新聞やテレビ、経済紙をにぎわす「東芝の経理不正操作」(数字上の利益づくり)事件。今回東芝社員の夏のボーナスは「仮のボーナス」らしい、正しい決算が行われていないからね。

筆者は30代後半から40代初めまで、東芝北海道支社の「社内報」を作っていた。協力会社へも配布される、正月号なら、当時の東芝の社長の正月の挨拶、人事異動や各セクション(部)ごとに、「いま何をしているか」を他の部へ知らせる役割も持っていた。私のブログデザイナーとの共同作業であった。

広報担当者が「この会社は縦割りで、業務が多岐にわたり、隣の人が何をしているかわからない場合が多いので、社内報が必要なんだ」と私に説明をしてきた。CGを作成して、表紙にも凝り、宝船を宇宙に浮かばせて遊んだり、社員がまず手に取って読んでもらうよう、コラムを設けたりした。25年前から(もっと前からかもしれないが)東芝を含めて「隣は何をする人ぞ」という組織づくりが、大企業中心に流行った。

それは、各部が儲けの部に寄りかからないよう、自らで稼ぐ、利益を出すという気風醸成を作った。しかもパソコンで経理的に一元管理できて、どこの分野が幾ら今月利益を出しているのか、一目瞭然。責任者は自分の出世のバロメーターである実績作りに精を出すということになる。当然、そこに無理な数字の付け加えやマイナス情報隠しがあったとも想像される。本業の仕事より楽しい権力闘争が始まる。

売上・経費・利益・損金これに回収予定日がわかれば、大方の監査法人は正しい経理監査ができそうなものだが、気づいても東芝に遠慮して指摘をしてきてこなかったかもしれず、会計事務所の責任も重い。東芝は元々三井グループなので三井住友から多くの融資を受けるだろうけど、金額が2000億円とはケタが違う。しかも多年にわたる商慣行なのだから、その会計や考え方が社員に染みついている。

お金を横領したとかはっきりした犯罪ではないので、よけいに面倒な事件だ。果たして事件なのかとも思う。「不正な操作って何?」。デパートでよくやるのが、今月の売上はこのくらいにして、大きいこの売り上げは来月に回すとか、私も営業時代、来月の数字が苦しいから今月の印刷物・制作費の売上は来月へ・・はよくやった。個人ではせいぜい数百万単位だ。

原発、エレベーター、ITソリューシン、防衛庁の無線レーダー、モーター、医療機器、公共事業インフラ整備、カザフスタンのウラン鉱も買収しているはずだ。作れないものはないほどの技術者集団だ。東芝の女子社員が私に「東芝はいいものをつくるんだけど、売るのが下手でね。」とこぼしていた。他社もいいものを作るんだけどね。社員もトップカンパニー意識が強く、同業他社がすでにしているイベント協賛は100%乗ってこない。三菱グループの社員にもそれは感じた。国を支えているというプライドなんだけど、実は国や地方自治体に基本の部分は支えてもらっていたのでは・・というのが率直な感想だ。

  1. 数字の世界は深読みしなければ分からない。それほど「数字マジック」の使い手のテクニックは見事だ。なにしろ当事者たちが気づかないうちに大変な事態になっていたりするからだ。もちろんトップと一部役員や経理部門は承知の上だろうが、対外的な外面で平静を装い、裏では火種のもみ消しに躍起になっていても、やがて「火の無いところに煙は立たぬ」のコトワザ通りに情報は針の穴から表面化してしまう。小規模企業なら分かりやすいが大企業ほど長年社会的信頼の上に築き上げられて来たからショックも大きい。まさかあの会社が?と疑う例を僕達はたくさん見てきた。前職でも粉飾決算があったが社員は知らずに結果倒産。労働組合員の支社社員たちにはいつも「どんな会社でも、いつどうなるかは分からない。組合員も会社が無くなれば失業者になるからね・・・」と言っていたが、その日が来るまで彼ら彼女らには理解できなかったようだ。青春時代に大阪本社のカネボウには大変お世話になったが時代変化と言えど、まさかあのカネボウが?こんな事にと僕も驚いた一人だった。

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