ドレの昔話(原作 シャルル・ベロー) 谷口江里也(エリア)翻案
フランスのシャルル・ペロー(1628年~1703年)の昔話を読んでみた。「姫」「赤頭巾ちゃん」「あおひげ」「長靴をはいたネコ」「シンデレラ」「巻き毛のリケ」「親指トム」を谷口江里也(エリア)さんの翻案とギュスターヴ・ドレ(1832~1883年)の挿画(さしえ)で書かれてある。
たとえばこうだ。お父さんがお母さんを亡くして2度目の結婚をし、連れ子と継母にいじめられるシンデレラ物語。声に出して読んでみると子供は大喜びする。
「新しいお母さまはクリスチィーヌ(シンデレラ)を小間使いのように働かせ、食事の用意も家の掃除も、みんなクリスティーヌにやらせるのでした。この家は、ある程度裕福な家でしたから、お手伝いさんを雇おうと思えば雇えないことはなかったのですが、新しいお母さまは、そんなことをするくらいなら、自分の娘たちの服を仕立てたほうがましだと、暖炉の灰の後始末まで、自分たちではやらずに、クリスティーヌにやらせるのでした。そんなわけでクリスティーヌの服は灰で汚れてしまい、それを見た二人の娘が、あるときクリスティーヌのことを、灰だらけという意味の言葉をもじって≪シンデレラ≫と呼んでからかい、それからというもの、クリスティーヌは新しいお母さまと二人の娘からシンデレラと呼ばれるようになってしまったのです。」
目の前に小さな子供を置いて、聞かせる口調の翻案なので、そしてとても品のある日本語で書かれて、ついつい電車の中で読んでしまった。「灰だらけ」の言葉のもじりがシンデレラの起源だったとは!知らなかった。7つのお話が全編、これ、声に出して読んで、気持ちがいい。子供に聞かせるために、句読点や、読み手の呼吸も考えた翻案で感動してしまった。
話のはじめは全部「むかしむかしあるところに」で始まり、どきどきする。子供に帰った気分だ。そして挿絵がドレだ。ダンテの「神曲」を開いたとき、たまたま版画(?)がすさまじいリアリティで書かれてありびっくりした。この本も表紙の絵に引き寄せられて借りた。ペラペラめくると同じタッチ。不思議な巡り合わせだ。そしてお話が、森の妖精や小人、鬼たち、森の風景、お殿様、貧しいキコリ、オオカミ、ネコやネズミ、醜さの中の美しさ、妖精であっても老いた妖精の悲哀など、ヨーロッパにキリスト教が入る前のケルト的な雰囲気が漂っている。
ドレの挿画の入ったの谷口江里也さんの翻案本は、あと新約聖書、旧約聖書、失楽園、神曲と4作品がある。すべて宝島社から出ている。