「思考の整理学」(筑摩書房)で30年以上ベストセラーを続けている外山滋比古(しげひこ)さんが92歳(2014年)で書いた「老いの整理学」(扶桑社新書)に、内閣府が7か国の若者を対象に国際調査。米・英・独・仏・韓・スウエーデン・日本。「自分に満足している」と答えた若者は45%で7か国中最低、アメリカは86%。「自分に長所がある」と答えたのは日本人68%でビリであった。


著者はなぜだろうかと推理して「端的に言えば、人をホメないからでは」と。たえず他人の欠点を問題にし、批判や攻撃をする。叱ることは少なくないが、ホメることを知らない。これだけSNSが毎日つかわれて、文字が大量に書かれて、ホメる言葉の量と批判や中傷や叱り言葉の量を測るとわかるかもしれない。外山さんは教育学でピグマリオン効果の話をする。デタラメやいい加減でもとにかく褒めれば学力は伸びるという。


クラスを二分してAとBに分ける。そしてテストする。Aグループには採点して答案を返す。Bグループには答案を返さず、ひとりひとりに「よくできていた」と告げる。これを何回か繰り返したのちにBグループの成績はAよりいい。はじめAとBはほぼ同じ学力で分けられているから、その原因は「でたらめでもいいから褒め言葉」の効能である。筆者の学校時代や社会人になってからも、印象に残るのは私のことを「アイディアマンだね」と歴代社長から褒められたことだ。


別にこれといったことを・企画立案したわけでもなく、10%くらいの成功率であっても、既存の仕事の繰り返しをしている人が多い中で、相対的に目立っただけということなんだけど、「褒められるとやる気が出てくる」のは本当だ。さらに、毎月の数字を細かく細かく指摘されて、後幾ら数字が足りないと言われてする仕事より、「こういう企画をこういう層へ向けて実施する」と制作費など制限を設けず、やらせてもらった方が、数字や利益を結果として出すことができた。自分の能力が会社から肯定的にみられて、仕事をした方がいい成績を残すのは、ピグマリオン効果の会社版みたいである。


老後もこのピグマリオン効果を応用して楽しい老後を楽しんではどうかというのが外山さんの主張である。賞味期限の切れた会社OBを捨てて、新しい友人をつくり、お喋りするだけで元気度はずいぶん上がる。感心されたり、ほめられたりするかもしれない。これは、どこの人間関係でもお金がかからず、気分よく世間で生きて行く知恵である。


 

  1. 中学ではA、B、C、Dとクラス分けし、A、Bは進学組、C、Dはその他とグループ分け。A、Bはまじめに授業を受けていたが、C、Dには不良も居た。同学年でも二つのグループはいつも対立していた。剣道部の早朝練習にC、Dの不良が入部して来た。いやな予感が試合で的中した。防具の隙間を狙って反則打ちされ、体中紫色に腫れ上がった。
    普段は鬼の教頭にこっ酷くやられている腹いせが、こちらに返されたわけだ。不良も悪いが、原因は厳しい教員にもある。スポーツの形を借りて大暴れする彼は、普段から鬱積していた「はけ口」を求めていたのだろう。少なくても学校では、一度も誉められた事など無かったのだろう。

  2. 小学校の卒業式で、学年で3人が表彰された。一人は教員の息子で「優等賞」、あとの二人は「努力賞」で僕と、おとなしい女子だった。絵の表彰は何度か貰ったが、勉強での表彰は初めてだった。その後の自分の人生の中で、あの時の感動が、いつまでも忘れられず「努力」する事の大切さと、「努力」と言う言葉も大好きになった。

  3. 孫の教育も結構難しい。最初の子(長女)は親も可愛がりすぎたのか、今では手遅れだ。2番目は手に負えなかったが、最近ようやく真面目に部活をするまでになった。末っ子には「誉め殺し教育」をしているが、みるみる素直に伸びて成績も良くなって大成功だ。

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