不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどうどう前向きに生き抜くか~
知人から、下記のレポートが若者の間で話題になって、炎上騒ぎになってもいると書かれてあって、さっそく会社のコピー機を使い、毎日、電車の中で繰り返し読んでいる。
http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf
20代と30代の、国家の未来に危機感を共有する経済産業省から精鋭30人が東京大学の総長たち13人と民間は松岡正剛さんを筆頭に各分野で見識ある人たち13人にヒアリングと勉強会を重ねて纏めたレポートだ。A4横で65pにわたる。日本の各省庁の統計やOECDの調査も入れて、チャートも多用して誰が読んでも一目でわかるよう書かれてある。
現代世界は低成長に入り、国家も溶解して避難民が1億人近く人類史上最悪な人間環境になり、貧富の差が国ごと、国の中でも格差が広がり、正規雇用と非正規の年収格差、母子家庭が貧困から抜け出せず、貧困の連鎖が繰り返される実態。レポートが発表されたのがことしの5月。日本の未来には人口構成からいって、ここ10年が国の舵取りの勝負だという共通認識に立っている。
これまで、失礼ながら高齢者=弱者として、医療や年金面で優遇をしてきたとも書かれてある。時間あれば読んで欲しい。若手の官僚たちの苛立ちも伝わってくる。たとえば、定年後の暮らし調査で、60%以上がまだまだ社会の中で働きたいという感情を持っているとか、20代の意識調査で「社会や国に貢献したい」人たちが世界からみて日本はダントツに高いのに阻まれている実態(このレポートを書いている官僚たちもきっとそうなのだ)も率直に述べている。
新聞やテレビのニュースは読まず・聞かずでいいから、このレポートを何度も読むことで、チャートで生々しい日本の現実が伝わってきます。またそういうように構成されて書かれてある。医療費の削減もある時期から、「胃ろう」(胃から栄養物を入れて延命措置をするだけで医療費を高騰させていた)を薬価の点数を下げて、できるだけしない方針が出されると40%減少させることもできた。既得権者との日々の闘いをしてきたのだとわかる。
特に年金受給にはまだ遠く、住宅ローンを抱え、子どもの教育費のピークに入ってる40代後半から50代の「変化を嫌い、悪くても現状の待遇、リスクを犯したくない」人たちのとんでもない厚い壁に「若手の官僚たち」「変革意識の高い民間の若手たち」が立ち止まってしまう。
このレポートの出だしに、彼らは「日々の日常業務をこなしたうえで、このレポート作成に参画している。各省庁の次官もこの動きにOKサインを出している」と断った上で書いている。新聞社でよくある匿名で社内の派閥抗争を書いたり、内輪話に終始する怨嗟の本とは違う内容なので、話題が開かれている。目からうろこの話も多いから、会社のコピー機を使い通勤途上で繰り返し読む価値がある。
今回、「たちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」に参画した20代・30代の官僚の卵たちは、同世代で派遣や母子家庭で暮らす人たち、引きこもりになっている身近な、余りに身近な知人を持っていて身体で反応しているはず。日本の年齢構成国家の行く末をたくさんの国が見ている。果たしてどういう政策をしていくのか見守っている。
若者2人が75歳以上の老人を支えるではなく、老人二人が若者一人を支えるくらいの気構え、政策転換が必要かもしれないとレポートを読みながら思った。学生運動を起こし、日本社会の変革を目指した世代が67歳から70歳に入っている。あのエネルギーを「車だ、海外旅行だ、趣味の時間の充実だ、健康器具や薬の通販、時間余ればテレビ漬け」にならないで、もっと外に社会に目を向けて若者が生きやすい地域つくりや志を同じくする若者を紹介することができると思う。人生にはリアタイアはないのである。リタイアは棺桶で十分である。例外で老人二人が若者を一人支えると先ほど書いたが、各家庭で現在進行している。引きこもりの男女の暮らしを支えているからだ。さらに80代後半から90歳代の親たちの面倒を看ている。知り合いに90歳代の親を3人抱えている人もいる。60代で働きたくても介護のために職を辞した人もたくさんいる。個別の事情を考慮すれば一般論は書けないが、このレポートの限界は若者にも老人にも住みやすい国づくりの視点を、税金の配分の部分でばっさり切ってるところだ。本質は、税収の殆どは公務員の人件費に消えているんだという以前にあった公務員大削減案が込められていない。役所に行くと若い女性が多いが、聞くとパートやアルバイトで、実際の会議は男仕事の補助的な役割しかしていない。
その他、参考になる資料を2・3掲げる。
しかし、このレポートの盲点を二つ書くと、福島原発の放射能の除染と汚染、大地震の予知での首都圏の機能マヒについて賢く避けられている。経産省という省庁の置かれた限界かもしれない。委員会の中で激論が出たと思うが、それを書かないことで、表紙の次官からOKサインをもらえたのかもしれない。
社会参加。
40~50歳代の男性あちが定年後の年金生活の計算をして楽しそうに語り合っていたことがありました。つまり定年後は働かずに楽に暮らせると思っていたに違いないのです。しかし,社会情勢は刻々と変化する事までは計算に入れていなかったようですね。60歳・65歳まで働けば,社会に十分貢献したので,後の余生は遊んで暮らそうと思う人たちが如何に多いかですね。一方で,就職できない若者や思い通りに暮らせない人たち,近年では外国からの移住者や難民まで増加傾向にあります。またハングリーな外国人に介護分野などの職を奪われるケースも出始めています。日本では高学歴で仕事を選ぶ若者たちに比べて,東南アジアなどから外国人たちも日本の社会に順応し始めています。アフガンから日本に難民申請中の若者が大学に合格したとの記事もありました。この先,社会構造はさらに刻々変化していくでしょう。年齢に関係なく体力や健康に差はありますが,働ける間は,何歳になっても,何らかの方法でこれからも社会に関わっていたいですね。