図説 世界史を変えた50の動物。特にミミズ。
イギリスの歴史および哲学のジャーナリスト(エリック・シャーリン)が書いた『図説 世界史を変えた50の動物』という220pのカラー本である(原書房 2800円)。この植物編もある。カイコやウシ、ウマ、イヌ、ネコもあるが50番目がヒトである。ヒトの解説の必要はないとして『ミミズ』が大切に取り上げられている。
前にも書いたけど(2016年5月21日、ミミズと1年生とダーウィン)、チャールズ・ダーウィンが最晩年に研究したのが『ミミズ』である。チューブ状の環形動物のミミズは土を肥沃にして(土のカケラを呑み込み、消化管で消化して、窒素・カリ・リンを含む物質を排泄して土壌を肥やしたり、ミミズが移動することで、土内に隙間をつくり通気性を良くする。ミミズがいないと植物が良く育たないのである。さらに鳥や哺乳類のエサにもなってくれて食料としても大変役に立つ。小さく目立たず、しかし地上の生物が生きる生物圏の健康と機能の維持に実は多大な貢献をしているのである。
『地球の消化器官』として働くミミズに晩年、ダーウィンが感謝をしている。『広々とした芝生をながめるとき、その美しさの源ともいえるなだらかさも、もとはでこぼこの土地をミミズが徐々にならしたおかげで生まれたということを思い出すべきである。鋤は非常に役に立つ人類最古の発明であるが、それが誕生する以前から大地は定期的に耕されていたのだ。いまもミミズによって耕され続けている。世界の歴史において、この動物ほど重要な役割を果たした動物がどれほどいたか、疑問である』。
100m×40m(1エーカー)に最多で600万匹のミミズがいる。筆者の庭は約30坪(100平米)だから割り返すと15万匹が地下で仕事をしていることになる。ダーウィンの目のつけどころは凄いなと思う。これに太陽と水があって、ミミズが肥やした土で葉緑体を持つ植物が光合成や呼吸をして、酸素や二酸化炭素、糖をつくりすべての生命体が生きれるように環境を整備して貢献してくれる。
ブログを書いている2階から青空が見えて、先ほど芝刈りをした芝生の匂いが立ち上がる。スズメがやってきて芝生をチョコチョコ歩き、虫を捕食している。ミミズでさらに面白いのは雌雄同体のところ。両性具有である。しかし、交尾は2匹が横に並んでする。2~3時間かかる。野生での寿命は約3年。ニュージーランドのマオリ族は『ノークnoke』といってミミズをごちそうにする。
福岡伸一さんのエセイに人間も考えてみると、物を食べれば口→食道→胃袋→十二指腸→小腸→大腸→肛門の順で排泄まで行くので、環形動物のミミズに似ていないか。あとは食べたものをどういう消化液で血液(細胞)に取り込むかということで、消化液の多くは膵臓のランゲルハンス島から。自分も含めて電車の乗客や通行人が立ち歩くミミズに見えてくる。
「シマミミズ」
縁の下の力持ちならぬ、土の中の力持ちなんですね。釣り餌でお世話になったミミズですが、今の子供たちは素手で触れるんですかね。中でも「シマミミズ」は綺麗な縞がハッキリしていて小ぶりで、僕のお気に入りでしたね。ノリの佃煮か何かの空きビンに入れて裏の川に釣りに出かけたものです。川魚はシマミミズが大好物で、よく釣れましたね。最初の一匹が釣れると、飼い猫の「トラ」が草むらで「ニャ~ッ!」と催促しますから放り投げると、くわえて得意げに家に帰ります。大きな石をめくれば、ミミズはどこにでもいて釣り餌には不自由しませんでしたね。
「寝耳にミミズ」
或る時、或る札幌のファミリー・レストランのハンバーグには食用ミミズが使われているらしいと言う噂が広がりました。何でも厨房のゴミに交じって食用ミミズのパッケージらしきものが捨てられていたと言うのです。当時はファミレス・ラッシュで激しい競争の最中、客の入りが急激に減ったそのフランチャイズは相当の被害だったようです。その時に初めて「食用ミミズ」なるものが有る事を知り驚ろきました。ライバルの仕掛けた事件なのか?今も不明ですが、うごめくミミズを連想して、当時は子供たちが行きたがるファミレスでの食事どころか、ハンバーグさえも疑って、暫くは食べれませんでした。あれはショックでしたね。ニュージーランドのマオリ族は『ノークnoke』といってミミズをごちそうにすると言うのもショックですが。
「身体にいる巨大ミミズ」
人間の腸もミミズに似ているとなると、人は皆、体内に巨大ミミズを飼っているようなものですね。大きな身体を動かすためのエネルギーを作り出すには口から食物(餌)を入れて消化吸収して血液や細胞を作り出すわけですから、腸が健康な人は元気な訳で、吸収と排泄を規則正しくできていると言う事でしょう。そう考えれば、実は、人間もミミズの進化形なのではないかと思えてきました。