『不正に走る普通の人たち』~職場がヤバい~(前田康二郎 日経新聞)。経理畑を歩んできた著者の本を手に取った。営業として歩んできた筆者は、横領っぽい事件やそのものずばり横領事件に遭遇して、総務や経理は一体何をしているのか?という疑問を抱いてきたから読んでみたのである。東芝の長年の粉飾決算もあって・・・・。


会社の経営者が『総務や経理をバカにするような言動があれば、お金の犯罪が起きる確率が格段に上がる』(同書82p)。社長が自分のことだけを考えるエゴの強い人なら『粉飾決算をする。自分が社長をしているときに赤字にはしたくない、株主からのブーイングを受けて社史に汚名を残したくない』(53p)からである。お金に関わる不正(粉飾決算含む)や横領事件を抱えていない企業はほぼゼロに近いと著者は言う。1枚の伝票でも私的な流用を全くしていない営業マンは筆者の経験からたぶんゼロだ。


筆者も恥ずかしながら、会社と契約している高給な寿司屋さんやホテルのレストランなどスポンサーとサイン一発で食べた。タクシーチケットも知り合いに飲み会帰りに渡して見栄を張ったりしたものである。この本に何度も書いてあるけど、最初の不正伝票が企業トップまでOKが出ると、その社員は2回や3回はわけないことで繰り返す。架空な会社を利用して共謀する手口は古典的であるが、何度も会社や経理は騙される。昔は会社で不正を働くタイプは●地味●根暗●狡猾●挙動不審●神経質●いい加減・・であったが、一方●快活●陽気のタイプは普段どおりの日常を送るから見過ごされてきたが、近年、このタイプも多くなってきた。


さらに不正を働く社員は、自分が誰よりも頭がいいと思い込んでる(劣等感が強いゆえに)人が多い。ある社団法人の事務局長をしていた人も話すと物知り・能弁で彼と議論しても殆ど相手は言い負かされるほど賢い人であった。しかし、イベントの寄附金や協賛料を自分の私企業に一回振り込ませてから、社団法人へ入金させ後で、お金を抜いていたことがバレて首になった。話していて感じるのは、以前、大手企業で管理職で豊かな暮らしをしていたが、倒産して転職がうまくいかなかったか、当時からその企業で不正な錬金術をしていたのかもしれない。


不正や横領をする人の共通するするのは、『家庭内で家族からその存在を軽んじられている』『仕事量や稼ぎをしている割に、社内で肩書きや給与に反映されていないという強い不満を持っている』。この指摘は意外であったが妙に納得する。筆者の身近な人で横領をしていた知人は、そんなに高い給与でもなく毎日、飲み会、風俗で遊び呆けていて、どこにそんな金が沸いてくるのか不思議であったが、架空会社からのキックバック手法であった。一度、覚えた蜜は忘れられず、転職しても今もどこかでまた繰り返しているはずである。


横領は癖で『習慣病』みたいで治りにくい。政治家が『政務活動費』を各種領収書を作成して、横領をしているのに似ている。活動費の使用の上限が毎月20万円と定められると政治家はギリギリその数字に近づけて使い切ろうとする。役所も当初予算を使いきろうとまだ使用できるのに新しくパソコンを導入したり、緊急アルバイト要因を増やし、失業率を減らす意味もあって過剰な派遣女子社員を増やす。これも普通の人々が税金の横領を組織的にやっている構図である。内部から告発文書が出てもいいはずなのだが。『まだ使えるIT機器やコピー機器を新しい機種に大金を使って予算消化をしていますからオンブズマンさん調べて告発してください』と内部リークあってもいいと思うのですが。いつのまにかそれがあたりまえな慣習になってしまった。


この本の結論は、どんな不正も実際の動機は『自分のため』で、『私服を肥やしたい』『貢いだ相手から嫌われたくない』『家族にいいところを見せたい』『悪い数字を出したことを知られて恥をかきたくない』からやったというだけの話。誰かを肉体的に傷つけたわけではない。しかし、それが原因で倒産でもしたら、下請け企業やその家族を路頭に迷わせたり、ネットでも書かれて永久にその罪が、記憶が残って、自分自身の家族の未来の人生まで狂わせる。犯罪が連鎖していく。一時の幸福感がたくさんの不幸を生んでいくのである。あなたの横の人が、普通の人が不正を働いているかもしれない・・・というのが著者前田康二郎さんの結論であった。252p

 

 

 

 

  1. インフルエンザB型?

    他人を疑う者こそ、自分を疑え。で、潔白な人は、他人を疑うことすら知らないものです。だから騙されやすく被害者になりますね。しかし一度騙されれば、今度は他人を疑うようになり、用心すると同時に、 ねしそろ
    人によっては、今度は自分も誰かを騙してやろうと考えます。悪の連鎖ですね。火種が有れば、その組織内に蔓延します。インフルエンザみたいなもので、予防接種には組織内教育もA型は効いても、B型には、此れ迄の生い立ちや人間関係がどうだったかによっては効かない場合も有るでしょうね。

    • 私の経験では100の不正で発覚は1つか二つですかね。人と人が物々交換を始めたときから
      (それ以前から)たぶん、そんな生き物が人間で、ほかの動物ではあまり見れない現象です。
      どちらが高等動物かわからなくなります。

  2. 想定外のリスク。

    怠け者ですね。人様のお金を横領するわけですからね。労せずに利を得る事に慣れてしまうと,まじめに稼ぐ事がバカバカしくなるのでしょうね。ギャンブルなら,まだイチかかバチかですが,自身の手でさじ加減できれば確率は高いですから癖になるのでしょう。しかし本人は騙せたつもりでも,どこかに抜けたところがあるもので,遅かれ早かれ,必ず発覚しますね。そんなリスクは想定外?だったのでしょうか。利口な人はそんな危険な冒険はしませんね。

    • お金の不正もあれば、人間関係の不正な作り方もあるかもしれません。ごますり含めて。
      筆者の知人で某市の役職まで上り詰めた人がいますが、人相は学生時代と違い悪相
      に変わってました。たくさんの人を蹴落としてきたのでしょう。60歳で辞めていきました。

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