コレクション癖とカラスとケチ
先だってのカラスの続き。
小松左京「恋愛博物館」「文春文庫」という名著があって、恋に悩む諸兄には最適の指南書だと思うが、この中に「ケチな男との交際はやめるべきか」という問いに答えた小松左京の返事の中に引用されていたのが、イソップのカラス談義。
貯蓄好きの国民を分析しつつ「カラスが石を意味もなくためこむというのは昔から知られている。イソップの話に、甕の底の水を飲むためにカラスが石をたくさんくわえこんで飲んだというのがある。これはおそらくその観察例に基づくものだろう。人間のコレクション癖も、相当子供のときからあって、彼らが引きだしの中に(宝物)をためこんでいるのを見てもわかる。ためこむというのはかつて進化的に意味のあった痕跡がほの見えているものもあるし、営巣活動と密接につながっているとも思える。しかし、コレクションの面白い所は、現在においてなんの意味もなく、全く個人的な喜びである点であろう。日本人の貯蓄好きも分析してみればたいへん原始的な衝動につながるかもしれない」(115p)。
私の周りにも大リーグの帽子を集めていたり、コイン収集家、蛇腹カメラ収集、バラを100本は庭に植えて、新品種を遠く英国から通販で購買、1本1本花名と写真をアルバムにして、オープンガーデンをしている元役人、ガレージに父親時代からの様々な大工道具を揃えて道具磨きをしている人、探せばまだまだいる。その空間にいると、自然におっとり顔になっている。しかし、それが金銭面の貯蓄につながっているかというと、どうでしょう?お金の使い方は自分の趣味につぎ込むので、他人との交際費を極力減らすべく努力をしているかもしれない。
小松左京の回答はお金にケチであっても「男のケチはタコやカラスの”ためこみ”と違って、何か目的を持っていることが多い。そこのところをしっかりと見極めないといけない。金の使い方を見ていると、その人の文化的洗練の度合いがわかる。」と女性にアドバイス。お金の使い方は、後々の人間関係に大きな影響を及ぼすので注意しましょう。無理は禁物、タカリも禁物、だからといっていつも割り勘は味気ない。社長クラスが500円のコーヒーに領収書を取ってるのもみっともない。
酔って、ここのスナックは俺が奢ると言って、次の日「金貸してくれないか」と言われたこともある。ただ、言えるのは、付き合いは誰とであっても金がかかるから、小遣いを多く寄こせ・・・!かも。そうなら深刻に悩む必要はないね。夫婦間の問題に収斂してしまう。なーんだ。
匿名
他の広告代理店のデザイナー仲間に、こんなのが居た。彼の実家は貧乏な家だったので同情して、地下街などで会うたびにお茶や食事代を全部出してあげていた。僕がお金持ちではなく普通のサラリーマンでローンなどの借金もしていたが何故か?彼からは割り勘などの様子も微塵もなかった。或る日、また地下街の書店近くでバッタリ会った時の事だ。「1000円貸してくれないか?」。「どうした?」。「ジオラマのいい本があるんだけど今持ち合わせが無いのさ」。「ああ、いいよ」。と貸した切り1000円はついに戻って来なかった。或る日クルまで出勤途中の踏み切りで偶然にも横に自転車の彼が並んだ。「どこから?」。「新川からさ」。新川は都心まで20km以上ある。さすがに倹約家だなと。しばらくする今度は町の中を皮ジャン着た彼がバイクで走っていた。大分余裕が出来たのかと。しかしウワサでは社内でもド・ケチで通っているらしい。例えば社内では「タバコ一本恵んでくれないか?」と口に一本、両耳に二本挟んで平然と立ち去ったり、社員のお土産で回ってきたお菓子の分配では幾つもポケットにしまいこみ「扶養家族が多いから」。などと目に余るらしい。またまた喫茶店に誘われてコーヒーをご馳走していると彼が「給料も安くてさ、貰っても右から左さ・・・」。「大変だね~ところで何にそんなにかかってるの?」。「うんアパートやら土地にね」。「??!!」。「アパート二軒やってるけど、税金やら土地買った返済やら・・・」。その日から、僕は彼とは付き合わなくなった。が、2~3年後またさっぽろ駅構内でバッタリ会ってしまった。「おぉ~っ!まだ広告やってるのか?」。と上から目線で、「俺はつまらない広告はやめて公園の設計やってるのさ」。と。そう言えばデザインのセンスはイマイチだったが、彼はジオラマのマニアだったのだ。公園の設計の提案などにはもってこいの趣味だったわけだ。でも、今度は誰にたかって生きているのだろうか?デザイナー仲間には一癖も二癖もあるのが多かった。某前職の会社で「10万円貸して欲しい貴方にしか頼める人が居ない」。と貸したが、後は知らん振りで返す様子が全く無い。そのうちに本人が辞めさせられる事になったので逃げられる寸前に僕も必死に取り返すシナリオを作って何とか振り込ませた。プロカメラマンにも居た。八ッセルブラッドなど高級機と高級レンズをローンで買い込み返済に困って「30万円貸して欲しい」と僕の居ない家に来たと電話があったので「あげるつもりで貸しなさい。但し返済期限を書いた書類二通その場で作ってハンを押してから貸しなさい」と。案の定返済期限になっても現れないので書面どおり催促も期限一ヶ月程過ぎたある休日、彼が現れベランダからお金を投げ込んで、お礼どころか啖呵を切って居なくなった。それでも一部の魂が残っていたのかと思ったが、どこかで借りてきてカッコつけた可能性も否定できない。僕もカメラに凝っていた時は10台ほどのカメラとプロ機材で300万yほど使った。また古いクルマを所有していた時は修理に年間100万以上の出費だった。マニアはお金がかかるが人に迷惑を掛けてはいけない。他人にも、そして家族にも。「反省!」
匿名
追記
前述のド・ケチン坊デザイナーはデザインの腕前はイマイチで「ジオラマ・マニア」、某前職でのもう一人のデザイナーは自称ディレクターで腕はそこそこだが「パチンコ・マニア」・「借金マニア」、自称プロ・カメラマンは腕はイマイチで「高級機マニア」、かつての僕は気が多くて「カメラ・マニア」・「古いクルマ・マニア」・「専門洋書マニア」だったが、今ではすっかり改心してはいるが、仕事と遊びは大好きで「仕事マニア」・「カラオケ・マニア」程度だ。