電通という存在。(1)
資本主義が勃興する中で、イギリスから独立したアメリカにおいて、市場はすでにイギリスはじめヨーロッパに独占されていて、国内産業をどうやって伸ばしていったらいいのか四苦八苦していた時代。国内企業をサポートする知恵を欲した。『ここをこうして、こういう商品をつくり、こういう世代に向けて売り込むといいですよ』という提案をする企業や仕事の需要が出てきて、それが広告代理店の萌芽である。今使われるマーケッティングである。同業の他社は当然ライバルで、一つの広告会社がライバル企業(スポンサー)を複数抱えることは異常で、あってはならないことである。企業秘密が漏れてもOKという企業ならそれでもけっこうであるが、普通、隠すものだ。トヨタ、ニッサン、ホンダやKDDIとNTTとソフトバンクの同業種を同じ広告会社が抱える異常さは『クレージー』以外の何物でもない。
広告代理店は、選挙や政党政治や戦争にも深く関与もしている。小泉政権のときに郵政の民営化がされたわけだが、背景にアメリカの保険会社連合から日本の郵政省の保有する簡保資金と郵貯の資金を盗むために郵政民営化PR資金として電通に5000億円の資金が流された。それを暴露した政治評論家森田実は、以降、テレビから消された。当時、自民党で郵政民営化の先頭に立っていたのが日本生命の御曹司である。自民党=経団連=電通という図式は昔も今も変わらない。東京電力や電気事業連合会ももちろん電通(博報堂)案件で、電通は黒子に徹しているが、政治的な動きはしているはず。
『世界一の電通マンの姿を、アメリカやヨーロッパでもみかけないが、どこか共産圏で仕事ででも密かかに活躍しているのかね』(電通の深層・大下英治 214P)『電通の国際広告の取扱高は、全社取扱高に占める割合が1.9%で2%にも満たない。J・Wトンプソンやヤング・アンド・ルビカム社などは国内と海外は半々である。電通の海外部門での弱さは異常としかいいようがない』(214p)東芝の故土光敏夫会長も電通が家電メーカーすべてを扱ってることに怒っていたらしい。電通内での扱う部署を変えようと、建物を変えようと子供だましだと。ロスアンゼルスオリンピックでIOCとワールドカップでFIFAと儲けられるイベント仕掛けはトヨタ案件の東京オリンピックや次のパナソニック案件の大阪万博に向けられているが、どれもこれも日本の企業から絞り出す金や国税。
MLBの大リーグ中継では大谷翔平人気にあやかりアナハイムエンジェルスタジアムをトヨタの看板で埋め尽くし、キャッチャー後ろの看板に布団屋や予備校の広告をNHKで流させたり、スポーツイベントの放映権を売り抜ける。海外に弱い電通は国内でしか威張れない会社なのである。放映権料をできるだけ高く売り抜けることを目指して。
大きな声では言わないが新聞社やテレビ局の営業マンで電通嫌いの多いこと。私の周りに何人もいるし、うつ病で退社した筆者の友人もいた。超体育会系なので、ノリの悪い奴は弾かれる。芸能のプロダクションは『電通のバッジを見たら挨拶をして顔を覚えられろ。CMで起用される可能性あるかもしれない』と。内弁慶の電通は、しかし、総合商社と比べる人がいるがとんでもない。商社マンの持つ語学力、人間関係づくり、情報ネットワークは下手をしたら内向きの日本の外務省よりビビッドな情報を持っている。相手国の政治や官僚たちの懐に入り、ときには汚職の手を貸す場合もあるが、電通とは生きている水準が違う。広告代理店はスポンサーが儲けたお金を使う、他人の土俵で相撲を取る。商社は自分の力で交渉で稼がないといけないのである。ときに政変が起きてイランのホメイニ革命でプラント計画が失敗したこともあるくらいだ。
それにしてもなぜ、同業者は電通を使うのか?政治力である、スキァンダル消しである。役員に警察や検察庁や公正取引委員会に勤務したOBを入れて年間千万円を超える給与を渡して籠絡する。新聞社やテレビ局の人事に平気で干渉してくるのである。私の知り合いも三菱電機の仕事で、スポンサーが『あなたの好きな広告代理店の扱いにしていいですよ』と言われて電通以外の広告会社を指名した。そのあと電通から彼の上司に電話『三菱は電通扱いを知っていてやったとはトンデモナイ』彼は次の人事異動で広告部から外された。この話、まだいろいろあるので続きを書きます。電通は政治団体である。義理人情を解さないヤクザより頭脳があるだけ性質が悪いかもしれない。