煮詰まる・・・・・! (コロナ前の記事)
煮詰まる・・・!
養老孟司さんの最新著『半分生きて、半分死んでいる』(平成とは、すべてが煮詰まった時代)を読んでいると、『煮詰まる』関係に満ちた現代社会の様相が鮮やかに照らされる。
実体経済に発展の余地なく、金利ゼロ政策が続く経済が煮詰まる。商品開発もアルコール抜きのビール、カフエイン抜きのコーヒー、煙の出ないタバコ、趣向品の形は残して実体が消えるものが商品になる。今後、ヒットする商品開発のヒントがここにあるかもしれないが、煮詰まっている。
現代人の脳も煮詰まっている。平均1350gの脳を訂正してくれる自然(外界)を排除した空間に身を置く時間が長いから(冷暖房の部屋、人工照明、トイレは水洗、風も吹かない、日も照らない、見るのはパソコン画面やスマホ、テレビで光チラチラ空間。大脳は煮詰まっている。それを訂正してくれるのが下界(自然)で感覚を通してとらえる営みしかない。
人口減少と高齢化も煮詰まっている。派遣と正社員の同居する職場も煮詰まっている。外交に目を転じても日本と韓国、日本と中国、日本とアメリカ、日本とロシア、外交のキープレイヤーになる位置に日本はいながら遠慮と高慢で煮詰まっている。引きこもりの男女も部屋で煮詰まっている。ひとり暮らしの老人も煮詰まってぞろぞろ街中へ繰り出す。夫婦関係も煮詰まり気味で、できるだけ自分の空間と時間をそれぞれ確保しようとする。
都市に住む人や毎日、パソコンやスマホいじりに時間を使う人に目や大脳の疲れが襲う。ときどき入る肉体労働は筋肉は痛くはなるが気持ちがいい。動けるうちは動くと自然が回復してくる。人間の意思などどこ吹く風で自然は自由に生きている。自然の中でのお邪魔虫が人間という動物。基本はここにしかない。動物としての人間。基本は水と空気と食べ物を確保するである。
きょう現在、南アフリカの水不足、ベネズエラの飢え。ベネズエラはチャベス大統領時代は世界一の原油埋蔵量を誇り、原油価格の高騰もあって、豊かな国であった。富を求めて都市に人口が集まり、官僚・軍人の汚職跋扈、原油売れず、中国とロシアから金を借りるが返せなくなる(デフォルトの危機)、都市で飢えも発生、食料品がないし買えないから国外(コロンビアとブラジルへ逃亡する国民)。都市内の犬と猫は食べられ、動物園の動物も餓死、大統領はウサギを食用として飼うよう提案。そういう国の状況であっても密林の中で、非文明的な採集民族がきっと生き延びているだろう。そこは『煮詰まらない』エリアだから。ゆっくり、ゆったり、食べ物を採集したら昼寝する、川で水を汲み魚や動物を最小限捕獲して食べる。電波の届かない所だから、位置情報や携帯の電波も使えない。
しかし、使える都会に住む人間から、政治の失敗や災害発生すれば飢えが発生して流民になる危険は世界中の都市民に共通である。SNSから『SOS』が発信される。お金があっても水や食糧を買えない時代が迫ってる気もするのである。