ことし2月27日のブログより(トランプの魔力)
11月9日、トランプが大統領に決まった。TPPや日米安保条約も破棄にまで行く可能性がある。もともと『モンロー主義』のアメリカが正統な生き方であったから昔に戻ったと考えるほうが正しいかもしれない。国民の半分は生まれた州を出たこともない。映画『ファーゴ』に出てくる他人を疑心暗鬼する村人を想起して、それが国内各州に拡大して考えるとわかりやすい。貧しい層が感情面で反逆した選挙であった。日本の新聞・テレビも1年間、ずいぶんトランプ叩きの言動をしてきたことである。民主党がバーニー・サンダース候補になっていれば民主党が勝っていたかもしれない選挙である。しかし、危険なのは軍産複合体がケネデイー暗殺をしたように、自分たちの不利益になるなら大統領をも暗殺してきた過去である。
緊急 トランプの魔力 MAKE AMERICA GREAT AGAIN
2月7日のニューズウィークの見出しは「トランプ大統領」についての特集だ。NewsWeek は多少、民主党よりの雑誌なので、少し差し引いて読まないといけない。日本の新聞やテレビ報道より、書き手が直截な表現が多くてわかりやすい分析だ。
まさかアメリカのマスコミはトランプがここまで共和党の大統領候補の先頭を走るとは思わなかったと、正直に書いている。失言や罵詈雑言、とても外交はできない、テカテカの髪の毛(ヘアスプレー使用・オゾン問題へっちゃら)とか「アメリカの大統領にするには対外的に恥ずかしい候補」という印象をインテリたちは思っていたが、いつの時代もどこの国でもインテリは情勢判断を誤る者だ。書かれたものや表現されたもので判断して、自分の五感で世間を判断しようとしないからだ。官僚もマスコミも同じだ。文学者や詩人のほうが市井に生きていて正確に言い当てるのも、五感が健在だからだ。例外もたくさんいるけど。
トランプの各論点についてざっと書いてみる。(同紙29p)
1)銃規制・・「武器を保有・携帯する権利こそが、われわれの自由と他の権利を守る」相次ぐ銃乱射事件にもかかわらず、規制に反対。銃犯罪を犯しそうな頭のおかしい人は施設に隔離する。
2)在外米軍・・「撤退させれば何百万ドルも浮く」欧州に限らず、在外米軍が大きな財政負担になっている。「いつまでタダで韓国を北朝鮮から守るんだ、その必要はない」と言う一方「中国のけん制のため米軍強化を」と矛盾したことを言う。
3)イスラムとの関係・・「イスラム教徒を入国を完全に禁止する」テロの真相がはっきりするまで。モスク監視や信者のデータベースを作ることに意欲。
4)移民対策・・「南部の国境には壁が必要だ」メキシコの移民を「犯罪者やレイプ魔」。万里の長城のような壁を作り、費用は全額メキシコ政府に負担させる。
5)テロ対策・・「わが国民を殺そうとしている連中にわれわれの発明品を使ってほしくない」ISISがソシャルメディアを通じて勧誘していることを受けての発言。ネットを遮断すればいいと言うが「アメリカ国民も困るよ」と言われて沈黙。
6)税制改革・・「アメリカンドリームを実現できるように財源を増やす」アメリカ企業が祖国を捨てて国外へ出て行き中産階層が貧しくなったと嘆く。夫婦で年収5万ドル以下は税金をゼロ。相続税を全部廃止。財源は富裕層への減税措置を止めて捻出。
7)退役軍人へのケア・・「退役軍人省の施設に600万ドル以上つぎ込み噴水や銅像を作る無駄」を指摘、それより彼らへの医療サービスを手厚くする。
これまでの大統領候補と違うのは、大金持ち(不動産王)ゆえ、ほかの候補がウォ-ル街の投資・金融機関や製薬メーカー、保険会社やエネルギー会社から選挙資金を投下されて、戦う選挙ではなくて自前と寄付でやってるから「言いたい放題」が受けていて、特にブルーワーカー層の白人(自分たちの代弁者がいなかったし、選挙に関心も低かった層。失業に怯える層)が熱狂していることだ。ブッシュや現職の州知事、上院議員や保守に強いクルーズ。オバマに近い、妻が証券会社ゴールドマンサックスで働くルビオなど華麗なキャリアを持つことが災いしていると言う奇妙な選挙だ。トランプは倒産・失敗・離婚、あっちにいったりこっちに来たり、意見もコロコロ変えて右往左往。そこがうけたのだと筆者は思う。
インテリから言うと反知性主義の流れに落とし込む層だ。1920年30年時代のドイツに似ているともいえる。失業者が強い指導者出てこいと出てきたのが「国家社会主義ドイツ労働者党」(ナチス)ヒトラー党首だった。明確でわかりやすい、すぐに敵はここだと指摘して迫害させる生き方だ。トランプ以外は全員で足の引っ張り合いで、共和党自ら招いたことだとニューズウィークは手厳しい。
オバマの政策になんでも反対を使命にしてきた共和党は、ここにきてパニックに陥ってる。党内のモラルハザードだ。かつてといまのアフガニスタンやシリアの状況「破綻国家」の様相だ。共和党は議会で過半数を制しながら、何も建設的なプランを出せなかった。共和党が漂流している。ヨーロッパの既成政党も社会に溶け込めないイスラム教の若者たちのレジストに、地元若者(中産下層階級含めて)中心に右傾化(イスラム排斥・移民排斥)が北欧を含めて支持されているのに似ている。日本でも匿名によるネット右翼の横行や罵詈雑言の排他性(クレーマー)跋扈に近い。
誰かが言っていたけど「人間は歴史から何も学ばない」。学ぶと言ってるのは歴史番組を作ってるTV製作者や学校の先生と説教好きなプチインテリ、悠々自適の年金生活を送る高齢者だけかもしれない。現実はどんどん退化しているように、1週に3回は街中を歩きたくさんの人とお喋りしてる筆者には思える。
世界ショック?。
日本でも似たような田中角栄が居た。彼も改革を推進し、日本列島を改造したが、そのツケが今、都市や公共施設の老朽化など負の遺産となっている。事は急げば後先を考えずに遂行するから、当初は達成感もあるが、作り上げた時以上にかかるであろう後々のメンテナンスにかかる予算の事などこれっぽっちも考えていない。これからのアメリカも大改革は後世に負の遺産を残さぬよう、賢い側近たちが、彼をコントロールしていかなければならないだろう。また、一時、政権を取った我が国の民主党のように短命では何もできないし、理想主義だけでは現実的とは言えない。世界各国への悪影響をも心配される今回の結末だった。しかし、問題はこれからだ。日本も1日1億円もかけて足の引っ張り合いで「のんびり国会」の延長などしている場合ではない。
夢と現実。
アメリカの大国の大統領になる夢を叶えたトランプ氏。僕たちの目には、ビジネスマンと言うよりは「マーケティング・プランナー」に見えた。国内状況で支持層を如何に多く獲得するかの基本的なプランから立ち上げ、答えを出した。自分自身も含めたセレブ層よりも、貧困な国民や中間階級層以下の現状に不満を抱く国民がいかに多いかと。それらの代弁者よろしく暴言を吐く事で、他の候補との差別化を図り、注目度は世界中にまで広がったほどだ。無難に事を運んだヒラリー氏は最後に著名ミュージシャンなどに依頼して若者層の支持を狙ったが、事すでに遅し、泥試合はまさに泥臭い戦術のトランプ氏に。世の東西を問わず、綺麗ごとばかりではないのが世の中の現実だ。アメリカ大統領はケネディまでは暗殺されて交代したものだが、今や、マーケティング戦略が交代劇を演出している。