悪は遠くから仕事をする(希望の歴史 下)
オランダの歴史家・ジャーナリスト・ルトガーブレグマン著「希望の歴史」から。同著(下)の227pより「第10章では、悪は遠くから仕事をすることを語った。距離は人に、インターネット上の見知らぬ人への暴言を吐かせる。距離は兵士に、暴力に対する嫌悪感を回避させる。そして距離は、奴隷制からホロコーストまで、歴史上の最も恐ろしい犯罪を可能にしてきた」お互い、顔を合わせれば思いやりも普通に出てきて、暴言を軽々に吐けないものだ(近年は違うかも)。兵士たちも、爆弾やロケット発射のボタンを押す場合、落ちたところに自分の家族と同じ家族が生きていて、そこへ投下する、運が悪ければ即死の危険もあると思えば躊躇するが、距離があれば、平気でできる。顔のない兵器ドローン。遠くからパソコン画面を見ながら操作する技術兵士、ロボットに銃を装備させて敵陣へ発射させたり、爆弾を置いてくる。「自分は絶対的な安全地帯にいて相手を殺したり、犯罪をさせる。」天才的な頭脳を持つコンピュターの父フランツ・フォンノイマンたちがマンハッタン計画を推進させて、広島・長崎へ原爆を投下した。1945年3月10日の東京大空襲では60回以上の焼夷弾投下で死者11万人、被災者310万人を数えた。「悪は遠くから仕事をする」。パイロットに言わせれば「爆弾投下を命令通りしただけ」だという理屈。ある指示のもとに動く人は軍人や官僚や詐欺師集団、暴力団、教師、政治家など枚挙にいとまがない。もともと誰かから命令されたことはしたくないというへそ曲がりの私なので、特に命令と服従の世界への反撥心が異常に強い。
とはいえ、この本は、人間はもともと善である、性善説をたくさんの事例から解き明かした本だ。悪は遠くから仕事をするとはいえ・・・・・善は近くから仕事をするともいえる。残酷な犯罪がときおり起きてしまうが。
「しかし、思いやりの道を選べば、自分と見知らぬ人との距離が、ごくわずかであることに気づくだろう。思いやりはあなたに境界線を越えさせ、ついには、近しい人や親しい人と、世界の他の人々が,等しく重要に思えるようになる。そうでなければブッダは家族を捨てただろうか。そうでなければキリストが弟子に、父と母、妻と子、兄弟と姉妹を置き去りにせよと説いただろうか」(228p)




アドマン。
悪と言えば、残忍な世界は昔からありましたが、近年は更に残忍さがエスカレートしています。それも指示役がネットの向こうから他人のアカウントから呼びかけ人選して見知らぬ同士の悪のチームを結成し、悪の手法で、あらかじめ収集した個人情報を渡して数人で強盗殺人。銀行にも行けないお年寄りの一人住まいのタンス預金を強奪し最後に証拠隠滅のためか殺人。90歳まで頑張って生きて無残に殺されるなんて酷い時代です。ネットの功罪はまだまだ沢山ありますね。便利さは軍事や悪にも多用され、今や仮想通貨のネット上の横領など私たちの想像を超えた犯罪を国を挙げて行われる始末です。考えてみれば昔の電話と大差のない海底ケーブルで繋がれたネットは脆弱性ではあるのですが、いつしか電波が空中を飛び交って繋がっていると勘違いしがちですね。WiFiや電話回線は確かに空中を電波がつなげてはいるものの短距離での例で、世界中の幹線は海底ケーブルが全てですから、このケーブルが壊されたらと危険すら感じますね。後は衛星通信の手段ですが、これも衛星が攻撃でもされたら?と。全ては原始時代に戻る事でネット犯罪は無くなるかも知れません。
seto
全ては原始時代に戻るとは、未来の人類の姿かもしれません。特に戦争を避けるための営みが安定した暮らしを守ってきましたが、とんでもない物価高と失業が2023年、地球を覆うことになりそうです。日本のテレビや新聞は、それに従事する社員が厚遇の中で生きていて危機意識が薄いですが、IT世界の大御所はリストラの嵐。ツイッター、マイクロソフト、メタ、アマゾンなどリストラの数の多さ。関連会社もそれに右ならえならひどいことになります。無料ビジネスの限界が来ていると思いますね。SNSを有料化するほうが健全な社会を構築できると思いますがいかがでしょうか?絶対利用者は減りますが。第三次世界戦争の危惧もウクライナへの最新戦車をドイツ、英国・米国が供与するアナウンスを出してロシアを脅かしています。ドローン兵器にしても、人類は何をやっているんだとがっかりします。発明はすべて武器化することで大儲けする産業が闊歩しますね。それこそ「悪は遠くから仕事をする」です。