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読書家の友人から先日メールで「五色の虹」~満州建国大学卒業生たちの戦後~(三浦英之著 集英社)を読んだと知らされて、えっそんな大学名をはじめて聞いたと思い、さっそく図書館から借りてきて読んでみた。1938年5月開学、9期生まで1400人在籍。

日中戦争当時、満州に設立したエリート大学で定員150名で応募は2万人を超え、日本人、中国人、朝鮮人、ロシア人、モンゴル人の各民族から優れたエリートたちを選抜して、卒業まで学内では試験を行わず、給与も支給され、「言論の自由」という特権も与えられ、毎日世界情勢について喧々諤々を自由に交わしていた日本がはじめて作った世界大学である。もちろん日本の外交施策批判もOKである。

場所は満州帝国の首都、新京(長春)で南満州鉄道沿い。当時、五族協和という理念が日蓮宗徒・石原莞爾(関東軍作戦参謀)らによって提唱され、満州国を作り、満州国皇帝に清朝最後の皇帝溥儀を君臨させた。たった6年間の大学ではあったが、敗戦と当時にバラバラになった卒業生たちの行方を丹念に追った本だ。敗戦で大学を閉めるときに、すべての資料を残さないよう焼却させた。大学にはマルクスレーニン主義を学ぶための全集もあり、自由にそれを読んでいたし、眠るときは、同じ民族同士が並ばないよう配慮され、違う民族同士が相互理解を深め、それが未来にそれぞれの民族の指導者になったときに活かされるはずという理念でもあった。

語学も他民族の言語をお互い学び合う理想的な学び舎ではあったが、いかんせん、大学の外は戦争状態で、中国は国民党と共産党の内戦、日本は抗日運動にやられ、北からはロシア軍が迫り、朝鮮でも反日運動の生死を賭けてる時代に、「言論の自由」「若さと高邁な民族協和の理想」に目覚めた学生たち。ある者はシベリアに送られ強制収容所、そして帰還と現地での死。中国国民党に入り、後に共産党政権から「売国奴」とののしられる卒業生、帰国して新聞社に入り仕事をする人もいる。

取材当時ですでに80歳を超える人たちは、しかし、同窓会名簿はしっかり作成して生きてる大学同窓会名簿。そこの連絡先を頼りに、連絡して「当時の生活」「なぜ満州大学を受けようと思ったか」そして、一番は1945年8月15日から今まで、どういう暮らしや苦労をしてきたか聞き取りをしていく。これ以上、この取材を伸ばせば満州大学の卒業生が世の中にいなくなる。記録されないことは記憶に残らない。

この本を読んで、つくづく国家ってなんだろう?民族って何だろうと思う。この満州建国大学構内は平和であっても外は殺戮の嵐。はじめ5色という言葉は、五族協和という五から取られたと思ったが、あとがきで著者が南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が人種や民族の違いを超えた多民族国家を目指そうと、自国を複数の色が合わさる「レインボー・ネーション」(虹の国)にたとえた歴史的な演説から理想を語った、すなわち満州建国大学の理念も同じであったということで使われている。

しかし、現実は、当時も今も、民族や人種に加えて宗教も混合して、下手したら、当時よりたちの悪い世界に入ってるかもしれない。自宅前を昼ごろ、近所の専門学校生が歩きスマホで「ポケモンゴー」をしながら歩いて行った。私もi-padでダウンロードしたら自宅に1個キャラクターがいたことを彼らに告げると「こういうゲームができる平和がいいですね」とかえってきた。世界中の民族や宗教を超えて「ポケモンゴー」に夢中にって、殺戮を忘れることの思考の癖が蔓延しますように。

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  1. ユニークな国立大学ですね。わずかな年月とは言え、歴史的にも、思想的にも、非常に興味深い不思議とも言える大学ですね。
    満州国政府と関東軍の主導で創設されたそうですね。 石原莞爾氏や辻政信氏らが構想した「アジア大学」構想が原点とか?。
    理念「五族協和」と?調べたら、日本人・中国人・朝鮮人・蒙古人・ロシア人ら5族が共に学ぶ多民族共学の場だったと。
    6年制(予科3年+本科3年)で、政治・経済・文教などを学び、授業は日本語で行われたらしいですね。学費は全額国費負担。
    しかも学生には月額手当まで支給されたと言うのですから、今のどんな立派な大学ともスケールが違いますね。全寮制で民族を超えた共同生活が行われたようです。(寮は「塾」と呼ばれた)試験もなく、自己管理主義の学習を重視し図書館にはマルクスや毛沢東の著作まで所蔵され、言論の自由が保障されていて学生は民族・国籍を超えて議論を交わし、理想の国家像を模索していたとか。また教員には日本人だけでなく中国・朝鮮・ロシアなどの知識人まで招かれたとか?この大学は思想的実験や多民族共生といった大きなテーマに挑戦した事例でしようね。不思議なそして優れた構想ですね。むしろ現代に最も必要な考えですね。

    • 現代に欲しい大学ですが、各国の大学に留学という制度はありますが、寝食をともにして生きるスケールは凄い理想です。それが次のリーダーを養成するわけで、それこそ平和をつくり、国堺線を超える信頼関係をつくることでもありますね。独裁者や権力者は分断を欲します。富裕者も貧乏人をそのままにして、自らの富を増やすことだけ考える人たちで、分ける、寄付する思考は薄いですから期待はできません。親たちも築いた富は子供へ送り、二世や3世をつくることに汲々。なぜでしょうか?他人を信用できないのでしょうかね?それを超える満州大学でしたが、足元の関東軍や陸軍から戦争を起こして行きました。原因は石炭の確保でした。それと人口を満州に送り込み、食料の生産でしたが、思考や思想が国家の指導者にないと国民哀れ。

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