世代別「妻が夫に望むこと」(米原万理著より)
以前にも引用をしていた、筆者が大好きな米原万理さんの「他諺(げん)の空似(そらに)」から、妻が夫に望むことを年齢別に書いていたので紹介する。この本は彼女の遺作(光文社刊)。38p~41p。自分の年齢に合うところを読んでください。
20代の妻が30代の夫に望むことは何か。
1)魅力的でセクシーな容貌
2)金銭的に不自由していないこと
3)妻の言葉にいつも注意深く耳を傾けること
4)肉体的に強く健康であること
5)適度におしゃれで身だしなみに気を遣うこと
6)頭がよくて機知があること
7)音楽や文学や美術を楽しむセンスがあること
8)妻と家族に思いやりと気遣いを忘れず、時々プレゼントをすること
9)妻を心から愛し(肉体的に)、ロマンチックな雰囲気作りが巧いこと
30代の妻が40代の夫に望むことは何か。
1)まあまあの容貌(とくに頭髪の状態が心許なくなっていないこと)
2)十分に稼いでいること
3)自分がしゃべるよりも、妻の話を聴いていることの方が多いこと
4)妻の冗談にちゃんと反応して笑うこと
5)車の乗り降りに際して妻のために扉を開けること。買い物の際は、買い物袋を嫌がらずに引き受けて
おとなしく運ぶこと。ゴミを出すこと
6)最低3本はネクタイを持っていること
7)妻が作った料理を美味しい美味しいと喜んで感謝しながら食べること
8)妻の誕生日や結婚記念日を覚えていること
9)最低週1回はセックスする用意があること
40代の妻が50代の夫に望むことは何か。
1)醜(ひど)くはないが容貌と一応毛が残っている頭
2)妻の身体がちゃんと車に納まってからでないと、車を発進させないこと
3)安定的に仕事をしていて定収入があり、散財するにしても時々ちょっと豪華な外食をする程度である
こと
4)妻が話しているときに、一応首を振ること
5)妻が言う冗談の趣旨を理解できること
6)肉体的に健康で、家具を動かしたり、電球を取り替えたりするときに役にたつこと
7)腹の出っ張りが目立たないようなワイシャツと背広を着ること
8)用を足す前にトイレの便座を上げ、済んだら下ろすことを忘れないこと
9)せめて3日に一度はヒゲを剃ること
50代の妻が60代の夫に望むことは何か。
1)鼻毛と耳の中の毛を定期的にカットすること
2)所構わずゲップやおならをしないこと
3)あまりたびたび借金をしないこと
4)妻が話している最中に居眠りしないこと
5)同じ冗談や駄洒落を何度も言わないこと
6)健康であること、せめて寝ころびっぱなしになるほど肉体的に衰えていないこと
7)下着と一緒に靴下もこまめにはきかえること
8)テレビを見ながらでも、妻の作った料理に反応すること
9)せめて週に一度はヒゲを剃り、月に一度は爪を切ること
60代の妻が70代の夫に望むこと
1)孫や近所の子供たちが逃げ出すような恐ろしい容貌と身だしなみをしていないこと
2)風呂場や洗面所やトイレがどこか、自分がどこに入れ歯を置いたか、自分がなぜ笑っているのか、覚
えていること
3)あまり小遣いをせびらないこと
4)睡眠中の歯ぎしりやいびきが控えめであること
5)健康であること。せめて自力で寝起きができるうらいには
6)普段はちゃんと衣服を着用していること
7)柔らかい食べ物を美味しいと感じられる舌を持っていること
70代の妻が80代の夫に望むことは何か。
1)息をしていること
2)健康であること、せめて糞尿をこぼさずに便器に命中できるほどの筋力と精神力を維持していること
以上
生涯、オスを飼わなかった米原さんが身辺の夫婦を見ながら、また彼女特有のエスプリをきかせて見事な分析だが、書いていて、男としてだんだん腹が立ってきたのも事実だ。誰かこの逆を書いて欲しいなと思う。男から妻へ望むことの年齢別を。でも書いたらセクハラと叫ばれるだろうな。
昔の少年
妻は亭主に変わって欲しいと願う。亭主は妻に変わらないで欲しいと願う。相手に求めることは多いが、自分にも求められていることは多い。若い娘を持つ家庭なら、双方に、して欲しいことや、して欲しくないことを言ってくれるからよいが、男の子しか居ない家庭では、細かなことは気にしないし、気づかない。他人を不愉快にさせることや、非常識極まりない無意識な癖や不作法は正してくれる人が近くに居はた方がいい。その時はウルサイと思っても、他人は見て見ぬふりをして陰で失笑するだけだからだ。相手に求める前に自分が相手に求められる人格になる努力も必要なのかも知れない。