忘れていたこと「伝承と伝統」
昨日の『漆の伝道士』室瀬和美さんの講演で一番大事なところが抜けて
いたので追加します。
それは、伝承は代々その形式ややり方をほぼ踏襲するが『伝統は刻々と
変化する。そして時間の積み重ねで伝統になる』という肝心な話を忘れて
いました。使う材料は縄文時代と変わらないとしても、作るものはさまざまに
なり、スライドで見せてくれたがイギリスから携帯電話を5台『蒔絵』で作って
くれという依頼があって、スマホの時代でしょうと断ると一台85万円で頼む
といわれ引き受けた。
すばらしい仕上がりで、すぐに完売したとのこと。金持ちは85万円でも携帯
電話を買う。
しかし、違うのは『コンシェルジュ』というボタンがついていて、ここを押すと
『札幌で一番おいしいラーメン屋さんは』と聞くと丁寧に『○○です』と教えて
くれるサービスが付いていること。世界中のあらゆることを教えてくれる携帯なのだ。
現代の『漆』はデザイン力、流通、技術という要素も加味されている。
さらに『蒔絵』でハープをも作り演奏会を開いたり、ある市から『漆でなまず』
ができないか打診されて、名古屋のしゃちほこを思い出して、漆の上に金箔
をつくり駅前に置かれている。
そんなわけで伝統は時間の経過とともに変幻する。歌舞伎でもスーパー歌舞伎
があって空中を舞っていた。
伝統はけして保守的ではないということでした。
陶器職人の父と車屋の母の息子。
自国の伝統を、我々はすっかり忘れてしまいましたが、外国の若者たちの方が日本の伝統を認めていて、修行に長期滞在したりしていますね。我々ももっと伝統を理解して知るべきですね。漆器にしても、陶器にしても、身近に沢山あった訳ですからね。陶器職人の父から教えて貰えば良かったと、人力車の車屋の母からもっと話を聞いて居れば良かったと、思ってみても既に遅し。二人とも他界してしまいました。