テレビ局の心臓部見学ほかテレビ談義。
37年前、TVCM出稿を家具屋のオープンで大量に流して、お礼にテレビ局から招待旅行があった。札幌から20人くらいの出席者。横浜VS巨人戦のおまけもついていたが、雨で中止になり、横浜中華街に繰り出した。
スポーツ紙やテレビ局の接待は当時から派手で、特に民放テレビ・ラジオは広告代理店のお蔭で経営が成り立っているといってもいい。地方のテレビ局の60%を超える収入はキー局からのCM料が流れてくる。したがって、キー局から地方の系列のテレビ局へ社長として赴任するケースも多い。しかし、それに抵抗する地元勢力、また保身のために地元局勤務ながら裏切る勢力など派閥抗争は凄まじい。ヤクザの世界に知恵と陰謀を加えた抗争だ。怪文書も飛び回る。何度も聞いた話だ。
これに系列の新聞社も加わると、私から見ると陣取り合戦のゲームの世界だ。市内の中小企業の待遇からみたら高い給与をもらって、日々贅沢な暮らしをしているし、交際費もふんだんに使えるのに、次は権力を欲しがるいつものパターンだ。丸投げ仕事をする幹部が異常に多いのも特徴だ。一度アンコの甘みを知ると逃れられない筆者のように(オハギ・団子・たい焼き見ると手が出る)『相手を思うとおりに動かす快感』は麻薬の常習と同じ。麻薬は金を費消し、カラダボロボロから見ると一瞬(ここがミソ)の天国(万能感)を味わえる。
権力はこれにお金と名誉と周りのゴマスリ坊主もおまけについてくる。
話を戻せば、東京キー局の見学会で日本中に映像が流される部屋に入って説明を受けた。大きなテレビ受像機画面がたくさんあって、技術者がタバコを吸いながら黙って画面を見つめている。手前に映画館で使うフィルムを入れた金属に覆われたテープがゴロンゴロンと並べられ、1本の番組が終われば、次のテープが転がされて放送スタンバイだ。こんな小さな部屋から録画された番組が流されて、画面の向こうで国民がテレビを見ていると思うと、なんだか情けなくなってきた。大宅荘一がテレビ出現を見て『一億総白痴化』すると言った意味が腑に落ちた瞬間だった。いかようにも国民をコントロールできるなと思った。革命や新権力は必ず最初、テレビ局を占拠する。
アナログの時代だから録画テープも巨大だったが、いまは地デジ。コンパクトな映像記録メディアで流されてるかもしれない。これは暴力に近い何かを私は感じていた。関係者には日常であってもこの場所は、人を生意気にする、睥睨する、視聴者を見下すメンタリティーを作りやすい場所だと思った。テレビ局は選挙放送時には、いかにも多忙な報道部のデスクを視聴者に見せるのが好きだ。しかし、裏の心臓部で無表情に実際に流す現場の虚無さといったら。
最近は、写される映像はほとんど外注の制作会社だ。サジ加減で発注金額を下げたり、キックバックを要請するテレビ局員も多い。NHKでも最近、そんな事件が起きた。発注者は権力を持つのだ。博奕・女・酒が嵩じて退職していった男は数知れず。最初はいろいろな能力があるだろう人々がコネであっても入社してきて、日々の仕事つまらなさに、そっちの道へ走っていく。若いときから接待のゴルフだけは上達が早い彼等だ。ゴルフ談義が止まらない人々。派手なアナウンサーやディレクターではない地味な地味な毎日画像を流す人たちを知って、自分が中学時代、放送部で毎朝クラシックのLPレコードをかけていた頃を思い出していた。
昔の少年
東京の某キー局の女性ディレクターに呼ばれて訪問した。目的は三浦友和氏と会うためだったが、当時のキー局の様子は、社内で鼠の巣と言われていた僕のデスクより乱雑で、モノが積まれていて、筆記の為のほんの小さなスペースがあるのみ。そんなオフイスの中で某大手広告代理店との打ち合わせが行われていた。会話の中身は或る映画を流して、そのシチュエーションにぴったりのスポンサーのCMを流す計画らしい。TVの映画は視聴者への配慮からではなく、広告会社と放送局の売り上げの為の画策だと、そこで初めて知った。キー局と言えば聞こえはいいが、あんな場所で全国に流される番組が、いとも簡単に決められている現場を間近に見てしまった。
借金取りには縁が無い低給取り
二軒長屋の借家住まいの頃、幼い娘にエレクトーンを買って近くに住む年配の女先生を付けた。丁寧に教えてくれたお蔭で発表会まで出れるように上達した。そんな先生の亭主は某大手広告代理店勤務のベテランだと言う。僕の数倍もの高給取りで、さぞかしいい暮らしをしているのだろうと思っていたが、或る日先生を自宅まで車で送る事になって意外なモノを見てしまった。何と考えもしなかった質素なアパートが住まいだったのだ。何でも大酒のみで派手好きで散財して先生に苦労を掛けているようだった。そう言う僕も女房に内職させて苦労を掛けていたのだが・・・。或る時期、消費者金融の広告の仕事も手伝った事が有ったが、聞くところによれば、大きな借金のブラック・リストには放送局、新聞社、大手広告代理店などの社員が多いらしい。一回のボーナスで高級車が買えるほど優遇されていると思いきや、意外にも派手な付き合いがそうさせるのだろうか。