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日本の女性が世界一の長寿になろうと、亭主を残して先に逝くケースも多い。私の近所にも何人か男やもめがいる。

隣に住む60代後半のご亭主は数年前、奥様を亡くされた。隣にはご亭主を亡くされ独り暮らしの奥さん。ある日、男のほうが突然、野菜を持ってきて「これ食べてください」と。「ありがとうございます」で終わったが、それ以来、庭に出ても、すぐに彼が出てきてお喋りをしようとする。

先だっては、近くに寄ってきて「奥さん、顔に変なものがついている」と手を彼女の顔に持ってきた。気持ち悪いやら、怖いやらの毎日を送っている。ある意味、ストーカーに近い。本人はすべて善意から発していると思い込んでいる。上品で趣味のいい奥さんで料理も抜群に上手らしい。以上は筆者の妻の報告をまとめたもの。

私からみて、老いらくの恋に溺れているように見える。戸建て同士で、庭がつながっているから怖い。突然、庭から男が現れないとも限らない。近所の人に、その被害や迷惑を掛けられていると相談すれば、それを根に持たれて、さらにエスカレートするかもしれない。とりあえずは、何かあれば100メートルしか離れていない私のところへ電話くださいと別れてきたとのこと。

男がひとりになってからの人生も長い。することを最低は4つや5つは持っていないと、男の一番弱い部分に走ってしまうキライがある。20代、30代の男のストーカーだけではなくて、老いらくのストーカーも事件を起こす可能性がある。これって、やっぱり交番へ届けておく事案なのだろうか?

彼女曰く「男がいない家はやっぱり不安がいっぱい」と言っていた。返す言葉で妻は「どんな亭主でもいないよりいたほうがいい」と。亭主はつっかえ棒なのか。そうなのだ。老人クラブの社交ダンスやカラオケで色恋沙汰も多いと聞く。人生の先には棺桶しかない、そう考えると今のうちにいい想いをたっぷりしたいと思うのだろうね。スマートに素敵に加齢をしていくことは難しい。おばあちゃん同士、庭で椅子を持ってきて楽しいお喋りに講じている場面は多いが、おじいちゃん同士を見ていると、会社の延長みたいな上下関係を感じられる会話になっていて寂しい限りだ。孤独を楽しんでいる風でもない。私も他人事ではなくて独りで暮らせる、頼ることを最小限に生きていくつもりである。

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