上司より会社において重要なのは建物なんだ(吉本隆明)ほか。
糸井重里が聞き手で、28項目について質問し、それに吉本隆明が応えるという形式の本だ。(悪人正機、吉本隆明 朝日出版)ほんとうのことを言う人が少なくなったなかで、形式的な正しさしか言わない世の中で刺激的な本だ。「生きるってなんだ?」から始まり「お金ってなんだ?」で終わる。
途中に「理想の上司ってなんだ?」という糸井さんの質問に「僕が会社勤めやなんかで体得したことでは、会社において、上司のことより重要なのは建物なんだってことです。明るくって、気持ちのいい建物が、少し歩けばコーヒーを飲めるとか盛り場に出れるような場所にあるっていう・・・そっちのほうが重要なんです。僕はそういう会社だったら、勤めがうまく続くと思いますよ。・・・上司の良し悪しなんてある程度の範囲に入っちゃうから、そういうのが第一条件にならない。それより建物なんです。理想的な建物が理想的な場所にあって、ある程度以上の規模の会社だったら、毎日来てもいいやって気持ちになります」78p。
糸井さんもこの返答に「ぶったまげた!」。勤め人になるなら、まずは建物を見てから働き口を探すのがいいかもしれませんね。
「教育ってなんだ」のインタビューでも「大学は、まあ国立公園みたいなところなんですよ。学生の身分があるとアルバイトもしやすいし、あくせくしながら目的に向かって一直線に行くより、国立公園で一休みしながら考える場所ってことでいいんじゃないでしょうか?そして大学ってこんなもんかって知っておく・・・失恋を経験するみたいなもんでね」136p。
さらに「家族ってなんだ」でも「結婚というか、家族の問題は、まずね、世の中には立派な、円満な家庭なんてものがあることになってますけどね。吉本さんのとこも家族が仲良くやってていいですねとか言われることもあるけど、そんなことはないんでね。・・・経験上、実感上から言っても、そんなものねえよって思うから、たいていウソをついてるんじゃないでしょうか」とズバリだ。自分の家庭を振り返ったり、いまの結婚生活を正直に見つめれば円満な家庭はつくりごとだと思うね。筆者の実感でも。
ただ、お腹にいる10か月、生まれてから1年だけは、母親は自分が世話をしないと死んでしまう子供だから、ここだけは絶対に気を抜いてはいけないときつく言う。皆さん3歳までというが吉本は1歳まででも十分だと。それをしないと子供は取り返しのつかないことになると。親に復讐する子供にもなると。赤ん坊がじっと母親を見ているのにスマホをイジリ、無視している若いお母さんさんが気になる筆者だ。笑顔で返して欲しい。とにかく1年間だけは我慢してほしい。そう思う。
匿名
素晴らしいビルや有名企業にドヤ顔で出入りしている会社員。親の脛をかじりながらも豪遊する大学生。「仲の良いご家族ですね」と言わせている家庭。内にある顔とは違う、外に見せる顔は様々。僕たちは、人に羨ましく見られたい、見せたい、と思うから行動や言動や表情で演出しているのだろう。悪い事、汚い物、欠点、方言、生い立ちなども隠して暮らしてはいないだろうか。秋田弁?の若い女性が一人でしゃべるある民放の夜のラジオ番組が好きで時々聞いていたが、あれだけ堂々とやられると痛快だ。「関西の人は東京に住んでも関東弁にしないね~」と、母が感心していたのを思い出した。そういえばウチの家族にも元関西圏人がいるが今でも全然変わらない。むしろ僕などは大阪の経験もあったのだが、うつらない様にガードしているくらいだ。「ありのままに生きる」とよく聞くが、なかなか難しい生き方かも知れない。考えてみれば人間、素っ裸になれば肌の色や部位の大小はあれ、皆同じ。素晴らしい美人だって同じ人間。する事は大差なく皆同じで、服を着飾り、装飾品を身に着け、言語や身振りで「ウソ」を演出しているに過ぎない事に気づく。「人類、皆同じ」と言うわけだ。