池田清彦「この世はウソでできている」(新潮社)に京都大学霊長類学者の山極寿一教授が人類の戦争の原因を3つ。「所有」「過剰な愛」「言葉」。調べるとこの3つが原因で起きているという。教授には分析が正しくてもそれを止める方法を提示してほしいと思った。永遠に見つからないか?あればとっくに処方しているよね。

10代末から20代初めにかけてジョージ・オーウェルを読んでいたころ、オーエルと同じくスペイン市民戦争を取材していたアーサー・ケストラーという人の「機械の中の幽霊」という本の中に「ホモサピエンスの祖先であるオーストラロピテクスの頭骸骨を調べると、鈍器で殴られた穴があり、同類からの攻撃で殺された模様」とかなんとかの文に出会って強いショックを覚えた記憶が蘇ってきた。その屍累々が人類の歴史に見えてきた瞬間だった。

薄ぼんやりと、人間の歴史は「戦争の無い時代はないな」と思ってる人も多く、18世紀以降のアメリカの歴史で戦争をしていない時期を探すのが大変なくらいだ。第二次世界大戦後も国の外へ行ってドンパチをしている。国内での戦争は、イギリスとの独立戦争と南北戦争、インディアン虐殺、カリフォルニアをメキシコから略奪する戦い。そしてスペインとの戦争、原爆を日本へ落とした後の38度線を作ることになって、日本の経済成長を大躍進させた朝鮮戦争、ベトナム戦争。アフガニスタン空爆、イラク進軍、そしてシリア空爆。ロシアもアフガニスタン侵略やチェチェエン虐殺、中国も新疆・ウィグル族圧殺やチベット仏教徒虐殺、ミャンマーでの仏教徒による少数民族のイスラム教徒ロヒンギャ虐殺、独立はしたけれど部族間の殺し合いが収まらない南スーダン。枚挙にいとまがない。

先日、図書館でこれまで人類が行って記録にあるすべての戦争を原因と内容・結果を含めた戦争の百科事典を発見した。600ページはある大著だ。血だらけの本だ。BC1700年ヒッタイトのアナトリア征服から始まり、1984年のシーク教徒ゴールデン・テンプルの包囲(どんな事件か?)に終わる。「世界戦争事典」(ジョージ・C・コーン河出書房 鈴木主悦訳)

戦争の原因の一つが「所有」というのはよくわかると思う。資源と女の金の取り合い。「過剰な愛」は肉親愛や郷土愛、民族愛か?「言葉」という原因も大きい。コミュニケーションを取れない相手には排他的になりやすから。さらに「言葉」は煽る。広告業界でも、そのコピーで人を動かし、金を使わせ、他のメーカーや商店より差異を強調して、他を排除しようとする。ある意味で言葉の戦争、CMの戦争をしかけているようなものだ。

現在のロシアのウクライナ侵攻について、私はロシアの歴史に疎いので「ロシアの歴史」(ふくろうの本)で勉強を始めています。ついでに凄惨な「独ソ戦」(岩波新書)も並行して読み始めました。1952年生まれのプーチン。私より1歳年下である。

  1. ゼロ戦パイロットの弟。

    「西側の経済制裁は宣戦布告に等しい。幸いに未だ西側との戦争には至っては居ないが。」と世界に向けてメッセージするプーチン氏。報道規制と政府批判の民間人を捕らえるシーンも世界中に流れています。海外の報道機関もロシア国内での活動を禁止。ロシア国民すべてが現在の政府と同じ考えとは思えないですし、むしろ正反対の国民の方が多いのでは。権力を振りかざして独走する姿はまるで独裁者ですね。どこの国も同じかも知れませんが、トップは国民の代表者のはずが、いつしか国を個人の私有物のように勘違いしてしまうんですね。しかしいくら情報統制をしたとしても現代はスマホからSNSで世界中に実態が明かされるわけですから、一般人がすべて戦場カメラマンなわけです。可哀そうなのは攻撃にさらされている一般人と、命令に従いそれを狙撃したり住宅などを爆破したりする若い兵士たちですね。待っているのは死か生き延びたとしても一生トラウマとなって悪夢にさいなまれる事でしょうね。我々の親や兄たちのように。

    • ロシアナショナリズムが一方に強くあって、陰ながらプーチン支持者も相当数いるはずです。旧ソ連時代の生き方・考え方から抜けられない人々です。経済制裁によってプーチンを支持する市民が困窮化してくると「辞めろプーチン」に変わる、または軍部が離反することを西側は狙っているわけです。ウクライナには山がなくて見渡す限り平原です。ゲリラといっても都市の中での殺し合いになって、コソボやセルビアの町のようにスナイパー戦になります。笑っているのはアメリカです。イギリスです。アングロサクソン系のオイル企業が大儲けしますから。ロシアもウクライナも貧しい貧しい国同士です。戦争が長引けば長引くほど、オイル企業は収入を増やす。他人の血が流されればロシアからの原油が止まるので、世界の世論も反ロシアなので儲け放題です。日本の商社にもそれが言えるので、全体でみる視点も必要かなと思います。他人の不幸で潤う経済も一方にあるという現実です。ルーブルを資源決済では使えないようにされたのは致命的でした。フランスは原発で電力をドイツにどんどん売れるし、ウクライナからのパイプラインに依存するドイツ(エネルギーの35%ロシアから)は、国防費を増やす政策に梶を切り出したり、中立国のフィンランドがNATOに入りたがってきたり欧州は激変です。1945年以来です。しかし、この中で、北京オリンピックを開催している異様さ、メダルを取って歓喜している選手たち。いくらパラリンピックとはいえ尋常ではありません。

  2. おっしゃる通り。戦争の原因の研究などより、戦争を起こさない方法や短期終息の方法の研究をして欲しいものですね。結果を分析して物を言う事なら間違いは無いでしょうが、結果論よりも、正しい予測の方が大切ですね。世界平和のための研究なら大いに歓迎です。今は、コロナ禍もウクライナの状況にも、誰もがなすすべもなく手をこまねいているだけで、ただ終息を祈る事しか出来ないのが情けない現実です。この祈りも実際に叶えられれば良いのですが、これ以上悪い方向に行きませんように。

    • 戦争は経済的には割に合わないことが明確になっています。戦争に勝っても国内経済は、軍事費で大赤字が待ってます。それがわかっていても戦争をする。図書館に貸し出し禁止図書で「戦争辞典」があります。これまでしてきた人類の戦争を網羅した辞典です。紀元前から始まりますが、農業の始まりと言語の発達から、格差が集団で生じだしてから「戦争」「殺し合い」が生じたという人類学者や文明史家が多くなりました。貧富が出てきて,富める者は文化へ向かいます。貧しい者は奴隷状態になります。フランス文化に憧れたロシ貴族と農奴の同時併存。戦争を予防する措置の第一は、貧乏人を減らすこと、穏やかな家庭を増やすこと。満州戦争(事変と言い換えている)は、国内で増えた人々を食べさせる食料不足で棄民した政策です。彼らをロシアとの境界線に立てて,盾としてつかったわけです。広大な土地を与えると言って。貧しいと自分で判断することができなくなります。情報の貧困にも陥りますから「大勢の意見に自分も合わせてしがちです」。権力は必ず多様な意見が出ないよう、情報統制を始めます。またはプロバガンタに向かいます。意見をある方向へ向かわせようとします。自分の意見は自分の意見ではないように思うときもありますね。

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