ミミズを助ける1年生とダーウィン。
雨上がりの朝、ランドセルに黄色のカバーを付けた新一年生が我が家の自宅前の道端で立ち止まっている。同級生が『どうしたの』『ミミズがいて、ここにいると踏んづけられるから、移しているの』と塀のない我が家の庭へ移動させて、『これでだいじょうぶ』と学校へ向かった。
福岡伸一さんの本のあちこちに、進化論を書いたC・ダーウィンの最後の著書が『ミミズの研究』であったと書いてある。私もミミズは好きで(巨大なミミズはさすがに気味悪い)、庭を掘ると彼らが出てくる。土を耕してくれて感謝している。口から土を入れて、栄養素を吸収し、お尻から出す。福岡伸一さんは、ミミズに脳はあるかどうか調べた。方法は餌を運ぶミミズに紙切れの先を▼にして穴の前に置き、初めは▲で穴へ入れるも、頭がでかくて入らず、2回目に▼にして無事に穴へ運んだ。これを見て、ミミズに解剖学的な脳はないが、考える仕組みがあると考えた。
それを脳といえば脳かもしれない。消化器官の管だけで生きているミミズ、目も見えず、じっと穴の中で過ごし、どういうわけか雨上がりにアスファルトに出てきて、自転車に踏まれ、人の足に踏まれて独特の匂いを周りに発している。生物の発生学からいくと、初めは消化器官でここから大脳が分かれて行くことを考えると、第一の脳は実は消化器官なのだ。ミミズの連想でいくと考えるところは、消化器官の周りに張り巡らされた神経ネットワークだとすると、人間も考えるのはまず消化器官かもしれないと推理できる。そういえば、悩みは正直に胃腸を壊すところから始まる覚えはないだろうか。ミミズに背骨をつけて立たせると人間になるような錯覚を覚えた。顔と手足を加えて。
『そもそも、私たちの遠い遠い先祖は、現在のミミズやナメクジのような存在だった。彼らの姿こそが、私たちの原形なのである。彼らはまさに一本の管。口と肛門があり、その間を中空のチューブが貫いている』(動的平衡 72p)
『どうしてこうなったか』と考え始めると『ああでもない、こうでもない』と推理が始まるが、これは大脳の大好きな後付け説明みたいなものだ。脳は嘘を言えても、腸は嘘をつかない。どこかの首相に聞かせたい科白だが本当だ。首相はまだゼリヤ新薬発売の大腸の新薬を飲んでいるのだろうか。副作用が歯痛を伴うので短腹になりやすいから野次に転嫁してるかもしれない。
それは余談として、自宅前のミミズを1匹考えるだけで凄い世界に学問は入っていくのだと思うと、ミミズの横をアリたちが移動している。アリに言葉があるかどうか?スズメたちは喋っているようだ。植物にも感情があるという人がいる。優しい言葉をかけながら水を上げると綺麗に咲くと言うのだが。子育てもそうであって欲しいと思う昨今だ。
それにしても、ダーウィンがなぜ最後の研究をミミズにしたのだろうか。土壌を作る、生きるための作物を最初に作る生き物としてミミズの存在を考えていたのかもしれないね。ミミズがいないと植物も生えず、鳥もいなく、ましてや哺乳動物も生きられる土壌にはならないから。エイミー・スチュワート著『ミミズの話』を図書館にあったの、読んで、また報告します。
昔の少年
子供の頃、ミミズは釣り餌だった。中でもシマの鮮明な小さめのミミズは最高だった。広口の瓶に入れて近くの川で釣りをした。釣れるのはウグイで、釣果を自慢し合う遊びだった。平気で素手で触って釣り針に刺していたが、今はいじれるかどうか疑問だ。それにしても、大きなミミズは大の苦手だった。今の子供たちは最初からクワガタなど以外、虫類が大嫌いのようだ。中でも敏感に反応するのは「クモ」だろう。小さなクモでさえ見ただけで震え上がるのは何故だろう?僕たちが子供の頃は、クモは格好の釣り餌で、渓流釣りではイワナでもヤマメ(山女、アマゴ=アマっ子と言っていた)を釣るには必須だった。どこにでもクモの巣を張っているので、素手で捕まえては餌にしていた。クモだけは今でも素手で捕まえる事ができるので4人の孫たちからは尊敬されている。それにしても、ミミズにしてもクモにしても魚たちは平気で好んで虫を食べたがるのは何故だろうか?見るからに美味しいモノには見えないのだが?魚眼で見ると世界も違って見えるのかも知れない。いつも広い視野で。しかし、魚たちにとっては、人間や獣は恐ろしい存在になるのだろう。
虫も殺さぬ一茶
アスファルトばかりで地中の生物たちは息苦しいだろう。這い出したミミズも哀しげだし、雨などの後には、蟻にしたって餌が無いから住宅に侵入する。昨日も子供たちが「蟻がいた!」と騒いでいた。僕が「放っとけば蟻だって家に帰るさ」と言うと、「つぶした」と言う返事。いつだったか、そう言えば僕も「つぶしな!」と教えていた事もあったような。最近では「ハエ」でも「蟻」でも「ゲジゲジ」でもできるだけ外に逃がしてあげるようにしている。「やれ打つな、ハエが手を擦る脚を擦る」。
寝耳にミミズ
ミミズは単細胞ながら凄い。①目が無いのに方向が判る。②耳が無いのに反応する。③餌もないのに栄養を摂取し大きくなる。④あの柔らかな体で土に穴を掘る。⑤生殖器らしきものが無いのに子孫を増やす。⑥どんな環境にも対応力が高い。⑦特定の住まいを持たない。「単細胞人間」などと表現するが、単細胞は優れている事なのかも知れない。人間は余計な臓器が多いから故障もする可能性は高いし、クルマも昔のように単純構造なら素人でもキャブレータをいじったりできたが、今や全てが電子機器で触れなくなった上に複雑で故障原因すらわからなくなっている。シンプルisベスト。人体は変えられないが、せめて、質素に、粗食にも耐え、余計な持ち物は無くしてシンプルな暮らしをして行きたいと、単細胞の頭ではいつも描いている。が、「私は貝になりたい」などと言った人もいたようだが?「私はミミズにはなれない」だろう。