせよ真夏は有る訳ですからね。南極に行った人から聞いた話では南極の真夏は札幌の温かい冬の日と同じくらいでプラス2℃くらいだとか。またペンギンは可愛いとイメージしていたけれど、実際には大量の糞と大声の騒音とでうるさくて仕方が無かったとも。白鳥も詳しく知らなかった頃は美しい鳥のイメージでしたが、同じく群れると相当な騒音ですからね。それに外来雑草種子や病害虫や有害バクテリアなども運んで来ますから農家の天敵ですね。イメージと現実には大きなギャップもありますね。良いと思って居た事がある人や環境にとっては最悪のケースも有り得る訳ですね。全体を見通して理解したうえで物事を判断すべきなのでしょうね。

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    • 2023年8月15日 at 1:23 PM
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      羽田に降りてここは北国って、気に入った科白で梅棹さんの史観に共鳴したわけです。東西の横軸で文明を語る人ですからね。一番の指標は気候と緯度ですね。19歳のころ2月に京都へ下宿を探しに行きました。錦市場の横に部屋を月6000円で決めましたが、6畳部屋に入ると寒い寒い。窓は1枚でしたね。結果として入学はせず、下宿キャンセルしましたが。北海道より冬は寒い土地だと実感しました。梅雨も体験はしていません。梅雨っぽい北海道の天気はありますが、気候的にはアメリカやヨーロッパの天気に似ていると思います。お雇い外国人としてアメリカからきた人は母国に帰ってきた感じがすると言ってましたね。梅棹忠夫さんは猛烈に暑い国から平行移動をして東京に着いての感想だと思います。最近は地軸がずれてきたのか、海水温度が高くなっているのか、気象変動が多いですね。南極のペンギンのうるささもTVでは伝わりません。渡り鳥が外来種の雑草を畑に持ってきて、作物へ多大な被害をもたらすと農家のご主人が言ってました。過ごしやすい気温になってきてほっとしています。

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