「悪い奴ももっと悪い奴が出てくるとキレイに見えるものだ」(リア王 シェイクスピア)
年老いてきたリア王は3人の娘に自分の所領を与えることにした。自分の老後の面倒をどれだけ見てくれるか聞いてから財産分けをしようとした。口下手な3女は王の満足する返答ができず除外されフランス王に嫁ぐ。長女と次女が父への孝行を約束し、1か月づつ交代で面倒を見ることにした。まずは長女のところで、リア王は100人の部下を持たされるが、かつての王であるがゆえにあれこれ口出し、さらに部下たちの飲み食いどんちゃん騒ぎに長女は嫌気。部下を50人に減らすよう王へ進言。王は今度は次女の城に行くが、彼女は部下を25人にしてくれと言う。財産をもらう前の私にはあんなに忠誠と孝行を誓った次女が!と嘆く。長女よりひどい仕打ちだと!そこでこの1句「悪い奴も、もっと悪い奴が出てくると、きれいに見えるものだ」。(第二幕 第3場)
ここまでは誰でも知っているリア王だが、今回、久々に読んでみて「グロスター伯爵」というリア王の側近がいる。彼には本妻の息子と別な女性との間にできた息子がいるが、腹違いの息子が本妻の息子と父親へ復讐を企てて、両人を荒野へ追い出すことに成功する話がある。復讐というより「男の嫉妬」に近い。男の嫉妬は国をも亡ぼすという俚諺どおりだ。娘に裏切られるリア王、腹違いの息子に裏切られるグロスター。両目を失ったグロスター伯爵。英文学の教師は、授業で3人娘の話ばかりしていたが、むしろこの男のほうの話が現実社会で多いなあと思った次第だ。愛情をかけられる人、大事にされる人と袖にされる人,企業や役所での出世争い、アカデミーでの相変わらず象牙の塔で、嫉妬は民間企業の比ではないほどヒドイものだ。うつ病についての講演を頼んだ助教授が自身の属する部の教授選挙に負けて、他学部の教授にはなったが、同時に鬱的な人間に変身してしまって、再度、講演を頼みに行ったが冷たかった。教授の次は名誉教授だが、これには1銭の報酬もない。が、他大学へ転職するとき思う存分、その肩書が死ぬまで使える神通力がある。出た学校や勤めた企業がなんであったか、65歳を過ぎてもまだまだ世間の会話で。特に町内会でも頻繁に交わされる。ずるずる引きづる過去の亡霊。リア王の話がどこかに飛んでしまって申し訳ないブログでした。