『遊び』という大事な概念がある。子供でも大体8歳までに大脳の各部位を活動させることで、生涯その子の可能性や才能が花開くし、ピンチになっても耐えられる人になれる。『遊ばせる』ことの重大な意味だ。アリの世界も遊んでいるアリがいるから、アリ社会の強靭さが保たれているのかもしれない。中学や高校時代に超優秀な生徒が自殺したり、精神病院へ送られた身近な人も知ってるから、『遊びの大事さ』は筆者にはわかるつもりだ。偏差値や勉強がすべての彼らであった。

切り株

自宅の切り株

 

庭の真ん中に、大きな切り株が置いてある。河原から拾ってきたのか、農家の伐採作業で路肩に捨てられたのを拾ってきたのか忘れたが10年以上たつ。その切り株が腐り出して、捨てようかとエイッと持ち上げたら、小さなアリが大混乱。株の中にも巣を作り、根元には白い卵が一面に広がっていた。初めは混乱していても、だんだん統制が取れてきて、大事な卵を次々、安全な穴の中へ運び出した。しばらくすると、卵は1個もなくなり、見事な仕事ぶりだ。若いとき、こんなに筆者は仕事をしただろうかと思案した。


仕事ぶりといえば、働きアリの15%程度は、全然働かないらしい。いつも女王ありのいる部屋の近くでゴロゴロしていて働こうとしない。しかし、この働かないアリを全部除去したら、やはり15%のアリは働かなくなる。さらに、働かないアリだけを集めた集団を作ると、85%は働きだす。つまり集団を構成するためには15%程度の遊びのアリが必要なように自然界では組み立てられてる(のかな?)「俺はその15%のアリだよ」とサラリーマンは威張らない方がいい。賢くさぼらないとね。関係ないけど、車のハンドルにも遊びは必要だよね。


昆虫は、ほぼ本能で動くので、これは初めから決められたことなのかどうなのか。「アリとキリギリス」というイソップ物語があるが、アリの中にも怠け者がいて、ほかのアリに寄生して生きてるのが15%いるとしたら、イソップさんもびっくり発見だ。ミツバチにも花にミツを採取に行かない、働かないハチはやはりいるのかどうか。養蜂家に聞くとこのあたり、わかるかもしれない。飛んで行って、働いてるふりをしてどこかで遊んでいる。だんだん、筆者の営業マン時代の告白のような話になってきてまずいので、アリの話はこの辺にするが、生き物の世界は奥が深い。


私も家庭では、働かない夫として見られているので、ときどき働くふりをして3日に1回はトーストを焼いて、「オーイ、朝ご飯ができたよー」とごまかしている。アリを観察していると、他人事とは思えないリアリティがあるものだ。


最近(昔から)、国会はじめ、全国の議会議員の昼寝やスマホいじり、週刊誌読みが横行して15%のアリかなと思うが、そのアリたちも集まれば働くなるようになることを考えるとアリ以下といってもいいかもしれない。高額の税金が彼らに投入されているのだし


進化生物学者 長谷川英祐さんの『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書 740円)には、『生態を観察すると7割のアリはボーとしており、1割は一生働かないことがわかってきた』との記述もある。さらにコロニーの長い期間の維持のために年齢に伴う労働内容の変化は『齢間分業』と呼ばれ、固体余命の短い年寄りアリは危険な仕事に『異動』してもらい、幼虫や子供世話は若いアリにしてもらう、ハチもそうだと。若い順の仕事からいくと、①育児卵の世話(たえず舐めていないと土壌菌にやられる)②巣の維持(巣の補修)③エサを取りにいく(一番危険を伴う・・人間や自転車に踏まれたり雨にやられる)。老齢アリは③の危険地へやられる。集団全体(コロニー)の維持には最適な種の保存につながる。人間界から見ると無慈悲。(同書38・39p)さらに(お馬鹿さんがいたほうが成功する)という興味深い章もある。

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  1. 毎朝、巣を出て、夜遅く巣に戻る老いたアリ。

    ③のアリを地で行く僕ですが、周囲を見渡せば、まだ若いであろう「若年老人アリ」たちは、もう、とっくにリタイアして悠々自適?かどうかは知らないが、それらしく暮らしているようだ。その数は何%かは調べたことは無いが、③のアリの理論から観れば「もっと働け!」と思うのだが、毎日、女王アリの傍にピッタリくっついていたかと思えば、一緒にジョギングしたり、スポーツジムに通ったり、息苦しくなれば、外の空気を吸うためにか?刺激を求めて、クラス会だのOB会だのと②のアリの仕事以外は飲んだり食べたり旅行したりと好き放題に、まだまだ長い余生を送っているようだ。その傍らを、今時、僕のような僅少な種類の③のアリがコソコソ肩身の狭い行動をしている図式だ。アリの世界とは全く別で、我々人間は若い人たちを低賃金で働かせ、余命の短い年よりほど年金だ、福祉だと優遇されているようだ。長年の自己努力で積み上げた暮らしと言う訳だが、若年層ほど暮らしは大変で、子育てと仕事を両立している姿は実に痛々しい。人間社会の中でも③のアリを演じている僕は、アリの世界だけでなく、理想の人間として、理にかなっているのかも知れないと。アリガタイ事にアリの話でまた元気をもらったようだ。

  2. 今の時代、働く事は罪悪のように言われる事が多い。株かなんかで頭を使って金儲けをして、体は極力動かさずに楽をしながら、都会の高級マンションか何かで優雅に暮らすのが理想の人間像のようだ。そんな人たちは、すでに15%をはるかに超えているかも知れない。とにかく働かない時代になった。その上、IRなどが普通の話題に登る時代、人口知能を持った機械やロボットに働かせようとしている。便利になるのかも知れないが、脳の働きまで止めれば、ますます知能すら必要なくなるのではないだろうか。アリだって知能を働かせているというのに。

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