『科学者にとって、いちばん大切なことは何かな?』『カンです』
小松左京『日本沈没』(上、193p)、100歳を超える謎の渡老人が、海に沈んで行く日本列島を予感する田所博士に『科学者にとって、いちばん大切なことは何かな?』『カンです』言下に田所博士は答えた。『え?』と老人は耳に手をあてた。『何といったかな?』『カンと申し上げたのです』田所博士は、確信をこめていった。『おかしいとお思いになるかもしれませんが、科学者ーーーとくに自然科学者にとって、最も大切なものは、鋭く、大きなカンなのです。カンの悪い人間は、けっして偉大な科学者になれません』
1973年に書かれて52年たった。私は映画で『日本沈没』を見たがパニック映画の延長で鑑賞していた。高倉健の『新幹線爆破』と同じレベル。NHK教育で100分で名著に『日本沈没』が取り上げられていて、気になって読んでみると、学会で異端児の田所先生が出てきて、政府に呼ばれ総理へ『為政者としてかなり覚悟を決めておいていただいたほうがいいかもしれん。・・どんなことが起こってても、動揺しないのが為政者でしょうが、とにかく私個人の見解としては、どうも相当なことが起こりそうな予感がする』(183p)気象、土地変動、海岸線の昇降、火山活動、重力変異、熱流量、地下温度分布、地磁気変動、海底の変動、地震の動きなどあらゆるデータをぶち込んで解析する在野の研究者田所博士が総理に直言する。同じデータを見ても、予測の場合、個々の科学者のカンの良し悪しが判断の根底に大事な要素として残る。自然現象に限らず、身近な事件も『カン』の働き具合が良ければ救えたことがたくさんあるはず。『日本沈没』に戻せば、文明論あり、日本人論あり、外交があり、潜航艇の詳しい仕組みや地球の成り立ちの40億年の話題もある。しかし、小松左京の原点は戦争と人間の本姓の残酷さ、一方に希望を置いて未来を築こうとする。守備範囲が広くて何でもありの『ブラックホールのような小松左京さんである』。濡れ場のラブシーンも上手で小野寺と阿部玲子との浜辺のシーンにはしびれた。富士山の噴火で亡くなったと思った阿部玲子が2部で小野寺とともに復活する不自然さはあるが、玲子はダンテ『神曲』のベアトリーチェに模しているかもしれない。ですか?小松左京さん?
アドマン。
感(カン)つまりは予感ですね。あらゆる経験やデータの上にある最終的は判断から下されるカンですから、単なる当てずっぽうの答えではないでしょうね。世の中には感の鋭い人と鈍感な人も居て、鋭い人は先を見越して判断し、鈍い人は成り行き任せで、その場その場で凌ぐタイプなのでしょう。科学者ともなれば研究データも生かしたうえでのカンですから予測確率も高いのでしょう。そう考えれば『カン』にもいろんなタイプがある事に気づきますね。『科学的カン』『山カン』『霊カン』『動物的カン』、『鈍カン』などと、他にも様々なカンがあるのではないでしょうか。
seto
私もそろそろ●●さんから連絡あるとか、自宅に来そうだとか、いろいろ勘なのかどうなのかわかりませんが、胸騒ぎも含めてありますね。最近読んでる中で、植物たちの知性について、彼らの感情について読んでいます。植物たちの延長に動物がいるわけで細胞の面で生物としてつながっているわけですがら当然といえば当然ですね。植物たちがいま何を考えているか想像するだけで楽しくなります。