自分の子どもたちを寝かせるために、中谷宇吉郎は、布団に入った子供たちに日本昔話を朗読していたのだが、短い話ではなかなか寝付かない。そこで考えたのは『昔話を引っ張って長くすることである』。この浦島太郎は全44p。藤城清治さんの素晴らしい影絵が31枚挿入され、影絵をみるだけで楽しくなる。

御存じのように浦島太郎は子亀を助けて親亀の背中に乗って竜宮城へ行くのだが、そこで毎日毎日ごちそうと遊びで明け暮れる。『ところがね、どんなおいしい御馳走でも、毎日たべていると、だんだんあきて来るのね。それに遊ぶのも、時々遊ぶんなら面白いけど、毎日毎日朝から晩まで遊んでいると何だか遊ぶのもだんだんつまらなく来てね。浦島さんは、時々昔の一人ぽっちで、一生懸命お魚をとって働いていた頃のことがなつかしくなって来たんだって。・・・』。これを読んでいて、人間、やっぱり何でも飽きがくるものだと思う(筆者には縁遠い世界だが)。

乙姫様も浦島太郎が竜宮城の暮らしにだんだん飽きてくるのに気付いて、浦島太郎を亀の背中に乗せて元住んでいた浜辺に戻す。正味3か月の竜宮城滞在であった。しかし、自分の家はなく、小さな松の木も大木になっていて、知る人は誰もいない。実は竜宮城での1カ月は100年であった。ということは300年後の浜辺に漂着したと同じ。浦島太郎は開けるなと言われた玉手箱を覗いてしまう。中から白い煙が出てきてあっという間にお爺さんになった。この後、おじいさんはどうなったのか。腰を曲げてまた浜辺で釣り糸を垂らして魚釣りに挑まないと食べていけない。再度、苛められる亀を探してもそれを買うお金はないとしたら、次のストーリーには発展しない。中谷宇吉郎の『浦島太郎』にも乙姫様から生活費が出たとは書いてはいない。夢のない私の読み方で申し訳ない気もするが、現実の暮らしを考慮しながら読む情けない私だが、寝る前に聞かせる話ならリアリティが有り過ぎ、突然、子供たちの目が輝きだす危険性もあるからこれでいいのかもしれない。

 

  1. 昔話にしてはグローバルですよね。海外渡航(密航)なんですからね。大海亀かどうか?は疑問ですが、シケで小舟が難破して漂流の挙句に朝鮮半島に漂着したのでしょうね。拉致では無いにしても、最初誰に助けられたのかは不明ですが、乙姫様と思ったのは、実はチマチョゴリで着飾った妓生ではなかったのでしょうか。竜宮城と思ったのは、そんな豪華な建物だったのでしょうね。それにしても助けられた上に、豪華接待の挙句、帰りにはお土産まで貰うとは人徳のある人ですね。見返りに日本語でも教えていたのでしょうか?。それとも日本式の漁の方法でも伝授したのでしょうか?手ぶらでは?考えられない「オ・モ・テ・ナ・シ・」ですね。現在の日韓や北との関係からは想像がつきませんね。

    • この伝説、現在の福井県が発祥ではなかったかな?となれば朝鮮半島との往復の可能性、大いにありますね。というより原型の話が半島から来た可能性もあるので、調べると出てくることも考えられてるし、世界中にこの手の昔話が転がってるかも。

  2. 時代の変化とともに子供たちとの接し方も違ってきましたね。絵本を読み聞かせて寝かしつける事も少なくなっているようです。ネット時代で子供たちの方が、遥かに先を行っているからです。友だち同士でLINEの電話で連絡をしながらお互いに「おやすみ」と言ってから就寝します。昔話を読み聞かせれば「なぜ?どうして?」と突っ込まれそうです。

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