健康の帝国からの脱出。
4月3日の原稿の再録です。新しい読者が増えましたので。コレステロールの数値を巡り医学会は喧々諤々。血圧降下剤もときにボケを促進するという説もある。血圧が低いと心臓から脳へ行く血流を減らして、脳細胞が壊死する疑いもあると。高血圧が長生きや元気の素という医師も現れている。
内臓に異常がなければ、内臓を意識しないように、健康に問題なければ、健康を考える必要はない。健康なんて、あるようでない代物。そう私は思うのだが、世の中、健康の文字が溢れることはあっても減ることはない。まるで水戸黄門の印籠のようだ。その印籠には『私は健康を志向する人間です』と書かれている。
先日、心臓の定期健診終えて、調剤薬局に行くと、隣の老人へ紙袋を持って薬剤師が「はい、お薬一か月分です」。何が入っているのか見えなかったが、デパートでもらう買い物袋の大きさだ。「冗談だろう!その量で1か月!」と私は内心呆れ、彼らは1割負担だからもらいたいだけもらえ、健康保険の赤字に寄与している。医師の判断も判断だと怒りに似たものがでてきた。ここまで極端でなくても、薬を麻薬のように、おまじないのように信仰しているのだろうか?薬同士の未知の化学反応もあるだろうし、副作用のない薬はないわけだから、製薬メーカーの治験発表も嘘も多い(副作用を隠して)。
大学の教授たちもメーカーから大金をもらって(研究費の名目で)この額はとんでもない額である。人情として、大量のお金をもらったら製薬メーカーの新薬について、不利益なことは書きにくい。それを絡め手でやるのである。直接にエサを与えないで、パンフレットの原稿執筆代とか講演代として、印刷会社や広告代理店経由で金を渡して、マネーロンダリングみたなことをする製薬メーカーもある。私もしたことがある。ただ、国公立の医師の場合、必ず講演の目的と謝礼の金額を医局長あたりに提示しないといけないから審査を受けるようになっている。このチェックが甘い私立の医科大学・医学部が曲者である。
製薬メーカーの部長には、講演料のランク表があって、芸能人の出演料と同じ。ギャラに不満顔をした医者も多くいた。
「自然と現代人」といったテーマで倉本聡の講演会をお手伝いをしたことがある。倉本さんは「健康について、美味しい食べ物を食べ、残して廃棄して、今度は太り過ぎだと、運動施設に入り、歩いたり走ったり。現代人は何をしているのか」と喝を入れてました。「自然の中を歩きなさい。芝生があれば裸足になって皮膚感覚を研ぎ澄ませなさい」と。幼稚園の教育には裸足で遊ぶ園が増えているが。都市は大脳が作ったもの(養老猛司)。ときどき田舎へ行く必要があるのではないだろうか。人間が作れないものから恩恵を与えてくれる。いずれ黙っていても100%死が待っている。
『・・いつかは、だれでもこの星にサヨナラするときが来るけど、命は継がれていく…』(竹内まりや・いのちのうた)。たとえ子供がいなくても、自分の生き方や、自分は忘れてしまった一言が、誰かが思い出してくれれば、それで十分に生きたといえるのではないか。せめて「健康のためなら死んでもいい」みたいな必死な形相で生きることからオサラバしたいものである。「健康の帝国ナチス」という本もあるくらいだ。奇異に思われるかもしれないが、健康志向は、排他的な生き方にも通じることを肝に銘じたい。
「健康」を→「国家」に変えるとその意味がわかるだろうか。さらに、世の中には、はじめから健康から見放されて生まれてくる子供たちがたくさんいるのだということを忘れないでおきたい。
iida
昔、お正月TV番組で家族に囲まれた100歳超えの年男として、車椅子上の幸せそうな笑顔のおじいちゃんにMCがインタビューしました。MC「おじいちゃ~ん、長生きのコツは何ですか?」と。おじいちゃん「毎日、毎日、まっず~いものを食べることです」。MCも一瞬凍り付き、付き添いのご家族も苦笑いでしたが、おじいちゃんだけが「やった~!」みたいな薄ら笑いを浮かべていたのが今も鮮明に。いたずらっ子おじいちゃんの、きっつ~いブラック・ジョーク?か、それとも真実なのか?今でも知る人ぞ知るお話でした。果たしてカメラ・リハーサルしたんでしょうか?
僕の1月2日のブログより(www.n-com.biz)
昔の少年
AN「おじいちゃん、長生きの秘訣は?」。百〇歳「毎日、毎日、マッズ~いものを食う事です」。AN「おばあちゃん、長生きの秘訣って何でしょう?」。百七歳「貧乏だったからね~お腹が空いちゃあ~水ばっかり飲んでたのさ~お陰で血液サラサラだよ」。食生活の欧米化で太り、減量のためにお金をかけ、お腹が空いたと言ってまた食べる。カロリーを消化するために運動するが、運動以上に食生活はどんどんエスカレート。ダイエットに「タバコ」を嗜好したり「サプリメント」を実践したり「健康?食品」を求めたり。健康スパイラルにのめり込んで行く。何もしない、何も飲まない、何も食べない時代は戻らないだろう。不味いものと水さえ飲んでいれば、何も特別な事をしなくても血液サラサラで百歳まで生きられると言う証人が沢山いると言うのに。但し、そんな彼ら彼女らは、現代人のように頭ばかり働かせるのではなく、かっては労働でせっせと身体を動かし続けていた事について、どのANも聞こうとはしなかった。ダイエット産業は今や大流行だ。