ペストの歴史5回目を掲載します。

ペストの歴史(第5回)人口減少・公衆衛生

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2015年さっぽろ雪祭り

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ペストの大流行の大きな波の2回目を主に扱う。後世に影響を与えた数値は、15世紀に書かれた「年代記」(フロワサール著)で「世界の三分の一の人々が死んだ」という文章がひとり歩きして広がった。

地域や季節でもちろん全部、死亡者数や割合は違っているが、1351年教皇クレメンス6世はキリスト教ヨーロッパでは2384万人が黒死病で亡くなったと発表。現在では、様々な資料をもとにアメリカのゴッドフリーがロシアを除いて、死亡率を割り出している。彼はヨーロッパ全土の死亡率を25%~45%の間としている。


当時のヨ-ロッパの総人口は約8000万人。また、別な人口史家は1340年の人口は7350万人で10年後の1350年に5000万人に減少したと。飢えや戦争死・自然死もあるから全部が黒死病とは限らないが、30%の減少だ。

この本は以下、各国別(各地方都市別)の数値が並んで、交通の要衝、また船が着く港町がペストに早くに感染、その菌が物資や人の移動で瞬く間に広がる患者数を記録している。職業別の死者の割合は(フランスの場合)、医者や公証人など病気や遺言に関係する人たちの死亡率が高い。

イングランドは荘園制もあって死亡率が正確に残されている。司教区で分かれているから、ある村は80%が死亡。平均死亡率は48%。また、イングランドの聖職者の死亡率は40%~50%だ。イングランド全体の人口が黒死病前は600万人、これが中世末期には200万~250万であった。減少率は約60%。

ポルトガルやアイルランド、スコットランドは資料不足で不明。オーストリアとドイツにも黒死病は及んだが、例外的に犠牲者の数が少なかったのはバイエルン地方のニュルンベルグだ。人口15000から20000人。犠牲者は10%で済んでいる。季節が冬に入り、ペスト菌が不活発でもあったが、ニュルンベルグが公衆衛生に熱心だったこと、街路は舗装されて、定期的に清掃もされて豚の徘徊も許されず(どこの町でも豚は放し飼い?)、市民は身ぎれいにしていた。市内に14の公衆浴場があり、労働者の給与の中に入浴料も入っていたと。黒死病で亡くなった人は市の壁の外へ埋葬されて、死者の被服や寝具は焼却。(日本の乳幼児死亡率が劇的に減少したのは、大正10年(1921)、東京市と大阪市で水道に塩素を混入してから。関係ないが公衆衛生の大事さ強調する私)


ニュルンベルグはこうして、公衆衛生の完備のお蔭で、ほかのヨーロッパ各都市と違い、死亡率が低くて済んだのである。現代の疫病についても同じことがいえるね。あとはスカンジナビアや東ヨ-ロッパだけど人口密度の低い地が多いからとペスト菌が2年以上猛威を奮うううちに突然変異を起こして、毒性の弱い形に変化した可能性が認められるというのだ(ネズミの多いハンガリー平原は別にして)。

  1. 世界の歴史は戦争ばかりでしたが、もう一つの戦争がウイルスとの闘いだったんですね。そして、今も現実として私たちの目の前に現れました。ウイルスに対抗して新薬や治療法を見つけ出しても、また新手のウイルスの出現ですから、この戦争は尽きないですね。新たな脅威には、蔓延してからの後手の対策はやむを得ませんが、批判ばかりで建設的な意見が少ないのも悔やまれます。お互いに自分たちの事なんですから、対岸の火事のような批判は無意味ですね。むしろ、これを機に、ウイルスに対抗できる環境づくりと、普段から清潔で健康な暮らし方を学ぶ事でしょうね。

    • ウィルスへの恐怖から、過度の心配から自分の免疫力低下を招いて、かえって病をおびき寄せることになるのでバランスとれた日常が大事かなあと思います。コロナは日本経済の現実を教えてクレマシタ。マスクは中国で多く作られ輸入されていたこと、大豆も、リフォームのトイレや車の部品も。製造業全般がそうなので、町工場が閉鎖した、製造業を中国へ移転した(安いというだけの方針で)ツケでしょうね。昨日のニュースで京都の島津製作所が検査キッド(数時間で陰性・陽性判断)を近々出しますという朗報もあります。筆者は元々、清潔どころか不潔な中で生きてきたので、ストレス多い毎日です。

  2. 昔、昔の少年。

    今回の新型コロナウイルスで盛んに言われているクラスターですが、昔から人は一カ所に集まる事が多いですね。また一カ所に集めたがりますね。宗教にしても今より昔の方が盛んだったのでしょうから、集会には大勢の人々が大挙して集まったのではないでしょうか。不安になればなるほど、その不安を払拭するために集まり、悩みを解消したのでしょう。それがクラスターの原因にもなったのではないでしょうか。現代では昔同様に宗教もそうですが、音楽ライブやコンサート、スポーツ観戦、ゲームセンター、スポーツジムやカルチャースクール、趣味の同好会などと形は変わっても、ジャンルは多岐に渡り、昔よりクラスターの危険性は多いのかも知れませんね。

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