イエスキリストの同時代人に、テュアナのアポロニウスという男がいた。イエスより若かったが、彼のカルト(宗教)は死者を甦らせ,奇跡を起こし、悪霊を追い払い、慈悲を説き、死んでから復活したとされる。イエスとは違って、アポロニウスは近東全域で名を知られたピタゴラス学派の知識人だった。その生まれも予言され(イエスそっくり)、禁欲を誓い、葡萄酒も飲まず、どこから見てもパレスチナの大工(イエス)より洗練されていた。ローマの元老院の娘を甦らせたりしてローマ領の外まで名声を博していた。アポロニウスはしかし、その後、東に向かって行き消息が途絶えた。彼のカルトがさらに普及するには、しかし、横にギリシャ人の年代記作者がいただけ。キリスト教を体系化して聖書を編んだパウロのような存在がいなかった。パウロは鋭かったので、イエスのカルト(キリスト教)は貧しい人や寄る辺ない人に狙いを定めて、富や権力、一夫多妻を非難して信者を増やすマーケッティングをしたのである。何を言いたいのかというと、オリジナルな人間だと思ったり、オリジナルな思考だと思っても、初めて聞くアイディアであっても同時代に同じような考え方をする、行動する複数の人たちが必ずいるという話なのだ。そして広がるためには、その横にサポートする別な感覚を持った伴走者8(オルガナオザー)が必要だということだ。どうしてこういうことが歴史の中で繰り返し起きるのか?もちろん現代でも。たぶん、文字として残されてはいない人物、歴史の闇に消えた人々も、発明や発見の大きな駆動に寄与してたはず。そしてその時代を牽引してきたはずで、見えない処で日夜動き回っている。数年後、それは表面に出てくるかもしれない。ということは21世紀のイエスもあちこちで奇跡を起こしては信者を増やしているかもしれない。このことは宗教に限らず、テクノロジーに従事する人、様々な研究家、起業家、産業についてもいえることで、HONDAやSONYも名コンビで創業をしてきた。

この文章は『進化は万能である』(早川書房)マット・リドレーの338pにあった。読んでてびっくりしたので孫引きした次第だ。

  1. ヘターリスト。

    カリスマ性の有る人と、その人を支える人は必ず居ますね。支える人は表舞台には出ませんが、その働きぶりは大変なものです。昨日亡くなられた筒美京平氏も、作曲家として文字では何度か見た記憶はありますが、表には出ず、主役はあくまで歌手だと言う考えを貫きましたね。今になってみれば、ヒットソングの殆どが彼の作品だったと言う事に気づきました。彼の考えは、歌手のカリスマ性を引き出す役割を担っていたのでしょうね。生涯3000曲ほどもの作品を歌手に提供したのですから想像を絶します。

    • 表に出たい人、それを支える人ってどの世界にもいて筒美京平氏の木綿のハンカチーフは何回もうたいましたよ。3000曲とは凄い。縁の下の力持ちと言いましたが、一番大事な部分ですね。頭が下がります。

  2. 人間ですから、同じ思考や行動をする事はあるでしょうね。たかが人間、されど人間。自分だけが特別では無いとも言えますね。群れるのもその表れかも知れません。似通った趣味や考えの群れ(グループ化)ですね。今ではSNSだってグループ化ですね。群れれば安心なのでしょうね。結局は皆、真似て同じ事をやっているだけですね。残念ながらそこにオリジナルなど存在しませんね。

    • オリジナルってなんでしょうね。あるようでない世界かもしれません。組み合わせが新鮮な場合、オリジナリティー出ますね。違う世界をつなげる行為や発言ですが、新鮮さを感じます。群れの中でもしゃきっとした人はいるのでそういう人に注目したいです。別な何かを見ている人です。

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