長屋

江戸深川の長屋 ウィキペディアより

きのうで150本目のブログを迎え、長屋のご隠居が八五郎と熊五郎を呼び出し、最近の事件を教えてくれということになった。

物知りで通るご隠居も、近年の電気紙芝居(テレビ)や糸の見えない電話(スマホ)に縁遠くて、どうも世の中がつかめない。ソフトなければ只の箱(パソコンというらしい)や厚い板の表面を指で撫でて、ピッコピコ動かしているのが気になるらしい。そこで八っつあんと熊さんに雑談をしてくれと申し入れたわけである。何でも知りたがりのご隠居だ。

ご隠居「わたしゃ、もう80歳を過ぎて、隣に住む作家志望のおばあさんは同じ歳なのにi-Padなるものを使っていると言っていたが、一体、何をしているのか?」

八つっあん「あの婆さんは、ワープロが出るとすぐに買って使いこなすし、新しい物が出たらすぐに買って使いこなす器用な人だ。なんでもお茶の水大学を出て、テレビ局でドラマのシナリオを書いていたらしい。まったく多才な人だね」

熊さん「みんながああいうことができればいいんだが・・ご隠居もね」

ご隠居「しかし、あれを動かして働いて生きていけるのかね。銭はどうやって稼ぐんだ?」

熊さん「働きは、何も米作ったり、傘を張ったり、屋根瓦を焼いたり葺いたりするだけじゃ、いまはないんだ」

八つっん「何でも、体を動かして汗をかくより、机に座って頭に汗をかくほうが銭を取ると言うじゃないか?いまの世の中、丸投げするのが一番もうかると聞いているが・・・」

熊さん「汗をかく量より、株式の掲示板をみたり、指で金を動かして売ったり買ったりした方が儲かる人もいると聞いている。毎日、20代の億マン長者が出ているらしいぞ。八や俺のように大工道具を抱えて飛び回る仕事は、自分の家1軒さえ建てられないで死んでいくだけさ。長屋から出られない運命だ」

八つっあん「仕事請負いというか、ピンハネ稼業がもうけているらしいぞ。人を派遣する仕事。山口組の港湾労働者派遣とおんなじことをしやがって・・」

熊さん「そういう会社が高い家賃のビルに立派な机を置いてられるんだから、どんだけ稼いでいるか。この法律を推し進めた竹中平蔵というやつ、いまは派遣大手のパソナ会長に居座ってるから笑いが止まらないわ」

ご隠居「そうか、いい話を聞いた。その男、江戸時代なら市中引き回しの刑で石投げられる輩だね。ひどい世間になってしまって嘆かわしい。そういう男はペラペラお喋りばかりしないかい。後ろめたい男はよく喋るから。」

熊さん「早口でまくしたてるらしいね。詐欺師の素養があるね。」

八つっあん「派遣といえば、はじめて、長屋の住民が金を出して勉強会をやったが、弁士が派遣の会社を始めた大工の棟梁で、これをやったら毎月毎月、仕事したい人の登録は来るし、会社から人を送ってくれと依頼がきて、30%はピンハネできて、本業なんてやってられないって言ってたね」

ご隠居「悪銭、身につかずだ。いずれ悪に手を染めるか、とんでもないものを失うよ。」

  1. 江戸の闇太郎なら武家屋敷から悪銭小判の入った重い千両箱担いで屋根伝いに逃げて困っている長屋の玄関先に投げ込んで貧富の差をなくすために一種の社会貢献をしたが、現代の闇太郎はネコババするから貧富の格差は益々広がっている。「実業家」ではなく「虚業家」が幅を利かせているから不思議だ。年金暮らしのご隠居と資産運用で財布の勘定ばかりしているご隠居もいて、現代ではご隠居の格差も大きい。でも大抵、現代も世の中はハッつあん、クマさんタイプの人たちに支えられている。僕たちの仕事も気が付けば「虚業」に近い。

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