小谷野敦著「友達がいないということ」(ちくまプリマー新書)を読んでいたら、昔、古典の授業で習った兼好法師「徒然草」のなかで、有名な友達にして悪い人はこういう人だと述べた文章が引用されていて、古典嫌いの私であったが(蓄膿症の漢文教師の話に眠くなった)、この部分は印象に残っている。

「友とするに悪(わろ)き者、七つ、有り。一つには、高く、やんごとなき人。二つには若き人。三つには、病(やまい)無く、身強き人。四つには酒を好む人。五つには、猛く,勇める兵(つわもの)。六つには、空言(そらごと)する人。七つには欲深き人。良き友三つ有り。一つには、物くれる友。二つには医師(くすし)。三つには知恵ある友」(第117段)

偉くなって頂上を極めたような人は親身に相談になかなか乗ってくれないもの。若い人も経験不足で頼りない。病気をしたことがない心身屈強な人も病人の気持ちを理解できず、意外に冷たい人間だ。酒飲みも避けた方がいい。猛々しく戦や戦いを好む人もだめ。嘘つきはもってのほか。欲望が底知れない人も避けなさい。

知人はたくさんいても、その中で「友達」は誰となると答えにくいもので、こちらが友人と思っていても相手方は、そうでもないという経験は何回もあるから難しい。しかし、1年に1回会っても、すぐに昔の感覚で入れる友もいるから、こちらのほうが友達に近い気もするがどうだろうか。一見、知り合いが多そうでも、利害が背後にあって無理して付き合ってる場合も現役時代は多かったから、内実は早く一人になりたいのが本音であったりする。50代の半ばに大学の食堂に昼ご飯を食べに行った。窓際の席が一列、外に向かっておひとり様席であったのにはびっくりした。一人で食べるのに4人席に座って一人で食べる習慣であった私の学生時代と違い驚いた。

大手の広告代理店やテレビ局になぜあんなに体育会系の社員が多いのか?兼好法師に言わせると三番目と五つ目。病なく、身強き人、猛(たけ)く勇める兵(つわもの)、さらに酒飲みも多いときているから、友として悪き人に入るかもしれない。私の経験から半分当たっているし、六つ目の空言(そらごと)も多い。

最後に友達として良き人だが、1997年北海道拓殖銀行が倒産したときに、その張本人として名指しされた大阪の焼き鳥屋から這い上がった「五えんや」中岡信栄社長へ2000億円の融資をした拓銀系列のノンバンクエスコリース。中岡はとにかく金をばらまく。兼好法師によれば物くれる人だから良き人になる。ホテルのボーイにもチップで5万円、新聞記者へも50万円、芸能人へも一度に300万円、500万円、1000万円。もちろん政治家へも金をばらまいた。たくぎん倒産時、5年間で350億円の使途不明金が発生している。不思議なのは、お金をばらまいて反対給付を求めていない点である。これだけするから○○をしてくれとは言ってない。ぽんぽんお金をくれる。配ったのはみんな拓銀の金である。『中岡は金をくれると噂されて多くの人が寄ってきた』。筆者の横に彼みたいな人がいて「100万円上げる」と言われたら迷いながらもらってしまうかもしれない。だって兼好法師が良き友の第一条に書いてあるから。

 
  1. くれる人は身近には見当たりませんが、せめてロトでも当たってくれればと願うばかりです。雑誌広告等を見ると「老後への準備」とかの文字が躍っていますが、我すでに遅しで、もうとっくに老後に突入してしまっています。不思議に思うのは、一体?誰に向かって言っているのか?もしかして若者が既に老後を準備しているとしたら驚きですね。独自に蓄えるにはケチ学を貫かなければ不可能でしょうから、親など親族を頼る以外には、毎日のケチケチ生活が必要ですから、他人に施すなんてもってのほかと言う事で自分の人生の為だけに貯め込んで生き抜くと言う事ですね。ボランティアなんて、募金なんて、別の世界の事とばかりに。もちろん、人に御馳走したり、お金を貸したり、物をあげたりなど考えられないですから、人生目標を立てて着実に歩む人などは悪しき人ですね。しかし、そんな人に限って他人からタダで物を貰いたがるものですよね。

    • ものくれる人はいました。親と義理の姉でした。ものというよりお金をくれました。預貯金ゼロで結婚したので式も挙げらません。仕方なく出してもらった情けない私でした。29歳。ずいぶんどちらの親からも自宅の購入や教育費も世話になったので、もらったものはどこかで返そうと額は少ないですが寄附をしています。週刊誌の見出しは『老後とおひとり様暮らし・孤立死・死ぬ前にやっておくこと』特集で、60代や70代向けの記事が溢れています。うんざりします。一方でその世代の財産争い、その子供同士の争いが絶えることがありません。物を上げるより、ただでもらうことを願う人たちが圧倒的です。ケチな性格はどこかで散在してるかもしれません。しかし、けちな人には人はなつきません。それは覚悟した方がいいですね。

  2. 良き友よりも、むしろ悪しき友の方が直ぐに思いつくものですね。痛い目に合ったり、不愉快になったり、呆れたり、挙句の果てには付き合いたくない友となっていますね。しかし、考えてみれば、そんな悪しき友も最初からそうでは無かったのでは無いでしょうか。何か引き金になった出来事が有ったに違いありません。幼い時の超貧乏暮らしとか、親の借金を見ていたとか、家庭不和とか?知らず知らずのうちに生き方を植え付けられたのかも知れません。良き友は欲しいですが、気前の良さだけなら未だしも、その裏によからぬ目的など隠されていないかも要注意ですね。公務員たちの接待問題も取りざたされていますが、タダに弱いのは高学歴と関係ないみたいですね。

    • 学歴とタダに弱いは全く関係ないですね。悪しき友がすぐに思い浮かぶ広告マンさんですが、私の場合、お金を貸してくれと言われたのが3人くらいで誰にも貸していないので寄ってきません。競馬に凝る人、酒癖の悪い人でしたからわかりやすかったです。公務員が民間人を接待できる、それも自前でするとなれば税金の払い甲斐もあるというもの。私の今日の暮らしを支えてくれる税金を納めてくれて民間の人たちありがとうと1か月2万円を限度に使える仕組み、その額に応じて表彰状を上げるという仕組みです。こんなの絶対にありえないですね。

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